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2012年3月 3日 (土曜日)

「風」の傑作『Windless blue』

「風」と言えば、かぐや姫の伊勢正三と、猫の大久保一久が1975年に結成したフォーク・デュオ。1970年代のJポップを彩る「名フォーク・デュオ」のひとつである。

そんな風が、1976年11月25日にリリースしたサード・アルバムが『Windless blue』(写真左)。セカンドアルバムまでの「風」は、アコギ主体のフォーク・デュオだったが、このアルバムからアコギをエレキに持ち代え、その音楽コンセプトを大幅に拡げた。この「風」の変化は、当時、物議を醸し出した。

冒頭の3曲、「ほおづえをつく女」「夜の国道」「3号線を左に折れ」を聴けば、その音楽コンセプトが理解出来る。基本は、フォーク・デュオの時代と変わらない。歌われる情景は、フォークソング時代のウェットで現実的な世界では無く、アーバンで小説的な世界であることは変わらない。

しかし、曲のアレンジのコンセプトが大きく変化している。簡単に言うと、電気楽器の導入を前提として、当時、流行の先端だった米国西海岸ロック、特に、ロスのアーバン系ロック(例えばSteely Danなど)のアレンジを下敷きにしている。

コーラスの付け方だって、ブラスの付け方だって米国西海岸。エレギの音も米国西海岸である。「ほおづえをつく女」など、文句なく格好良いエレギの音、フレーズも米国西海岸である。

4曲目の「旅の午後」は、僕の大のお気に入り曲だが、曲の爽やかさ、曲の疾走感は、米国西海岸ロックを彷彿とさせる。後半、ブラスのアレンジが米国西海岸的で、今でも新鮮に響く。メジャー調のあっけらかんとした曲調は、久保やんの得意とするところだ。

5曲目の「通り雨」は、ガラリと変わって、やや翳りのあるマイナー調のアーバンな雰囲気の曲。しかし、曲の疾走感は変わらない。マイナー調の曲調がアーバンな雰囲気を増幅させて、シティ・ポップの大人で洒落た雰囲気がプンプン漂う。とにかく「渋くて格好良い」曲だ。
 

Windless_blue

 
ここまでが、LP時代で言う「A面」。この「A面」の5曲「ほおづえをつく女」「夜の国道」「3号線を左に折れ」「旅の午後」「通り雨」こそが、このアルバムの最大の価値である。いわゆる「Japanese City Pop」の古典的名演と評価されて然るべき、素晴らしい内容であり、当時としては、相当に先進的で、米国西海岸ロックの名盤に収録された曲たちと比較しても、勝るとも劣らないものである。

B面の曲たちについては、アレンジは全くA面と変わらない。基本は米国西海岸、ところどころ、アイリッシュな響きも織り込んで、シティ・ポップの大人で洒落た雰囲気が色濃く漂う。

しかし、歌われている歌詞は、フォークソング時代のウェットで現実的な世界を色濃く残しており、シティ・ポップの大人で洒落た雰囲気なアレンジとのギャップが大きい。当時の「日本のポップス」らしい、ちょっとした「違和感」を感じるところが、「Japanese City Pop」の古典的名演と評価されて然るべき「A面」とは異なるところ。

B面の曲の中で、個人的に思い入れの強い曲が「君と歩いた青春」。歌詞の内容を見れば、「なごり雪」のプロローグの様な内容で、まず、この歌詞の内容が「泣ける」。この歌詞を聴く度に、学生時代の青さを思い起こし、セピア色の甘酸っぱい感情に「しみじみ」としてしまう。今となっては「微笑ましいエピソード」であるが、学生当時、遠く離れた、つかず離れずの彼女とのシチュエーションにだぶるところがあって、とても懐かしい想いにかられる。

この「風」のサード・アルバム『Windless blue』は名盤である。特に「Japanese City Pop」の古典的名演として記憶されるべき、名盤である。シティ・ポップの大人で洒落た雰囲気なアレンジは、今の耳にも、未だに「新鮮」に響く。

ちなみに、風のファーストアルバムは、2009年12月12日のブログ(左をクリック)に、セカンド・アルバム『時は流れて…』は、2009年11月23日のブログ(左をクリック)で語っていますので、こちらもよろしくどうぞ・・・。

 
 

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