Geffen移籍直後のPMGの大名盤
パット・メセニーは、傑作『First Circle』を残し、ECMレーベルを後にする。ECMレーベルの音世界の範疇に留まることは、Pat Metheny Group(PMG)の音の表現の停滞に繋がる。パットはECMレーベルを後にした。
新しくパットが選んだレーベルは「Geffenレーベル」。「Geffenレーベル」とは、デヴィッド・ゲフィンが1980年に設立。1970年代に経営していたアサイラム・レコードのアーティストを引き抜き、さらに他のレコード・レーベルからも引き抜きを行って運営を開始。とりたてて、ジャズのレーベルでも何でも無い。何故、パットが、この「Geffenレーベル」を選んだかは、僕にとっては「不明」。
しかし、ECMレーベルを離れたことによって、PMGの音世界は、より一段、広がった。それまでのPMGの音世界は、米国の自然を彷彿とさせるフォーキーで、米国ルーツ・ミュージック的な、ポジティブで抒情的な音世界。僕はこのパットの音世界を「ネーチャー・ジャズ」と呼んでいる(ちょっと変かなw)。この音世界は、PMGならではの個性的な音世界。
その音世界を更に押し広げて、より一段、高みに上がった成果を聴かせてくれたのが『Still Life (Talking) 』(写真左)。1987年の3月〜4月の録音。ちなみにパーソネルは、Lyle Mays (p, syn, key), Pat Metheny (g, el-g, g-syn), Steve Rodby (b, el-b), Paul Wertico (ds), Armando Marcal (per, vo), David Blamires, Mark Ledford (vo) 。Lyle Mays〜Pat Methenyの双頭ラインは鉄壁である。
このアルバムの音世界は、それまでの米国の自然を彷彿とさせるフォーキーで、米国ルーツ・ミュージック的な、ポジティブで抒情的な音世界、いわゆる「ネーチャー・ジャズ」の音世界に、アフリカン・ネイティブな、フォーキーでアーシーな響きを織り交ぜた、ワールド・ミュージック的な音世界を大胆に加えた、広大で抒情的な音世界。肉声が効果的に、アフリカの大地に、緩やかに広がる様に響き渡る。
冒頭の「Minuano」が、そんな「より一段、高みに上がった成果」を聴かせてくれる。アフリカン・ネイティブな、フォーキーでアーシーな響きが、実にジャジーな音として響き渡る。ジャズの源、アフリカの音の響き。そこに、ライル・メイズのコンテンポラリーなキーボードが絡む。ふと我に返る。米国ルーツ・ミュージック的な音世界が、グッとコンテンポラリー・ジャズの音世界に立ち返る。
アーシーでフォーキーで抒情的な音世界の最たる例が、3曲目の「Last Train Home」。ポール・ワーティコの刻むスネアドラムのブラッシュが「走る夜行列車」を現出する。パットの抒情的なギター・シンセが郷愁をかき立てる。電子シタールのサウンドが哀愁を感じさせる。
そして、ブリッジの部分、「ヘ〜〜イ〜、ヘイヘイヤ〜ア〜ウ〜、ハオ〜〜ウウオ〜〜」とアーシーでアフリカン・ネイティブな肉声のスキャットが響き渡る。これ、これである、これが「より一段、高みに上がった成果」。叙情豊かな、聴き耳を立てると、なんだか胸がジ〜ンとして、目頭がちょっと熱くなる。そんな魂を軽く揺さぶられる様な叙情性。これぞ「名曲」、これぞ「名演」である。
その他、このアルバムの全ての曲が、それまでのPMGの音世界を圧倒的に凌駕する、新しいPMGの音世界である。米国の自然を彷彿とさせるフォーキーで、米国ルーツ・ミュージック的な、ポジティブで抒情的な音世界、いわゆる「ネーチャー・ジャズ」の音世界に、アフリカン・ネイティブな、フォーキーでアーシーな響きを織り交ぜた、ワールド・ミュージック的な音世界を大胆に加えた、広大で抒情的な音世界。
PMGの名盤の一枚である。1987年、フュージョン・ブームが遠く去り、純ジャズ復古の掛け声が高らかに響き渡るが、新しいジャズの音がなかなか聴こえてこない、ジャズの停滞の時代。そんな時代に、PMGはこんなに素晴らしい成果を現出した。決してジャズは死んではいない。僕はこのアルバムを手にして、このアルバムの音世界に初めて触れた時、僕はそう感じた。実に魅力的なジャズである。
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