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2012年4月19日 (木曜日)

最後の「伝説のカルテット」

いよいよ、ジョン・コルトレーンの聴き直しも最終章にさしかかる。コルトレーンの命日は1967年7月17日。今回のアルバムの録音日は1965年9月2日。命日の約2年前の録音になる。

アルバム名は『First Meditations(For Quartet)』(写真)。タイトルに「First」がつくのは、1965年11月23日録音のアルバム『Meditations』の3カ月前の録音になるからである。

双方のアルバムの収録された曲の内、「Compassion」「Love」「Consequences」「Serenity」が同じで、文字どおり『Meditations』のファースト・ヴァージョンが、この『First Meditations(For Quartet)』。

しかし、『Meditations』には、黄金のカルテット・メンバーである「John Coltrane (ss, ts) McCoy Tyner (p) Jimmy Garrison (b) Elvin Jones (ds)」以外に、Pharoah Sanders (ts) とRashied Ali (ds)が参加している。

この『First Meditations(For Quartet)』は、黄金のカルテットの解体直前の録音になる貴重なもの。この『First Meditations(For Quartet)』以降、まずは、Pharoah Sanders (ts)がレギュラー参加し、黄金のカルテットは過去のものとなっている。

僕はこの『First Meditations(For Quartet)』というアルバムが好きで、このアルバムには、コルトレーンの真っ直ぐ伸びた美しい響きのテナーと、アブストラクトでどうしようもなく破壊的なテナーの、両極端なテナーが共存していて、この両極端なテナーの対比が顕著。

しかし、コルトレーンのテナーは絶好調では無い。美しい響きのテナーのパートは素晴らしい。さすがは、コルトレーンならではのもの。しかし、アブストラクトでどうしようもなく破壊的なテナーは一本調子で、イマージネーションに乏しく、マンネリ化の様相。美しい響きのテナーが、それに相対して素晴らしい個性として存在しているのでまだ良いが、アブストラクトなテナーだけ取り上げてみれば、ここでのコルトレーンは停滞気味である。
 

First_meditations

 
停滞気味のコルトレーンを横目に、黄金のカルテットのリズム・セクションの部分、McCoy Tyner (p) Jimmy Garrison (b) Elvin Jones (ds)のピアノ・トリオの部分の演奏は、最高の極みに達している。

コルトレーン抜きのピアノ・トリオでの演奏が展開される部分があるが、これが素晴らしい。コルトレーンが存在しなくても、このマッコイ、ギャリソン、エルヴィンのピアノ・トリオで、完璧にコルトレーン・ジャズを再現している。

ちなみに、この『First Meditations(For Quartet)』の発売年は1977年。録音されてから、12年ほどお蔵入りしていた音源である。お蔵入りさせる様な内容では無いと思うんだが、当時、アブストラクト&フリーなジャズに突進していたコルトレーンの音源は、なかなかリリースするに至らなかったのかなあ。

確かに、この『First Meditations(For Quartet)』でのコルトレーンは絶好調では無い。どこか迷いとマンネリズムを感じるブロウ。でも、バックのリズム・セクション3人の演奏は凄まじい。主役が好調とは良い難い出来ではあるので、確かにアルバムとしてリリースするには躊躇があったことは想像に難くない。

でも、僕は、このアルバム『First Meditations(For Quartet)』は、結構、繰り返し聴いています。コルトレーンの美しい響きのテナーとアブストラクトでどうしようもなく破壊的なテナーの対比が当時のコルトレーンらしいこと。そして、何より、バックのリズム・セクション3人の演奏が素晴らしい。コルトレーンの傑作とは言いませんが、不思議と繰り返し愛でることの出来る佳作ではあります。

しかしながら、このアルバムのジャケット・デザインは酷い。発売年は1977年で、1977年と言えば、フュージョン・ジャズ華やかなりし時代。

このジャケット・デザインのテイストは、フュージョン・ジャズっぽいものではありますが、コルトレーンの、しかも黄金のカルテット最後のアルバムとして、このジャケットのデザインは無いでしょう。このアルバム、このジャケット・デザインで損をしているところもきっとあるに違いない。
 
 
 
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Never_giveup_4

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