この盤でのレイ・ブラウンは最高
ジャズ・ベーシストのリーダー作の代表的パターンの2つ目である、ベーシストとしてその超絶技巧なテクニックを全面的に押し出したケースについて語るの3日目。今日は、レイ・ブラウン(Ray Brown)の名誉回復である。
確かに、レイ・ブラウンは、自らのリーダー作や他のリーダー・セッションにおいては、共演者が格下とみるや、その格下の共演者を全く無視するかの様に、ハイテク・アコベをブンブン唸らせて前面にしゃしゃり出る傾向が強い。リーダー作『Something for Lester』のバランスの悪さと言ったら、とにかく酷い。
しかし、そんなレイ・ブラウン、共演者が格上、若しくは一目置く共演者であれば、それはそれは、素晴らしいアコースティック・ベース(略してアコベ)を聴かせてくれるのだ。これがまあ不思議と言えば不思議。
その代表格が、Duke Ellington & Ray Brown『This One's for Blanton』(写真)。1972年12月5日の録音。ちなみにパーソネルは、Duke Ellington (p), Ray Brown (b)。あの20世紀におけるジャズ界最大の巨匠デューク・エリントンとのデュオである。
さすがに、レイ・ブラウンからすると圧倒的に格上というか、天上人とのデュオ共演である。レイ・ブラウンのアコベの紡ぎ出す音のひとつひとつに気合いと心づくしが感じられる。なんと微笑ましいことか。一音一音、丁寧にかつ堅実に、デュークのピアノをサポートしていく。いかにして、デュークのピアノを盛り立て、デュークのピアノを前面に押し出すか。極上のバッキングをしてみせる。
レイ・ブラウンの持てる全てを尽くした、音の太さ、音色、響き、切れ味、フレーズ、ビート。レイ・ブラウンのアコベの全てがこのデュオ盤に集結している。このデュオ盤でのレイ・ブラウンのアコベは絶品。ジャズ・アコベの最高峰の演奏のひとつであると断言できる。
デューク・エリントンのピアノも限りなくモダンで、スタイル的な古さは微塵も無い。逆に、スタイリストの一人として、実に個性的なジャズ・ピアノを聴かせてくれるのだ。そんな個性的なジャズ・ピアノに寄り添うように追従するレイ・ブラインのアコベ。素晴らしいデュオ。素晴らしい音世界。ピアノとベースのデュオの成果として屈指の名盤である。
ベーシストのその超絶技巧なテクニックを全面的に押し出しつつも、共演者の音楽性に敬意を表しつつ、共同で音世界を創造していくという、演奏全体に対する配慮もあって、このデュオ盤でのレイ・ブラインのアコベは素晴らしい。
しかし、本当に不思議な人というか、我が儘な人というか、自己顕示欲が強い人というか・・・(笑)。共演者が格上、若しくは一目置く共演者であれば、それはそれは、素晴らしいアコベを聴かせてくれるレイ・ブラウン。
そういう意味では、レイ・ブラウンのアコベを愛でるには、このデュオ盤とオスカー・ピーターソンとのトリオ盤が良いでしょう。本来の優れたレイ・ブラウンのアコベを堪能することが出来ます。
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