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2012年7月 2日 (月曜日)

ロン・カーター『Spanish Blue』

今日から暫く、ジャズ・ベーシストのリーダー作を集中して特集したい。

ジャズには様々な楽器奏者のリーダー作が存在するが、リーダー作をリリースするのは、大多数がフロント楽器である、つまりは旋律楽器であるサックスやトランペット、ピアノ、ギターの奏者がリーダーとなったアルバムが大多数である。

ちなみに、ベースとかドラムは、ジャズ演奏の中では「リズム楽器」の一部とされる。ベースの場合は旋律を奏でることはできるが、その楽器の性質上、音の幅、音色のバリエーション、音の抑揚、強弱について、他の旋律楽器と比べて、その範囲が狭く、旋律楽器としてはなかなか成立が難しい楽器である。

つまりは、ベースやドラムは、リーダーの楽器として前面に押し出すのが難しく、いきおい、ベーシストやドラマーがリーダーのアルバムは少ない。ベーシストに至っては、リーダー作を次々と連発するベーシストは数える程しか無く、パッと思いつくのは、現役ではロン・カーター、クリスチャン・マクブライド、伝説のベーシストとしては、チャーリー・ミンガス、レイ・ブラウン。

ジャズ・ベーシストのリーダー作は幾つかのケースに分かれる。

まずは、リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケース。自らはその音世界の創造を支える側に回って、自らのベースはあまり前面に出ることは無い。フロント楽器の奏者が素晴らしいパフォーマンスを発揮すると、時に誰のリーダー作か判らない様になってしまうことがままある。それでも、その音世界の表現が素晴らしい、つまりはセルフ・プロデュースの手腕が優れていると、ジャズ・ベーシストのリーダー作として成立する。

今日、ご紹介するのは、Ron Carter(ロン・カーター)の『Spanish Blue』(写真)。1974年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b), Billy Cobham (ds), Hubert Laws (fl), Jay Berliner (g), Ralph MacDonald (per), Roland Hanna (p)。

Spanish_blue

プロデューサーがCreed TaylorのCTIレーベルからのリリース。CTIだからフュージョン・ジャズか、と思いきや、1970年代のフュージョンの音のトレンドを踏まえた、なかなかのメインストリーム・ジャズな演奏になっている。

ロン・カーターと言えば、今や、大ベテランのベーシスト。今年で75歳。マイルスの1960年代の伝説のカルテットのメンバーの一人。1974年の録音だから、当時37歳。中堅バリバリの時代のリーダー作。タイトルから判る様に、スパニッシュ基調の演奏を集めた企画盤。

収録されたどの曲もスパニッシュ基調の良い曲、良い演奏ばかり。このアルバムでは、ロンのベースのチューニングは合っていてなかなかのパフォーマンス(ロンはベースのチューニングを良く外した時期があった)。プロデューサーのクリード・テイラーとロン・カーターとの共同作業によって創造されていく、素晴らしいスパニッシュ・ジャズな音世界。

しかし、このアルバムは、フルートでフロントを担ったヒューバート・ロウズのアルバムだ。収録された全ての曲において、ロウズは最高のパフォーマンスを繰り出し続ける。これだけ優れたテクニックで、エモーショナルで、メロディアスなジャズ・フルートはなかなか聴けない。この『Spanish Blue』でのロウズのフルートは、彼のベスト・プレイのひとつと断言できる。

つまりは、このアルバム、フロント楽器の奏者が素晴らしいパフォーマンスを発揮すると、時に誰のリーダー作か判らない様になってしまうことがままある、という代表的なケースである。この『Spanish Blue』は、フルートのヒューバート・ロウズに「母屋を乗っ取られた」感じの、ベーシスト、ロン・カーターの優れたリーダー作である。

でも、この『Spanish Blue』でのロンのパフォーマンスは、ベースのピッチも合っているし、ベースのフレーズも個性的で、ロンのベースもしっかりと楽しむ事が出来る。そういう意味では、ベーシスト、ロン・カーターとしてもベスト・プレイが記録された、ロンの代表作の一枚に数えられる佳作だと僕は思う。 

 
 

大震災から1年が過ぎた。決して忘れない。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4

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