70年代アート・マニア御用達ライブ
昨日に続いて、アート・ペッパーのお話。昨日、アート・ペッパーについては、麻薬禍の為に活動を停止した1960年代を境に、1950年代のペッパーと復帰後の1970年代のどちらが良いかといった議論が白熱した時期があった、と書きました。
実は僕は、この復帰後の1970年代のアート・ペッパーの方を良く聴く。1970年代の方が、よりエモーショナルで、フリーキーな演奏を織り交ぜることによって、インプロビゼーションの表現の幅が格段に拡がり、従前からのテクニック良く滑らかで流麗なアドリブ・ラインが一層美しく、硬派に際立つ。
そして、何より、1970年代のアート・ペッパーは、テクニックも際立っており、本当に溜息が出るほどに、アルト・サックスが良く鳴っていて、演奏全体が安定していて、じっくりとその演奏を聴くことができる。
そんなテクニック際立ち、インプロビゼーションの幅が広がった1970年代のアート・ペッパーを心ゆくまで愛でることが出来るライブ盤がある。『Unreleased Art: Vol.1』(写真左)。
1981年11月22日、網走市民会館での最後の来日公演の貴重な記録。盤の音質は少しだけ落ちるが、そんなことが全く気にならない位、このライブ盤でのアート・ペッパーはじめ、各メンバーの演奏は素晴らしい。ちなみに、パーソネルは、Art Pepper (as), George Cables (p), David Williams (b), Carl Burnett (ds)。
収録された曲を見渡すと、大スタンダードからバラード、カリプソ、ブルース、硬派なワルツ、そして、セロニアス・モンクのオリジナルまで、実にバリエーション豊かな演奏の数々。このバリエーション豊かな楽曲を表現豊かに確かなテクニックで演奏するアート・ペッパー以下のカルテット・メンバーは素晴らしいの一言。
アート・ペッパーのアルトはそれはそれは素晴らしい。1981年11月なんで、亡くなる半年ほどの録音ですが、このライブ演奏の半年後に逝去するなんて絶対に想像出来ません。
それほど、力漲り、気力充実、圧倒的迫力を持って、我々の耳に迫ります。これだけ、充実したアルトを吹きこなすことが出来る、ジャズ・アルト・サクソフォニストはそんなにはいないでしょう。
そして、特筆すべきは、バックを支えるミュージシャン達。特に、ピアノのジョージ・ケイブルスのプレイは素晴らしい。様々なスタイルのピアノを弾きこなし、アート・ペッパーの豊かなバリエーションの表現に貢献しています。本当にバリエーション豊かな、テクニック豊かで、エモーショナルなピアニストです。このライブ盤を聴く度に、ケイブルスのピアノを見直しています。
良いライブ盤です。1970年代以降の、麻薬禍での活動停止の後の「復帰後のアート・ペッパー」が堪能できる優れもので、僕は、このライブ盤は良く聴きます。CD2枚組ですが、聴き始めたら、あっと言う間の1時間50分です。
大震災から1年が過ぎた。決して忘れない。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。
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