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2012年5月 9日 (水曜日)

マイルス・デイヴィスの「シエスタ」

今日は、なんだか不安定な天気ですね。僕は不安定な体調です。時差ボケが取れなくてねえ。今日はお昼を食べてから1時間ほど、眠たくて眠たくて。といって、仕事中ですから眠るわけにもいかず・・・、と思いながら、書類に目を通しながら、コックリコック。いけない専門職ですね〜(笑)。

さて、昼寝と言えば「シエスタ」。なんだか強引な誘導なんですが・・・(笑)。「シエスタ」とは、スペイン語でお昼もしくはその時間の昼休憩(13:00〜16:00が目安)を指す言葉。この時間帯は、商店、企業、官公庁などの多くが休業時間となり、一斉にお昼寝の静けさに街は静まりかえる。

今回、南伊太利亜を旅して、移動のバスの中で、偶然、何度かシエスタに出くわしました。街全体、人っ子一人いない。夏至に向かって空高く照りつける太陽。その強い日差しの中で、シエスタで静まりかえる街。街の動きが、街の命が止まった様な、人っ子一人いない街。なんだか異次元に入り込んだような、不思議な風景。不思議な雰囲気。

ここに、Miles Davis(マイルス・デイヴィス)のアルバムがある。
 
タイトルは『Siesta(シエスタ)』(写真左)。1987年1月〜3月の録音。監督マリー・ランバートの映画『SIESTA』のサウンドトラックである。マイルスが委ねた最後のプロデューサー、マーカス・ミラーとの共同作品。

スペインやイタリアなど、地中海沿岸のラテンの血を彷彿とさせる、実にラテンチックで耽美的なアルバム。最晩年のマイルスの傑作の一枚である。このアルバムでのマイルスのトランペットは、本当に良く鳴っている。そして、マーカス・ミラーが中心となったエレクトリック・サウンドがマイルスをガッチリとサポートする。
 

Miles_siesta

「音の間」を活かした、スパニッシュな音の響き。ラテンの血を感じさせるマイナーな響き。マイルスのトランペットは力強く、マイルスにしか出せない音で、朗々と雄大に、「シエスタ」の様々な表情、イメージを想起させるブロウを繰り広げる。

4曲目の「服従」は、シエスタに導く様な幻想的な演奏で、実に良い雰囲気だ。他の曲も、独特の個性的な雰囲気を湛えた、滋味深い曲がズラリと並ぶ。アコースティックなマイルス・ファンにとっては、まったくもって堪えられない、マイルスならではのマイルスの個性の塊の様な、独特なムードを湛えた、限りなく美しい企画盤である。

マーカス・ミラーのプロデュースの下での多重録音の作品なので、硬派なジャズ者の方々は「これはジャズではない」と手厳しいが、ジャズのフォーマットをベースに、多重録音とは言え、これだけアーティスティックな音世界を紡ぎ出せるのは「素晴らしい」の一言。このアルバムを聴けば、ジャズは芸術であることを確信する。

このアルバムを聴けば、当然、ギル・エヴァンス・オーケストラをバックにした『Sketches of Spain』(2010年7月3日のブログ参照・左をクリック)を思い出す。この『Siesta』を聴いた後、『Sketches of Spain』も聴いて頂きたい。マーカス・ミラーが中心となったエレクトリック・サウンドをバックにした『Siesta』と、ギル・エヴァンス・オーケストラのアコースティック・サウンドをバックにした『Sketches of Spain』。どちらも甲乙付けがたい内容です。

この『Siesta』は、マイルスの盟友、ギル・エヴァンスの他界後に発表された作品。ジャケット裏面に記された「This album is dedicated to GIL EVANS The Master」の文字が限りなく哀しい。

エレクトリック主体のサウンドに加えて多重録音ということから、我が国の評論家筋からは、ちょっと受けが悪いアルバムではあるが、 ジャズ者初心者の方々にも、ジャズ者ベテランの方々にも、このアルバムは是非とも聴いて頂きたい。

「シエスタ」の持つ「静けさと哀切さ、そして底に潜む狂気」を巧みに表現したマイルス最晩年の傑作です。

 
 

大震災から1年。決して忘れない。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4

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