Impulse時代のロリンズ第1弾
さあ、ソニー・ロリンズのリーダー作の聴き直しシリーズは、1965年、Impulse時代に突入である。
1964年6月11日、アルバム『The Standard』のセッションを最後に、ソニー・ロリンズはRCAを離れる。RCA時代は、2回目の失踪事件以来、鳴り物入りでカムバックしての再デビューだったが、セールス的には恵まれなかった。まあ、今から振り返れば、プロデュース・ミスがセールス不振の原因の大半だろう。
そして、ロリンズはRCAを後にして、Impulseレーベルに移籍、1964年後半のことである。Impulse移籍後、最初のアルバムは、1965年7月8日のスタジオ録音の『Sonny Rollins On Impulse!』とされるが、1978年、未発表音源として密かにリリースされた『There Will Never Be Another You』(写真左)が『On Impulse!』よりも1ヶ月ほど早い録音になる。
さて改めて、この『There Will Never Be Another You』は、ロリンズがRCAからImpulseに移籍後、正式にアルバムとしてリリースされた音源としては一番早い録音になる。この音源はライブ音源。ニューヨークの有名美術館「The Museum Of Modern Art(MOMA)」でのライブ録音である。
ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts), Tommy Flanagan (p), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins, Mickey Roker (ds)。1965年6月17日の録音。
Impulse移籍後、間も無いライブ録音なので、まだパーマネントなメンバー構成では無い。しかし、ピアノにトミフラ、ベースにクランショウ、ドラムにヒギンス&ローカーが控えているので、このライブ録音が悪かろうはずが無い。
しかし、いきなり冒頭「On Green Dolphin Street」がフェードインで始まる。おいおい、フェードインかよ、と眉をひそめてしまう。やはり未発表音源、内容的にも問題があるのかなあ、と不安の出だしである。が、聴き進むにつれ、意外とロリンズの熱いブロウが続いて、徐々にこの演奏に引き込まれていく。
1965年6月17日と言えば、ロリンズのライバルであるコルトレーンは、高速シーツ・オブ・サウンドから、フリー・ジャズへの傾倒を始めた『Transition』を録音した頃。ロリンズは超絶技巧な高速フレーズを奏でながらも、スローな展開では、溢れんばかりの歌心を湛えた泰然自若なブロウが、実にロリンズらしい。
ストレートなブロウは明らかにコルトレーンを意識してはいるが、テナーの音域の使い方はコルトレーンとは全く異なる。ロリンズはテナーの音域をほぼ「フル」に活かしたブロウ。つまり、普通にテナーを吹き上げる自然な音域の使い方で、この自然な展開がロリンズのブロウの真骨頂。
未発表音源として録音当時は「お蔵入り」していた音源だけあって、ところどころ録音に難があるんだが、このライブ音源の内容を聴けば、まあその「難」も我慢できるというもの。
バックのリズムセクション、ピアノのトミフラ、ベースのクランショウ、ドラムのヒギンス&ローカーも素晴らしい高速ハードバップの演奏を繰り広げていて、思わず、耳をそばだててしまいます。バップなピアノが魅力のトミフラ、テクニックがかなり優れたクランショウ、新しい感覚のバップなドラミングが温故知新なヒギンス&ローカー。今の耳にも決して古くない、実に魅力的な躍動感溢れるリズム・セクションです。
ジャケットの趣味の悪さは、リリース時期が1978年、フュージョン全盛時代ということを考えると、いざ仕方の無いところか。ジャケットの趣味の悪さと未発表音源としての「録音の難」を差し引いても、1965年当時のメインストリーム・ジャズ演奏のトレンドを追体験出来る、なかなかに優れた内容になっています。ちょっとマニアックな内容ですが、ロリンズ者にとっては必須のライブ盤でしょう。
大震災から1年が過ぎた。決して忘れない。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« コテコテの米国ルーツ・ロック | トップページ | どちらが主役か判らない...w »
コメント