ペトルチアーニのソロ・ピアノ
僕のお気に入りのジャズ・ピアニストの一人、Michel Petrucciani(ミシェル・ペトルチアーニ、愛称ペト)。ビル・エバンス、チック・コリアに次いでのお気に入り。
ペトのピアノはポジティブ。「胸の空くような」スカッとする、爽快感抜群のピアノ。ペトの硬質な叩くような、それでいて耳障りにならないピアノ・タッチ、超絶技巧にとても回る右手と左手。歌心抜群の歌うようなフレーズ、ちょっとラテンチックで翳りのある響き。ペトのピアノの特徴は、素直にどれもが心に響く。
そんなペトがソロ・ピアノにチャレンジしたアルバムがある。ソロ・ピアノへの2度目のチャレンジになる『Promenade With Duke』(写真左)。1993年の録音。ソロ・ピアノのチャレンジに、デューク・エリントンにまつわる楽曲を持ってきたところに、ペトの心意気と高邁なチャレンジ精神を感じる。
このソロ・アルバムでのペトのタッチは、いつになく力強いタッチが印象に残る。タッチが強いとは言え、決して、耳につくことはなく、ポジティブにキラキラと輝く様な硬質なタッチは、聴く耳に爽快な印象を残してくれる。リズムを打つ左手と踊るような右手が、素晴らしく高度なテクニックと共に乱舞する。溜息が出るような素晴らしさ。
収録されたデューク・エリントンにまつわる楽曲は以下の通り。デューク作の超有名曲がずらりと並ぶ。
1 Caravan
2 Lush Life
3 Take the A Train
4 African Flower
5 In a Sentimental Mood
6 Hidden Joy
7 One Night in the Hotel
8 Satin Doll
9 C Jam Blues
どの楽曲もどっぷりと「デュークの世界」である。既に「ジャズ・スタンダード」として君臨している楽曲の中に、4曲目の「African Flower」や曲目の「Hidden Joy」や7曲目の「One Night in the Hotel」など、デュークを良く知るものならではの選曲が実に「にくい」。この「ならではの選曲」が実に良い。実に良い内容なのである。
既に「ジャズ・スタンダード」として君臨している楽曲については、ペトはひと工夫もふた工夫もしていて、新しい解釈とアレンジを加えている。そして、これがしっかりと成果を出している。ただでは終わらせない。平凡では終わらない。ペトのアレンジメントの才能を強く感じる。
このソロ・アルバムでのペトは、デューク・エリントンにまつわる楽曲を、それまでの過去の成果を忠実になぞるのではなく、ペトの個性をベースにペトとしての解釈とアレンジを持って、デュークの楽曲と対峙する。
デュークの楽曲の持つ独特のスイング感を左手で再現しながらも、右手の旋律はほのかにロマンチシズム漂うもの。このロマンチシズムの芳香はペトならではの解釈と感じる。
打弦の力強さは、ペトとデュークのピアノの共通点。そして、ロマンチシズムの芳香はペトならではのもの。ペト自身、最も影響を受けたピアニストと言っていたデュークのピアノを敬意をもって再現しつつ、ペトの個性を漂わせて、このピアノ・ソロで固められた「デューク・エリントン楽曲集」は独特の輝きを放つ。
素晴らしいソロ・アルバムだと思います。ペトの個性が全開。ペトのアレンジの才能も全開。ロマンチシズムを漂わせながら、ピアノを「鳴らし切っている」その力強いタッチでの「デュークの世界」は素晴らしい。もっと評価されて然るべき、ピアノ・ソロの名盤です。
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