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2012年5月14日 (月曜日)

伊ジャズの代表的トランペッター

イタリアン・ジャズは、ピアノだけではない。トランペットについても、優れた人材を輩出している。僕の知っている限りでは、Fabrizio Bosso(ファブリッツィオ・ボッソ)、Paolo Fresu(パオロ・フレス)そして、Enrico Rava(エンリコ・ラヴァ)くらいかなあ。余談になるが、イージーリスニングのジャンルでの、イタリア出身の著名なトランペッターとしては、ニニ・ロッソがいる。

さて、今日は、Enrico Rava(エンリコ・ラヴァ)を選択する。1970年代終わり、僕がジャズ者初心者の頃、エンリコ・ラバと遭遇した。アルバム名は『The Plot』(写真左)。エンリコ・ラヴァが1977年に発表したアルバム。

1976年8月の録音。ちなみにパーソネルは、John Abercrombie (g), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。ECMを支えてきた名手達が、イタリアのトランペッター、エンリコ・ラヴァをサポートしている。

このアルバムは、大学近くの「秘密の喫茶店」で聴いた。こんな渋い、しかも、欧州ジャズの要、ECMレーベルのアルバムが、あの「秘密の喫茶店」に何故存在していたのか、今から振り返って思えば不思議でたまらない。あの喫茶店のママさんは、どうやって、当時では珍しい、ECMレーベルの、しかも、イタリア出身のジャズ・トランペッターの秀作を入手したのか、今もって不思議でたまらない。

さて、このアルバムを、その「秘密の喫茶店」で聴いた時、そう冒頭の1曲目「Tribe」を聴いた時、最初、このトランペッターは「マイルス・デイヴィス」だと思った。艶やかで伸びやかでブリリアントな音色はマイルスそっくり。

バックの演奏は、エレクトリック・ギターを中心に展開されており、これがまた、エレクトリック・マイルスの初期の展開に酷似している。でも、トランペットのフレーズの展開と雰囲気が、マイルスとはちと違う。それでも、全体的なトーンは、明らかにマイルス・デイヴィスである。
 

Enrico_rava_the_plot

 
そこで、エンリコ・ラヴァのバイオグラフィーを覗いてみると、1939年、イタリアのトリエステ生まれ。マイルス・デイヴィスを聴いて感銘を受け、トロンボーンからトランペットに転向した、とある。やっぱり、マイルス・デイヴィスに大きな影響を受けているんだ。なるほど。だから、マイルス・デイヴィスのペットに酷似しているんやなあ。

それでも、2曲目の「On The Red Side Of The Street」以降は、エレクトリック・ジャズとは言っても、確実に、欧州ジャズとしてのエレクトリック・ジャズ、つまり、欧州エレクトリック・ジャズの定石をしっかりと踏まえた展開になっていて、実に聴き応えのある内容になっている。さすがECMレーベル。欧州エレクトリック・ジャズと言っても、しっかりとECMレーベルの個性的な音に染め上げている。

エンリコ・ラヴァのトランペットは、流麗かつ艶やかで伸びやかでブリリアント。マイルスのペットから、ファンクネスを除いた感じ、と形容した良いだろうか。欧州ジャズのマイルス、という雰囲気が個性。テクニックも優秀。破綻の無い、堅実なトランペットは、実に安定感があって、実にアーティスティック。

加えて、バックのアバークロンビーの独特の浮遊感漂うギターが大活躍。ヨン・クリステンセンのドラムも、トニー・ウイリアムスやジャック・デ・ジョネットと比肩できる、柔軟で限りなく自由度が高いもので、硬軟自在、変幻自在なドラミングは聴きどころ満載。

ベースのパレ・ダニエルソンは、徹頭徹尾、堅実なサポート。ダニエルソンの堅実ベースがあるからこそ、ラバのペットやアバークロンビーのギターが限りなくフリーキーに自由度高くインプロビゼーションを展開できるのだ。

イタリアン・ジャズを軽んずることなかれ。正統派ジャズをしっかりと引き継いで、それはそれは硬派な、それはそれはアーティスティックなジャズを展開している。このアルバム『The Plot』、良いアルバムです。全体的には、限りなく自由度の高い、モーダルな内容なので、ジャズ者中級者の方々にお勧めですね。
 
 
 
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