クールなオルガン、もう一丁
そのコッテコテの「どファンキー」とは対極の、静的でクールな、決して熱くならない、冷静で涼しげなオルガン・ジャズもあります。その代表格が Sam Yahel(サム・ヤヘル)。
3月22日のブログ(左をクリック)でご紹介したアルバム『Trio』。このアルバムは、1997年12月の録音。パーソネルは、Sam Yahel(org), Peter Bernstein(g), Brian Blade(ds)。ヤヘルのオルガンがベースの役割も兼ねて、ドラムとギターのトリオ・アルバムである。ギターの音色が、静的でクールな雰囲気を増幅させて、それはそれは冷静なオルガン・ジャズである。
そんなヤヘルのオルガン・トリオで、もう一枚、お勧めのアルバムがある。『Truth and Beauty』(写真左)。2005年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Sam Yahel(org), Joshua Redman(ts), Brian Blade(ds)。こちらは、ヤヘルのオルガンがベースの役割も兼ねては同じだが、ドラムとサックスのトリオ・アルバムである。
ギターがサックスに変わっただけで、アルバム全体の演奏に「躍動感」が加わって、実に華やかな雰囲気になっている。サックスの躍動感とメリハリのある音色が、かえって、ヤヘルの静的でクールな、決して熱くならない、冷静で涼しげなオルガンを強調する効果を出していて、なかなかに味わい深い。
特に、このジョシュアのテナーが実に良い。躍動感溢れ、ヤヘルの静的でクールなオルガンに呼応するように、ファンキーで黒い雰囲気は極力抑えつつ、実に知的で魅力溢れるテナーを吹きまくっている。これだけ知的かつ躍動感を前面に押し出して吹くジョシュアは実に魅力的。
ドラムは、ブライアン・ブレイド。この人のドラミングは音色もリズムも多彩で、ポリリズミックなドラミングも有効だし、スタンダードなオフビートのドラミングも魅力的。これだけ多彩で様々なビートを叩き出すドラムがバックに控えているからこそ、フロントのオルガンについては、様々なアプローチが可能となって、オルガン・ジャズの可能性が広がる。
僕は、オルガン・ジャズの可能性を広げるのは、ドラムとの相性とコラボだと思っている。そういう意味で、ヤヘルのオルガンにブレイドのドラムは相性ピッタリ。ブレイドの多彩で豊かなドラミングとの相乗効果で、ヤヘルのオルガンの可能性がどんどん広がっている。そんなオルガン・ジャズの可能性の広がる中で、ジョシュアがストレートで躍動感溢れるテナーを吹きまくるのだ。悪かろうはずがない。
いわゆるコテコテ系オルガン・グルーブとは違う、コンテンポラリーでスタイリッシュ、静的でクールな、決して熱くならない、冷静で涼しげなオルガン・グルーブが心ゆくまで楽しめる、なかなかに優れた内容の一枚です。静の『Trio』、動の『Truth and Beauty』。ヤヘルのオルガン・ジャズ入門盤としてこの2枚はお勧めやね〜。
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