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2012年4月17日 (火曜日)

「春」にチェットのボーカル

昨日の決まり文句を繰り返すと、春になると、ジャズ・ボーカルが恋しくなる。温かくなって、ホンワカして、ゆったりリラックスして、のんびりジャズが聴きたくなる。のんびりジャズを聴くとなると、最近はジャズ・ボーカルである。

ということで、今日もジャズ・ボーカルを取り上げる。今日はChet Baker(チェット・ベイカー)。春のホンワカな雰囲気に、妙にピッタリとフィットするチェットの中性的な、柔らかだが無骨なボーカル。アンニュイなチェットのボーカルがピッタリとフィットする季節は「春」である。

今日のアルバムは『Chet Baker Sings - It Could Happen to You』(写真左)。1958年8月の録音。録音は3つのユニットに分かれる。

ひとつは、Chet Baker (tp, vo), Kenny Drew (p), Sam Jones (b), Philly Joe Jones (ds) のパーソネルで、「The More I See You」と「Old Devil Moon」の2曲を録音。 

もうひとつは、Chet Baker (tp, vo), Kenny Drew (p), Sam Jones (b), Dannie Richmond (ds) のパーソネルで、「You're Driving Me Crazy」「It Could Happen To You」「How Long Has This Been Going On?」の3曲を録音。

そして、残りの曲を、Chet Baker (tp, vo), Kenny Drew (p), George Morrow (b), Philly Joe Jones (ds) のパーソネルで録音。

チェット・ベーカーは米国西海岸ジャズを代表するボーカリスト&トランペッター。しかし、このアルバムのセッションはニューヨークで行われている。チェットにとっては他流試合。アウェーでのセッションになる。
 

Chet_it_could_happen_to_you

 
録音した年は1958年。1958年と言えば、ハードバップ時代真っ只中。チェットの中性的な、柔らかだが無骨なボーカルのバックでは、汗が飛び散る様な熱気溢れる、ちょっとラフではあるがファンキーの雰囲気芳しい、米国東海岸のニューヨークが拠点のハードバップが展開されている。と思いきや、意外や意外、しっかりとアレンジ&コントロールされた、米国西海岸風の雰囲気でバッキングされているのだから面白い。

荒々しくダイナミックなドラミングが個性のフィリー・ジョーですら、しっかりと抑制されたドラミングで、チェットのボーカルを盛り立てている。そう、さすがに、米国東海岸はニューヨークの名うての名手揃い。チェットのボーカルの個性を感じ取って、しっかりとチェットのボーカルを盛り立てる側に回っている。

そして、このアルバムを聴く度に感心するのが、ケニー・ドリューのピアノ。伴奏上手なケニー・ドリューの面目躍如。サム・ジョーンズとジョージ・モロウのベースも、そこはかとなく効いている。

そんなプロフェッショナルなバックを得て、チェットのボーカルも気持ちよさそう。この米国東海岸のプロフェッショナルなバックに触発されたのだろうか、意外とチェットのボーカルがいつもより溌剌としている。健康的なアンニュイさとでも表現したら良いだろうか。

チェットはトランペットも優れていて、この1958年という時期は、チェットが溌剌としていた時期で、トランペットも凛としていて、なかなか聴かせてくれる。アンニュイなボーカルと凛としたトランペット。どちらもチェットのかけがえのない個性で不可分なもの。

いつもの退廃的で中性的でアンニュイなチェットのボーカルが、米国東海岸ジャズのプロフェッショナルなバックを得て、いつになく健康的で溌剌としたボーカルを聴かせてくれる異色盤。

そう、チェットの入門盤というより、チェットを聴き馴染んだところで、いつもとは違う、チェットの「異色のボーカルとトランペット」を楽しむことが出来る佳作と言った感じでしょうか。良いアルバムです。

 
 

大震災から1年。決して忘れない。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4

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