夏はボサノバ・ジャズ・その10 『Brazilian Sketches』
ボサノバ・ジャズでテナー・サックスとくれば、十中八九、決まって、スタン・ゲッツとくる。
今でも横行する、ボサノバ・ジャズをやるテナー奏者はスタン・ゲッツしかいないかのような、判で押したようなアルバム紹介。でも、21世紀に入っての現在、ボサノバ・ジャズのテナーと言えばスタン・ゲッツだけというのは、あまりに淋しい。
このアルバムは、21世紀に入った現在、ボサノバ・アルバムの新譜の中では出色の出来のアルバムの一つであると思っている。ジム・トムリンソン(Jim Tomlinson)の『Brazilian Sketches』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Jim Tomlinson (ts), Stacey Kent (vo), Colin Oxley (g), John Pearce (p), Simon Thorpe (b), Chris Wells (ds)。2001年4月の録音。
ジム・トムリンソンの名には、あまり馴染みの無い方が多いかもしれないのですが、英国で活躍しているテナーサックス奏者です。英国を代表する女性ジャズ・ボーカリスト、ステイシー・ケントの夫君でもあります(写真右)。
彼のテナーの音色は一度耳にすると「おや?」と思われる方もあるのでは、と思います。そう思われた方は結構、ジャズ・テナーを聴き込んでいる方だと思われますが、ジャズ・テナーの巨匠スタン・ゲッツに良く似ているのです。ゲッツのテナーを明確に力強くした感じとでも言いましょうか。
ジャズ・テナーと言えば、ジョン・コルトレーンのフォロワーが多いのですが(というか、ジョン・コルトレーンのフォロワーばっかりって感じもあるが・・・)、ゲッツのような、歌心を全面に出すテナー奏者のフォロワーはそんなに数がいるものではない。実に頼もしい限りです。
そのトムリンソンが、細君のステイシー・ケントを迎えて、作成した企画盤がこの『Brazilian Sketches』。テナーのゲッツとボーカルのアストラット・ジルベルトが「イパネマの娘」という名盤を作り上げたように、テナーのゲッツを敬愛するトムリンソン〜ケント夫妻で、この『Brazilian Sketches』を作り上げる。なんだか、ほのぼのとしますよね。
やはり、このアルバム、トムリンソン〜ケント夫妻のコラボレーションが、最大の見所となります。2人の共同作業は、1曲目・4曲目・7曲目・10曲目の4曲。特に、10曲目の「ジェントル・レイン」は、二人の息もピッタリ合って素晴らしい。
他の曲も、トムリンソンが実に健闘していて、なかなか充実したテナーを聴かせてくれるので、このアルバム、21世紀に入ってのボサノバ・アルバムの中でも、出色の出来となっている訳です。お勧めです。
アルバム・ジャケットのデザインだけが凡庸で問題かなあ。内容が素晴らしいのに、愛の無いアルバム・ジャケットのデザインです。リリースしたレコード会社の愛の無さをビンビンに感じますねえ ww。
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