ロック・インスト界からの返答
ジャズ・ロックからクロスオーバー、そしてフュージョン。ロックの要素を取り入れて発展した、ジャズのエレクトリック楽器のインストルメンタルの流れは1970年代。横目でロック・シーンを眺めると、どうなんだろう・・・。
米国は、クロスオーバー・ジャズ、フュージョン・ジャズとロックの世界は明快に分かれているが、英国をはじめ、独など、ヨーロッパ圏では、クロスオーバー・ジャズ、フュージョン・ジャズとロックの境界線は曖昧。
エレクトリック・ジャズにロックの要素を取り入れたのがクロスオーバー・ジャズであり、フュージョン・ジャズ。ジャズにロックの要素を融合するのであるが、ヨーロッパでは、なぜか、ロックのバンドがジャズとロックの両方をやるケースが多々あるようだ。まあ、逆のケース、ジャズのバンドがロックをやって有名になるケースは聞いたことはないけど・・・。
しかし、そのヨーロッパ圏のクロスオーバー・ジャズ、フュージョン・ジャズとロックの境界線の曖昧な部分は、プログレッシブ・ロックに限定される。プログレッシブ・ロックにのみ、エレクトリック楽器のインストルメンタルが存在する。プログレッシブ・ロックの世界に、ジャズとロックの共存っていう曖昧な世界が存在した。
しかし、例外はある。1975年、三大ロック・ギタリストの一人、ジェフ・ベック(Jeff Beck)が、完全ギター・インストに挑戦した『Blow By Blow』(写真)である。邦題は『ギター殺人者の凱旋』。この奇異な邦題はさておき、この『Blow By Blow』は、ギター職人ジェフ・ベックが、エレクトリック・ギター片手に、オール・インストの演奏を完遂させた、素晴らしい内容のアルバムである。
時は1975年、ジャズ界は、クロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズへの移行の時代。フュージョン・ジャズと言えば、ロックの要素を取り入れた、完全なエレクトリック楽器のインストの世界。そのフュージョン・ジャズの完全エレクトリック楽器インストの世界に、真っ向から対抗した様な、ジェフ・ベックの完全エレクトリック・ギター・インストの世界。
このジェフの『Blow By Blow』は、ジャズ界のトレンドの流れ、クロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズのエレクトリック楽器のインストルメンタルに対する、ロック・インスト界からの返答の様な内容である。
『Blow By Blow』は、ロック・ビートにのったエレクトリック・インストであり、ファンキーなノリ、8ビートなノリでありながら、決してジャジーにならない。ジャズが持つ独特なスイング感が、この『Blow By Blow』のインストには皆無。徹頭徹尾、ロックのテイスト、ノリのみで構成されるエレクトリック・ギター・インストの世界。
8ビートの世界なので、ジャズの4ビートのバリエーションのはずが、この『Blow By Blow』は絶対にスインギーにならない。ジャズ独特のスイング感を生み出す「オフ・ビート」が希薄なのがその原因。
だからこそ、この『Blow By Blow』は、ジャズ界のトレンドの流れ、ロックの要素を取り入れ発展した、クロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズのエレクトリック楽器のインストルメンタルに対する、ロック・インスト界からの返答の様な内容と評価される所以である。
ロック独特のノリとビートにのって、めくるめくエレクトリック・ギター・インストの世界が展開される。徹頭徹尾、ロックのインストの世界。しかし、この世界は、明らかに、クロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズのエレクトリック楽器のインストルメンタルの世界を凌駕する内容である。
この『Blow By Blow』の中で、唯一「Freeway Jam」だけが、オフビートのノリで展開される。この「Freeway Jam」のみが、クロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズのエレクトリック楽器のインストルメンタルの世界と接近し、シンクロした演奏。
このフュージョンなインストを聴いみても、明らかに、クロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズのエレクトリック楽器のインストルメンタルの世界を凌駕する内容である。ジェフ・ベック恐るべし、である。
大震災から1年。決して忘れない。常に関与し続ける。
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