正統派「ジャズ・ロック」な名盤
昨日は、サザン・ロックのギタリストの「現代のジャズ・ロック」なアルバムをご紹介した。デレク・トラックスの『Soul Serenade』。ロックからジャズへのアプローチから現れ出でた「現代のジャズ・ロック」なアルバムの秀作の一枚である。
「ジャズ・ロック」の話題となったところで、今日は、この「ジャズ・ロック」の、ストレートど真ん中、徹頭徹尾、ジャジーで疾走感溢れる、正統派「ジャズ・ロック」なアルバムを、満を持してご紹介したい w。
ラリー・コリエルという、テキサス州ガルベストン出身のジャズ・ギタリストがいる。1943年生まれなので、今年で69歳になる。1965年、The Free Spiritsというジャズ・ロック・バンドを結成し、マイルスより早く、ジャズとロックの融和にチャレンジしたと評価されるギタリストである。彼の超絶技巧な速弾きエレギは「ジャジーでモーダルでフリーキー」。あくまで、ジャズの範疇に軸足を残した、ジャズとロックのクロスオーバーなエレギである。
そんなラリー・コリエルのアルバムに『Spaces』(写真)というアルバムがある。1970年のリリースで、エレクトリック・マイルス経験者で、後にフュージョン・ジャズの重鎮となるメンバーを中心に集めた、いわゆる「スーパーバンド」的なセッションによる作品。ちなみにパーソネルは、Larry Coryell (g), John Mclaughlin (g), Chick Corea (p), Billy Cobham (ds), Miroslav Vitous (b)。
マクラフリンとのツイン・ギター編成(ここにディ・メオラが加わるとスパー・ギター・トリオという編成になるww)が凄い。どちらかがバッキングに回り続けること無く、どちらも対等な立ち位置で、それぞれの個性を前面に押し出して、ゴリゴリ弾きまくる。
まあ、それはそれは、どちらの超絶技巧な速弾きエレギで、手に汗握るテンション高いフレーズやモーダルでフリーな飛翔感溢れるフレーズを弾きまくる、弾きまくる。目眩く、超絶技巧なエレギの饗宴である。
バックのリズム・セクションも凄い。エレピのチック・コリア。このアルバムでは、マイルスの下で弾きまくった、くすんで歪んだフェンダー・ローズがバックで「うねりまくっている」。モーダルで自由度の高いエレピのバッキングは、実に「尖っている」。このアルバムでのバックを支えるチックは凄い。テンション高く、メインストリームなジャジーさが堪らない。
ミロスラフ・ビトウスのベースがユニークだ。 ビトウスは、伝統的なジャズに欠かせないランニング奏法をみせながら、超絶技巧なエレギに対抗すべく、速弾きなアコベのボウイングを駆使するなど、高度なテクニカル・プレイで前面に押し出てくる。
そして、超絶技巧なエレギ×2、モーダルで自由度の高いエレピ、高度なテクニカル・プレイで前面に押し出てくるベース、この4人の尖ったテンションの高い演奏を一気に引き受ける、ビリー・コブハムの「千手観音」ドラムもこれまた凄い。いったい、このドラマーに何本の手がついているのか、と呆れてしまう位の、手数の多い、飛翔感溢れる「ポリリズム」。
アルバム全体の雰囲気は、当時のエレ・マイルスの展開を踏襲した、モーダルで限りなくフリー、ヘビーでそこはかとなくファンキーな、メインストリームなジャズをベースとした「エレクトリック・ジャズ」という感じの雰囲気で、後のメロディアスでソフト&メロウなフュージョン・ジャズとは、確実に一線を画します。パッキパキ硬派なクロスオーバー・ジャズという雰囲気も蔓延しています。
実に「ガッツ」のある演奏が満載で、この時代に、これだけ高度な内容のメインストリームなジャズをベースとした「エレクトリック・ジャズ」が創造されていたとは・・・。ゴリゴリと迫り来る演奏は、それはそれはスリリングで、それはそれは聴き応えがあります。あまりのテンションの高さ、超絶技巧な演奏の連続に、ちょっと聴き疲れしてしまうかも・・・。それでも、このアルバム、エレクトリック・ジャズの名盤の一枚だと評価しています。
ちなみに、現在、流通しているCDのジャケット・デザインは、写真右の印象派イラスト風なものですが、1970年代、クロスオーバー・ジャズというジャンル付けでキング・レコードから発売されていたLPの時代のジャケット・デザインは写真左のもの。僕はやはり、このアルバムをほぼリアルタイムで体験した「黒のコリエル」のジャケット・デザイン(写真左)がお気に入りです。
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