こんなアルバムあったんや・13
ジャズの演奏形態に「デュオ」という形態がある。「デュオ」とは、二人の奏者が異なるパートを演奏すること。ジャズの場合、デュオについては、楽器の組合せによって難易度が変わる。
ギター2本のデュオは比較的演奏し易い組合せだろう。ギターという楽器は、ギター1本で旋律楽器とリズム楽器の両方の役割を代わる代わる担うことが出来る。しかも同一楽器なので、同じ音で被ればユニゾン、音がずれればハーモニーとなる訳で、音がぶつかることが基本的に無い。加えて、ギター同士なので、お互いの手の内が短時間で理解し合える。
ギター2本のデュオは比較的演奏し易い組合せというのが理由なのか、ジャズの世界で、ギター2本のデュオはありそうで、あまり数は無いのでは、と思っている。パッと浮かぶのは、ジム・ホール&パット・メセニー、ジム・ホール&ジョン・アバークロンビー、そして、1970年代後半のアル・ディ・メオラ、ジョン・マクラフリン、パコ・デ・ルシアの3人からなる「スーパー・ギター・トリオ」(デュオの発展形として挙げておく)くらいかなあ。
ジャズ名盤の中で、ギターのデュオはありそうで無い。そんなギター・デュオの中で、なかなか秀逸な内容のアルバムがある。Steve Howe & Martin Taylor『Masterpiece Guitars』(写真左)。
Steve Howe(スティーヴ・ハウ)といえば、プログレッシブ・ロックの老舗バンド「Yes」の超絶技巧なテクニックを持つ優れたギタリスト。Martin Taylor(マーティン・テイラー)は「ギタリストのギタリスト」と評される、ハウと同じく英国のギタリスト。天性の音楽センスをもち、あらゆるジャンルの音楽を、それぞれに適したスタイルで演奏することが出来る優れたギタリストである。
この二人がガッチリとデュオを組んだアルバムが、この『Masterpiece Guitars』。この超絶技巧な二人が、ジャズ・スタンダードから、映画音楽から、ボサノバから、果てはカントリー・ミュージックまで、様々なジャンルの音楽を、様々な音色のギターを取っ替え引っ替え、様々なテクニック、様々なスタイルを駆使して弾きまくる。
とにかく、二人のギターの音が良い。惚れ惚れする、これぞ「ギター」という音。まず、このギターの音色を楽しむだけでも、この盤の価値がある。
そして、二人が弾き分けるスタイルが多彩。ギター弾きのスタイルにはあまり詳しくは無いのだが、それぞれの曲毎に、ギター弾きのスタイルが異なることが判る。よって、このアルバム、全部で17曲、全曲通しの所要時間は約1時間あるが、経ったギター2本だけの演奏なのに全く飽きが来ない。
硬派な純ジャズ路線の「ゴリゴリ、ノリノリの4ビート」な演奏では無く、ちょっと小粋なフュージョン・ジャズ路線の「ライトでスムースなノリの4ビート」な演奏に終始していて、とにかく聴き易くて、親しみ易い演奏ばかり。どの曲でも、二人のバーチュオーゾは、実にさりげなく楽しく美しく弾きこなしていて、聴き応え抜群です。
「Smile」「All The Things You Are」「Blue Bossa」「Moon River」辺りのスタンダード曲が良いですね。聴き馴れたスタンダード曲なんですが、ハウとテイラー共に、小粋に渋く、さり気なく、超絶技巧なテクニックを駆使しつつ、素晴らしいフレーズを紡ぎ上げています。
プログレのベテラン・ギタリストと「ギタリストのギタリスト」と評される同じく英国出身のギタリストとのコラボ。改めて考えてみれば、凄く異質で希有なデュオの組合せですね。まさに「こんなアルバムあったんや〜」って感じです。
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