実にジャズらしいジャズ演奏である
雑誌やジャズ本で紹介される名盤、定盤だけがジャズのアルバムでは無い。何気ない切っ掛けで手にするアルバム、ふとしたことから耳にして手にするアルバム。どれもがジャズのアルバムである。
例えば、ジャズ・ピアノの神様アート・テイタムのアルバムを追いかけていて、その中に入っていたライオネル・ハンプトンのリーダー作『Lionel Hampton And His Giants』(写真左)。何気なく手にしたアルバムなのだが、これがまたホンワカ温かい、実にジャズらしいジャズ演奏が詰まっている。
1955年9月の録音になる。パーソネルは、Harry Edison (tp), Lionel Hampton (vib, vo), Art Tatum (p), Barney Kessel (g), Red Callender (b), Buddy Rich (ds)。なかなかに渋いメンバー構成である。
"Sweets" の愛称で呼ばれた「明るく甘い」サウンドが特徴の伝説のトランペッター、ハリー・エディソン。そして、主役のヴァイブ奏者ライオネル・ハンプトン。ジャズ・ピアノの神様アート・テイタム。そして、いぶし銀ギターのバーニー・ケッセル。そして、バップ・ドラムの雄、バディ・リッチ。この辺がメンバーとして目を惹く。
ちなみに、ライオネル・ハンプトンは、ジャズの世界で、ヴァイブ奏者として有名になった最初の人。癖のないハッピーなヴァイブは、ハンプトンならではのもの。とにかく聴いていて楽しいヴァイブである。
ビ・バップやハード・バップが追求した「アーティスティック」な音世界とは全く無縁な癖の無さ。実に素直で明るいヴァイブが個性。この『Lionel Hampton And His Giants』では、そんなハンプトンのヴァイブを堪能出来る。ハリー・エディソンのトランペットも明るくて良い。テクニックがどうの、フレーズがどうのという以前に、聴いていてとても楽しいトランペットである。溌剌としていてブリリアント。明らかに「ジャズ」という雰囲気が明確に漂う。
ケッセルのギターはポジティブで味がある。バディ・リッチのドラムは明快で溌剌感満載。とにかく、聴いていて楽しい、明るいジャズがこのアルバムに詰まっている。
そして、このアルバムでのテイタムのピアノは実に味がある。録音バランスの妙で、ちょっと奥に下がった感じで、雄弁なテイタムのピアノが鳴り響く。ちょっと奥に下がった雰囲気が実に奥ゆかしく、雄弁なテイタムが良いバランスで鳴り響く。そして、良く聴くと、このアルバムでのテイタムは、サイドメンとしてサイドメンらしい奥ゆかしいタッチで、伴奏なフレーズを弾きこなしている。このアルバムでのテイタムは実に良い雰囲気だ。
この『Lionel Hampton And His Giants』の収録曲は以下の通り。
1. Plaid
2. Somebody Loves Me
3. Deep Purple
4. September Song
5. Verve Blues
特に、この5曲目「Verve Blues」が良い。12分強の長尺のジャム・セッション風の演奏だが、実に良い雰囲気だ。ビ・バップやハード・バップが追求した「アーティスティック」な音世界とは全く無縁で、とにかく楽しく、明るく、ブルージーな、大衆音楽としてのジャズがある。
ライオネル・ハンプトンを愛でるには、とても良いアルバムだと思います。ハンプトンのヴァイブは癖が無い。癖が無い分、金太郎飴的なので、どのアルバムの演奏も同じに聴こえるところが「玉に瑕」。
よって、アルバムの全体の演奏の良し悪しで、ハンプトンを愛でるに良いアルバムかどうかが決まると思っています。そういう意味で、この『Lionel Hampton And His Giants』は、ハンプトンを愛でるに良いアルバムだと思います。ダウンロード・サイトで入手可能ですので、ジャズ者ベテランの方は一聴されてはいかが・・・。
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