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2012年6月 4日 (月曜日)

「これぞクロスオーバー」な優秀盤

Eumir Deodato『Prelude』。原題だとなんだか良く判らない。邦題にすると良く判る。デオダート『ツァラトゥストラはかく語りき』(写真左)。邦題を見れば懐かしい、クロスオーバー・ジャズの名盤である。

僕がこのアルバムの曲をFMで聴いたのは1974年。高校時代、まだロックの世界に踏み込んで間も無い、プログレ小僧だった頃。ジャジーなリズム&ビートに乗って、フェンダー・ローズの心地良い響き。秀逸なアレンジに乗って、おお、この曲は「ツァラトゥストラ」。

1972年の作品である。クロスオーバーという言葉が流行りだした頃ではないか、と記憶している。ジャズとロックの融合、ジャズとクラシックの融合。そんなクロスオーバー・ジャズの寵児となった一人が、この「デオダート」。

ちなみにパーソネルは、Eumir Deodato (p,el-p), Ron Carter (el-b,b,solo on "Baubles, Bangles and Beads"), Stanley Clarke (el-b, solo on "Also Sprach Zarathustra"), Billy Cobham (ds), John Tropea (el-g, solo on "Also Sprach Zarathustra", "Baubles, Bangles and Beads", "September 13"), Jay Berliner (g, solo on "Spirit of Summer"), Airto Moreira (per), Ray Barretto (cong). Hubert Laws (fl, solo on "Prelude to the Afternoon of a Faun")。

面子を見れば、如何にも「CTIレーベル」という感じである。今から振り返ると、クロスオーバー・ジャズの手練達がズラリと顔を揃えている。

デオダートのエレピも雰囲気だし、ロンやクラークのエレベも雰囲気だ。コブハムの千手観音的ドラミングが、このアルバムのリズム&ビートを決定づけ、トロペアのギターは、徹頭徹尾、ロック・ギター風で、クロスオーバー色を色濃くさせる。モレイラとバレットのパーカッションはラテン色の彩りを添え、ロウズのフルートは素晴らしく個性的だ。
 

Deodato_prelude

 
このアルバムの収録曲についても、原題で並べるよりは邦題で並べた方が、当時の雰囲気が出るというもんだ。

1. ツァラトゥストラはかく語りき
2. スピリット・オブ・サマー
3. カーリーとキャロル
4. 輝く腕輪とビーズ玉
5. 牧神の午後への前奏曲
6. セプテンバー13

このアルバムの聴きどころと言えば、やはり冒頭の「ツァラトゥストラはかく語りき(Also Sprach Zarathustra)」だろう。もともと、このクラシックの名曲「ツァラトゥストラ」は、冒頭のキャッチャーな「金管楽器の雄叫び」部分だけが印象に残る、実に不思議な交響詩(笑)。

デオダートはこの印象に残る冒頭の部分だけを素材として、卓越なアレンジ能力を駆使して、クロスオーバー・ジャズな演奏に変身させて聴かせてくれる。とにかくアレンジが良い。今から40年も前の演奏なので、古さを感じても不思議じゃないんだが、これがまあ、あまり古さを感じさせない、とくる。

デオダートのアレンジ能力の高さを改めて感じる。この明らかにクラシックな「ツァラトゥストラ」をクロスオーバーなジャズに変身させ、その電気ジャズのリズム&ビートに、そこはかとなく「ラテン」な雰囲気を漂わせるところは、デオダートのならではの個性である。

2曲目以降の曲のいずれも、とにかくアレンジが秀逸。今の耳にも十分に耐える。特に「輝く腕輪とビーズ玉」などは、ラテン色が色濃く漂い、マイナーでファンキーな演奏は、実に「アーバン」。後のフュージョン・ジャズに繋がる、そこはかとなく「ソフト&メロウ」な雰囲気が魅力的。

クロスオーバー・ジャズを代表する名盤の中の一枚です。「これぞ、クロスオーバー・ジャズ」といった音が満載な秀作です。クラシックを題材にしたジャズなんて、と敬遠するには勿体ない、クロスオーバー・ジャズを理解するには打って付けのデオダートの名盤です。

 
 

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Never_giveup_4

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