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2012年4月25日 (水曜日)

「ロックの歌姫」がジャズに挑戦

1980年代に差し掛かると、ロックとジャズの垣根が曖昧になるというか、ロックのボーカリストがジャズを歌うなんて企画ものが出てきたりして、これがまた、玉石混淆としていて、良いものあれば、なんじゃこれ、というものもあった(笑)。

リンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt)と言えば、米国西海岸ロックの歌姫。1970年代、カントリー・ロックを始めとしてウエスト・コースト・ロックの世界の中で、一世を風靡した女性ロック・ボーカリストである。優れた声量と色艶のある声が、愛らしくもあり、コケティッシュでもあり、僕は、このリンダの歌声が結構お気に入りだったなあ。

この米国西海岸ロックの歌姫リンダ・ロンシュタットが、1983年、突然、ジャズ・スタンダードに挑戦する。そのアルバムは『What's New』(写真左)。

決して、ロックの歌姫の思いつきでは無い。構想に3年をかけ、練習を重ね、満を持して、ピーター・アッシャーのプロデュースのもと、ジャズ・スタンダードを歌うリンダである。収録された曲は以下の通り。

1. What's New
2. I've Got A Crush On You
3. Guess I'll Hang My Tears Out To Dry
4. Crazy He Calls Me
5. Someone To Watch Over Me
6. I Don't Stand A Ghost Of A Chance With You
7. What'll I Do
8. Lover Man (Oh Where Can You Be)
9. Good-Bye
 
Linda_ronstadt_whats_new
 
1920年から1950年代までのスタンダード・ナンバーを集めた、なかなか渋い選曲である。さすが、知将ピーター・アッシャーの慧眼の成せる技。ジャズ者ベテランの目から見ても、なかなか渋い、確かに、リンダが歌うと映えそうな選曲である。

そして、このアルバムでのリンダのジャズ・ボーカルが、これまた素晴らしい。さすが、ウエスト・コースト・ロックの世界の中で、一世を風靡した米国西海岸ロックの歌姫である。このジャズ・ボーカル初挑戦のアルバムで、既に、リンダならではのボーカルの個性が明確に現れている。

歌い方として、「声量豊かで、ストレートにフェイク無しで、歌い上げる」というリンダの個性。変にフェイクを入れずに、ロック・ボーカリストの個性を横展開してのストレートなジャズ・ボーカルはなかなか新鮮に響く。これだけ澄んだ伸びのある歌声は、ジャズの世界ではなかなか聴くことができないもの。

さすがに、一世を風靡した米国西海岸ロックの歌姫である。ちょっとジャズに挑戦してみました的な、ロックの片手間にジャズ・ボーカルに手を染めました的な雰囲気は微塵も無い。しっかりとした見識と目的のもとで、リンダはジャズ・ボーカルにチャレンジしている。このアルバムでのリンダの歌声は、ジャズ・ボーカルとして立派な出来である。

全曲スローバラードを選んだという点も、米国西海岸ロックの歌姫がジャズ・ボーカルに挑戦したという背景を考えると、意外性があって良い。良く考え、良く準備された、ジャズ・ボーカルの佳作である。

こうして、1980年代になると、ロック畑の歌手がジャズ・ボーカルにチャレンジするというケースが出てくる。これはこれで面白い。但し、玉石混淆としていて、良いものあれば、なんじゃこれ、というものもあるので、アルバムを選ぶ時は、ちょっと気を付けないといけない。なんじゃこれ、というのを掴まされたら、暫く、気持ちが塞いでしまうこと請け合いである(笑)。 

 
 

大震災から1年。決して忘れない。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4

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