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2012年5月29日 (火曜日)

世界に通用する日本発フュージョン

僕はこのアルバムを聴く度に、世界に通用する「日本発フュージョン盤」として、心の中でどこか誇らしげになる。そんな、実に優れた日本発のフュージョン・ジャズ。そのアルバムとは、渡辺香津美『Mobo』(写真左)。

1983年8月14日から9月8日の間で録音された。リリースは同じく1983年。ちなみにパーソネルは、Marcus Miller、Robbie Shakespere (b),  Sly Dumber, Omar Hakim, Steve Jordan (ds), 渡辺香津美 (g), Don Grolnick (key), Michael Brecker (ts)。

当時、フュージョン・ジャズを牽引した優れたミュージシャンの名前がズラリと並ぶ。こんなフュージョン・ジャズの強者どもを、我らが渡辺香津美はリーダーとして統率し、リーダーとして演奏をコントロールする。そして、自ら、当時、最先端のエレキ・ジャズ・ギターを余すところなく弾きまくり、当時として最高のフレーズを決めまくる。

演奏全体の雰囲気は「エレ・マイルス」の展開・組み立てを踏襲しているように感じる。渡辺香津美が考える「エレ・マイルス」という風情。エレクトリック楽器とアコースティック楽器の融合の仕方は、1970年代の日本フュージョン・ジャズの奇跡的なアルバム『KYLYN』のアプローチを踏襲しているように感じる。リズム&ビートは、渡辺香津美風の「エレ・マイルス」。フレーズとユニゾン&ハーモニーは『KYLYN』。

当時として、そして、今の耳にも、このアルバムに詰まった演奏は、フュージョン・ジャズの最先端を行くもの。フュージョン・ジャズとは言え、ソフト&メロウな、ちょっと「軟弱」で情緒的なものでは無い。この『Mobo』は、メインストリーム風の、実に硬派なコンテンポラリー・ジャズと言える。
 

Kazumi_watabnabe_mobo

 
マーカス・ミラーのベースとマイケル・ブレッカーのテナーが突出して優れている。この音は、既にフュージョンのものでは無い。限りなく純ジャズに近い、硬派なコンテンポラリー・ジャズ。

当時の時代の最先端を行く、今の耳にも十分先進的なコンテンポラリー・ジャズとして通用するセッションが、我らが渡辺香津美の手でアルバム化された事実に、今でも万感の想いを抱きます。日本人として、胸を張って世界のジャズ界にその真価を問うことが出来る、素晴らしいアルバムだと思います。

『Mobo』=「モボ」とは、大正時代の「モダン・ボーイ」の短縮形。古いジャズのフォーマットを演奏の底で踏襲しつつ、最先端のリズム&ビートと新鮮なフレーズとアドリブ。これぞ「モダンなフュージョン・ジャズ」と言える内容です。

CDのリリースに当たって、LP時代には、収録時間の関係で編集されていたオリジナル演奏を「完全収録」しています。この『Mobo』を堪能するにはCDの完全盤がベターです。フュージョン・ジャズを軟弱と侮るなかれ。1980年代、純ジャズ復古の号令の中で、フュージョン・ジャズが真の意味で成熟した姿を見せる。『Mobo』は、そんな瞬間の一つを捉えた素晴らしいアルバムです。
 
 
 
★大震災から1年が過ぎた。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4

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