« 来日時のコルトレーン・その1 | トップページ | 奇跡のストラト「ブラッキー」 »

2012年9月14日 (金曜日)

来日時のコルトレーン・その2

コルトレーン来日のライブの記録であるCD4枚組の『LIve In Japan』(写真左)。昨年の10月、SHM-CD化、コルトレーンの肉声が聴ける来日時のインタビューの追加、藤岡靖洋氏によるインタビュー音源の日本語訳全文等の添付資料の充実を目玉に、リイシューされた。

今日は昨日に引き続いて、Disc III・Disc IVを聴く。3〜4枚目は東京新宿厚生年金会館(7月22日) におけるライブを収めたもの。収録された演奏は、なんとCD2枚にたったの3曲。しかも、Disc IVは「My Favorite Things」のみの収録で、所要時間はなんと57分19秒。

たった1曲で、延々一時間弱、ブワービャーブブブブ、というエモーショナルでアブストラクトで不協和音なソロ・パフォーマンスが続くのだ。凄いというか何というか。実際にその場で聴いていたジャズ者の方々ってどうやったんやろう。とにかく、聴く者の身になって演奏することを忘れたコルトレーン楽団。

Disc III
1. Peace on Earth (25:05)
2. Leo (44:51)

Disc IV
1. My Favorite Things (57:19)

ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ss, ts, as, perc), Pharoah Sanders (ts, bass-cl, as, perc), Alice Coltrane (p), Jimmy Garrison (b), Rashied Ali (ds)。黄金のカルテットと呼ばれたメンバーから、ドラムのエルビン・ジョーンズが抜け、ピアノのマッコイ・タイナーが抜けている。実は、これが、コルトレーン五重奏団にとって、大変なダメージになっている。

Disc IIIの冒頭の「Peace on Earth」は、最初、コルトレーンの情緒的で印象的なブロウが続いて、やっぱりコルトレーンは凄いなあ、と思うのだが、2分を過ぎた頃から、アブストラクトでフリーキーなブロウが顔を出し始める。情緒的で印象的なブロウとアブストラクトでフリーキーなブロウが交互に出てきて、いきなり終わる。ドッと疲労感を感じる。

Disc IIIの「Leo」はフリーキーでアブストラクトなブロウが大半を占めるが、どうにもこうにも、同じフレーズを繰り返しているような冗長さは免れないようで、ちょっと退屈になります。不協和音の連続。馬の嘶きの様な、悲鳴のようなアブストラクトなブロウ。出したい音が出ないもどかしさ、苛立ち。どうも、この「Leo」はいけません。
 

Coltrane_live_in_japan2

 
そして、Disc IVの一枚全てを占める「My Favorite Things」。これがまた、Disc II「Crescent」と同じく、冒頭ギャリソンの超ロング・ベースソロが10分以上続く。どうして、ここで、こんな超ベリーロングなベースソロを繰り広げなければならなかったのか。

そして、やっと出てくる「My Favorite Things」も、おおよそ好調とは言い難い内容。冒頭、音に芯が無くフニャフニャ。どうしてやろか、と調べてみたら、初めしばらくは、コルトレーンもファラオも揃ってアルト・サックスを吹いているんですね。 この来日時にヤマハからプレゼントされたそうで、嬉しくてすぐ使ったらしい。 慣れない楽器を使って、アブストラクトでフリーキーなブロウをブワーッとやったら、そりゃー音がフニャフニャになるわな〜(笑)。

途中、コルトレーンはソプラノ、ファラオはテナーに持ち替えて、再び、アブストラクトでフリーキーなブロウをブワーッとやるんですが、う〜ん、どうにもこうにも、スピード感、切れ味、イマージネーション、いずれも何かが足らない、というか、今一歩というか、スカッと突き抜けないというか、不完全燃焼な「My Favorite Things」です。

で、この不完全燃焼な「My Favorite Things」が、冒頭10分以上続くギャリソンの超ロング・ベースソロから始まり、総所要時間57分19秒続くのだ。疲れます、しんどいです。

この来日時のコルトレーンについては、フリージャズとは言え、内容的に、どうにもこうにも、同じフレーズを繰り返しているような冗長さは免れず、何かが足らない不協和音の連続。馬の嘶きの様な、悲鳴のようなアブストラクトなブロウ。出したい音が出ないもどかしさ、苛立ちが渦巻いていて、当時の聴衆であったジャズ者の皆さんは、かなりの確率で困惑したのでは無いでしょうか。

しかし、僕達は、このCD4枚組『LIve In Japan』で、1966年7月に来日したコルトレーンの演奏を追体験することが出来る。聴く側に立ってコルトレーンを語る上で、このライブ盤は必ず3度は通して聴く必要があります。それが出来ないジャズ者はコルトレーンを語ることなかれ。

不協和音の連続。馬の嘶きの様な、悲鳴のようなアブストラクトなブロウ。出したい音が出ないもどかしさ、苛立ち。これもコルトレーンなのだ。コルトレーンは聖者では無い。コルトレーンは生身の人間であり、人一倍の努力が賜のミュージシャンである。そんな生身の人間のコルトレーンが、このCD4枚組『LIve In Japan』にギッシリと記録されている。
 
 
 
★大震災から1年半が過ぎた。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4
 
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

« 来日時のコルトレーン・その1 | トップページ | 奇跡のストラト「ブラッキー」 »

コメント

はじめまして

このアルバム大好きで100回以上聴いている者です。

"My Favorite Things"で二人は最初にアルトサックスを吹いてる?

 どう聴いてもテナーにしか聞こえませんが、本当の話なんですか?

確かに"Leo"ではアルトですが…。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 来日時のコルトレーン・その2:

« 来日時のコルトレーン・その1 | トップページ | 奇跡のストラト「ブラッキー」 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー