キースのオルガンを堪能する
子供の頃からオルガンの音が好きである。子供の頃からピアノを弾いていて、ピアノの音が一番好きだ。でも、オルガンの音も負けていない。子供の頃、教会で聴いたパイプ・オルガン、ハモンド・オルガンの音も大好きだ。
ハモンド・オルガンの響きは、僕にとっては「教会」の響き、「ゴスペル」の響きである。あのくぐもった和音が実に良い。ピアノはエッジの立ったシャープな音。ハモンドの音は、感情の塊の様な心を揺さぶる様な音。
ハモンド・オルガン。ジャズの世界では、その第一人者はジミー・スミス。ジミー・スミスこそが、オルガン・ジャズのイノベーターであり、最高の演奏家である。ジャズの世界で、オルガンで出すことの出来る音色、フレーズ、パターンのほぼ全てを、このジミー・スミスが表現し、確立した。
それでは、ロックにおける、ハモンド・オルガンの第一人者は誰か。これはもう、キース・エマーソンしかいない。キースのオルガンには、ロックの演奏の要件に沿った、先鋭的で攻撃的な音色、フレーズ、パターンが備わっている。決して、ファンキーにならない、乾いた8ビートに乗って、平易で判り易いインプロビゼーションを展開する。
そんなキース・エマーソンのハモンド・オルガンを心ゆくまで堪能できるライブ盤がThe Nice『(Live At the Fillmore East December 1969』(写真左)。CD2枚組の、当時のロックの殿堂「フィルモア・イースト」での優れたライブ盤である。
ちなみにパーソネルは、キース・エマーソン(Keith Emerson) - keyboard、リー・ジャクソン(Lee Jackson) - bass guitar/vocal、ブライアン・デヴィソン(Brian Davison) - drums、のトリオ編成。
最近発掘されたらしいライブ音源なので、音質や内容は大丈夫なのか、単なるブートの製品化では無いのか、とちょっと不安ではありましたが、思い切って入手して聴いてみたら、最近、良くありがちなブート音源の流用などではなく、きちんとしたライブ録音の音質、内容が維持されており、ホッと一息。
この時期のナイスは、キースのみがダントツに前面に出ており、エゴ丸出しの時期。ナイスのメンバーの他の二人は完全に役不足になっていた。いわばバンドとしては、既に解散直前状態になっていたと推察される。
というか、そんな状態は、このライブ盤を聴けば良く判る。キースのプレイばかりが前面に押し出されていて、他の2人は「えっ、いたの」という感じ。キースの先鋭的なオルガン演奏に比して、他の2人の演奏は「とほほ」なものに成り下がっている。
逆に、キースがエゴ丸出しでダントツ前面に押し出て、ハモンド・オルガンを弾き倒しているからこそ、このライブ盤CD2枚組を通して、キース・エマーソンのハモンド・オルガンを心ゆくまで堪能できるのだ。というか、ロックという音楽ジャンルにおいての、ハモンド・オルガンの音色、フレーズ、パターンのほぼ全てを体験し、堪能することが出来るのだ。
キース・エマーソンのハモンド・オルガンを体験し、理解する上では、このフィルモア・イーストのライブ盤のみで事足りるでしょう。いや〜長生きはしてみるものですね。こんなライブ盤が2010年になって発掘され、正式盤としてリリースされるとは思わなかった。
キースのハモンド・オルガンは、ファンキーさを省いて、ブルージーな音色を封印して、ロックの要件に応じた、先鋭的で攻撃的で荒々しく疾走感溢れる音色、フレーズ、パターンの全てを表現し、確立した。それが手に取るように判る、実に優れた内容のライブ盤です。プログレ者ベテランの方には一聴をお勧めしたいです。やはり、キースのキーボードの基本はハモンド・オルガンですね。
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貴重な情報ありがとうございます。
ハモンドオルガンは現在日本の楽器メーカーが建里を買い製造しているようですが今更にトーンホイール方式ではありません。
それでも多列接点を復元して名器B-3に近づける努力が感じられます。
1955年頃B-3が出るまではジミースミスもレスリーを早回しにしてブロックコードでバーモントの月なんか弾いていたようです。
投稿: 藤按 | 2012年6月24日 (日曜日) 07時19分