清々しい初夏の朝にヴァイブの音
清々しい初夏の朝に、ジャズ・ヴァイブの音が良く似合う。このモットーは、ジャズを聴き始めた遠く35年前から、この初夏の季節になると必ず思い出す。
初夏の雰囲気にピッタリとフィットするジャズ・ヴァイブの筆頭は「Gary Burton(ゲイリー・バートン)」。僕は、このバートンのヴァイブがジャズ者初心者の頃から大好きだ。4本マレットで独特の響きを醸し出すヴァイブは、クラシック的で端正な雰囲気漂い、官能的で流麗。テクニックが優秀なので、速いパッセージでの疾走感が抜群。
この初夏の季節に必ず選択するバートンのアルバムが『Passengers』(写真左)。1976年11月の録音。ちなみにパーソネルは、 Gary Burton (vib), Pat Metheny (el-g), Steve Swallow (el-b), Eberhard Weber (b), Dan Gottlieb (ds)。
パーソネルを見渡すと、まずは、ギターのPat Methenyの名前が目を惹く。このアルバムは、メセニーが、バートンのグループに参加していた頃のアルバムで、最もメセニー色が濃い1枚になる。アルバムに収録の全6曲中3曲、「Nacada」「The Whopper」「B&G (Midwestern Nights Dream)」がメセニーの作曲である。ちなみにドラムのDan Gottliebは、Pat Metheny Group(PMG)の初代ドラマー。当然、この3曲はPMG色が強くなる。
この2〜4曲目のメセニー作曲の3曲を続けて聴くと、その音世界はメセニー色で一杯になる。まず、この雰囲気が、清々しい初夏の朝にピッタリです。
そして、我がアイドル、チック・コリア作曲の1曲目「Sea Journey」が素晴らし い。この深淵で幽玄で爽快感溢れる名曲を、バートンのヴァイブが弾き紡いでいく。この曲を聴いていると、バートンとチックの相性って抜群なんだな、と感心する。チックの音世界とバートンのヴァイブの音がピッタリとマッチする。特に、この「Sea Journey」は、バートンの為に書いた曲と言って良いほどである。
チック曲にバートンのヴァイブ。このピッタリとしたマッチング感が、これまた、清々しい初夏の朝にピッタリです。
ラス前のEberhard Weber作曲の「Yellow Fields」、そして、ラストのSteve Swallow作曲の「Claude and Betty」になると、欧州ジャズお得意の現代音楽的な、ちょっとフリーキーでアブストラクトな、自由度の高いモーダルな響きの演奏が展開される。これが、また聴き応えがある。硬派なメインストリーム・ジャズとはかくあるべし、って感じの本当に硬派な演奏で、思わず襟元を正して聴き直したりすることしばしば、です。
この少し危険な雰囲気のする、テンションの高い、ちょっとフリーキーでアブストラクトな、自由度の高いモーダルな響きの演奏が、意外と、清々しい初夏の朝にピッタリです。
そして、このアルバムのユニークなところは、Steve Swallow (el-b), Eberhard Weber (b)のダブル・ベース編成。独ジャズの大御所Eberhard Weberの個性溢れるアコベが強烈な印象。エレベのSteve Swallowも独特の音色で対抗。ともすれば、2本のベースが混在して収拾がつかなくなりそうなのだが、そこはテクニック優秀な「強者」の二人。両者とも巧みにそれを回避しつつ、演奏全体の底をしっかりと支えている。
あまり、ジャズのアルバム紹介に名を連ねるアルバムではありませんが、このバートンのアルバムが『Passengers』は、ジャズ者初心者の方々からベテランの方々まで、十分に楽しむ事ができる、良い作品だと思います。特に、欧州ジャズ独特の、クラシック的で端正で現代音楽的なところが好みの方には、是非、一度聴いて頂きたいアルバムですね。
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楽しく拝見いたしました。私も同じ世代です。
ゲーリーバートンは小曽根真の日本でのデビューアルバムで持っています。
今後時々お邪魔します。
投稿: あんしん堂 | 2012年5月20日 (日曜日) 10時13分
この季節になるとヴァイブの音が恋しくなります。ゲイリーバートン、良いですよねぇ。ご紹介頂いたアルバム、どちらも未聴なので、今度聴いてみようと思います。
マスターが絶不調で大変な思いをなさっていた頃、幾度もコメントさせて頂こうと思ったのですが、こちらもちょっとばかし大変なことになってまして、コメを躊躇してしまっていました。
こちらは取り返しのつかないことになってしまって後悔も何も・・・orz
何よりご自身が大事です!どうかお元気でいて下さい。
マスターがお元気でおられることがご家族はもちろんのこと、マスターの周囲、皆の幸せでもあるのでして・・・。
投稿: yuriko | 2012年5月21日 (月曜日) 19時28分
はじめまして、 あんしん堂さん。松和のマスターです。
コメントありがとうございます。同世代のよしみとして、今後ともよろしくお願いします m(_ _)m。
投稿: 松和のマスター | 2012年5月21日 (月曜日) 23時01分
yurikoさん、お久しぶりです。松和のマスターです。
ゲイリー・バートンはまだまだ元気一杯で、パットとの再会セッションや
コリアとのデュオの新盤など、新作が続いてリリースされています。
初期の作品も手に入れることが出来て、こちらも聴かないとなあ・・・。
やはり、バートンは現代ジャズ・ヴァイブの第一人者
ですね〜。
yurikoさんのお話しの中の「取り返しのつかないこと」についてはちょっと
心配ですが、私の体調については、今のところ順調に回復しつつあります。
後遺症も一つ一つクリアし、合併症も今のところありません。まあ、
ちょっと命の危なかった時期もあったので、本格的に回復するには、
後半年位はかかるでしょうか。短気にならずに、しっかりと養生しよう
と心がけています。
投稿: 松和のマスター | 2012年5月21日 (月曜日) 23時09分