どうも苦手な『On Impulse!』
さて、今月から、ソニー・ロリンズの聴き直しシリーズは、1965年辺り、Impluseレーベル時代に入った。
ソニー・ロリンズがRCAレーベルからImpulseレーベルへ移籍して、最初の正式な録音が、1965年6月17日、MOMA(The Museum Of Modern Art)でのライブを記録した『There Will Never Be Another You』(2012年8月6日のブログ参照)。なかなかにロリンズの熱いブロウが魅力のライブ盤である。
そして、ロリンズは、その『There Will Never Be Another You』のライブの約1ヶ月後の7月8日、ニュージャージのRudy Van Gelder Studioで、Impulseレーベルでの初スタジオ録音に臨む。そのアルバムの名はズバリ『On Impulse!』(写真左)。
ライブ盤『There Will Never Be Another You』のメンバーから、ピアノとベースを入れ替えて臨んだスタジオ録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts), Ray Bryant (p), Walter Booker (b), Mickey Roker (ds)。なぜか、アーシーでファンキーなピアニスト、レイ・ブライアントが参入している。
さて、ジャズ盤紹介本などでは、一般的に、この『On Impulse!』は、ロリンズのアルバムの中では「名盤」とされる。RCAでの不調を払拭したロリンズの「あるべき姿」が記録されているとされる。が、僕は、どうも、この『On Impulse!』が苦手である。
ライブ盤『There Will Never Be Another You』での、ロリンズの自由闊達で熱いブロウを聴いた後でもあるし、この『On Impulse!』の後の正式スタジオ録音盤である『Alfie』の豪放磊落で雄大なブロウを知ってもいるので、どうしてもそう思ってしまうのだが、どうも、この『On Impulse!』の、ちょっと「よそ行き顔」の、なんだか「こぢんまりとまとまった」ロリンズが、どうしても好きになれないのだ。
RCA時代の不調の悪い思い出が払拭しきれていなかったのかもしれないし、まだまだライバルであるコルトレーンを意識し過ぎていたのかもしれない。勇壮で朗々としたブログが持ち味のロリンズのブロウが、なんだかチマチマしてテクニックに走った様な、ちょっと考えすぎて自然に滑らかにフレーズが出ないというか、なんだか「隔靴掻痒(思うようにならないで、もどかしいこと)」な感じがするのだ。
特に、冒頭の「On Green Dolphin Street」が馴染まない。このスタンダード曲、僕の大のお気に入りなのだが、これだけ、ぶつ切りになって、詰まったようなインプロビゼーションはどうもいけない。ピアノのレイ・ブライアントも馴染まない。ブライアントのピアノは、アーシーでファンキーで洒脱なピアノで、どうもロリンズの骨太とテナーのバックとしては、ちと線が細いかな、と思う。
2曲目のスロー・バラードである「Everything Happens To Me」でのロリンズは、ちょっと「こぢんまりとまとまって」はいるが、歌心溢れる大らかなブロウは、さすがにロリンズである。このバラード曲での、ピアノのレイ・ブライアントとの相性はまずまず。確かに、ブライアントは歌伴が得意なピアニストなので、この「Everything Happens To Me」の様なバラードを歌うように吹き上げるテナーのバックは得意なんだろうな。
3曲目の「Hold 'Em Joe」は、ロリンズお得意のカリプソ・ナンバー。思えば、ロリンズの大名盤『Saxophone Colossus』の冒頭の名演「St. Thomas」がカリプソ・ナンバーだった。この3曲目の「Hold 'Em Joe」は「St. Thomas」の二匹目のドジョウを狙ったようなものだろうか。どうも聴衆に迎合している様で、どうも胡散臭くていかんなあ(笑)。
ということで、僕はこの『On Impulse!』については評価が低い。アルバム・ジャケットはなかなかシンプルで良い感じなんですけどね〜。やっぱり、ロリンズは、聴衆に迎合せず、我が道を往くという感じで、雄大で豪放磊落で歌心溢れるスケールの大きいブロウが一番。
そういう意味では、この『On Impulse!』でのロリンズは、RCA時代の不調を払拭できずにいる感じがして、どうも馴染まない。僕にとって、ジャズ紹介本などでの評価とはアンマッチな盤としての代表例である。
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