ヤヘルの静的でクールなオルガン
若い頃から、オルガン・ジャズが大好きである。オルガンの音は教会の音。幼稚園がミッション系だったこともあって、礼拝の時、讃美歌を歌うバックでファンキーに鳴るオルガン。遠いあの頃から、オルガンの音は大のお気に入り。
オルガン・ジャズと言えば、コテコテの「どファンキー」な音を思い起こします。基本的に、オルガン・ジャズは、コッテコテのファンクネスとソウルフルな風情が「売り」です。ジミー・スミス然り、ジミー・マグリフ然り、ジャック・マクダフ然り、ジョン・パットン然り。大多数のオルガン・ジャズはコッテコテの「どファンキー」です。
しかし、そのコッテコテの「どファンキー」とは対極の、静的でクールな、決して熱くならない、冷静で涼しげなオルガン・ジャズもあります。その代表格が Sam Yahel(サム・ヤヘル)。
サム・ヤヘルのオルガンの特徴はリズム。エクスプレッションペダルを激しく使った割にクールで静的なドライブ感が特徴のリズムが実にアーティスティック。
右手は趣味の良いタメを利かせていて洒脱。ファンキー色はほとんど皆無。静的ではあるが、底にほんのり「熱」を感じる、ブルージーでモダンなアドリブライン。サム・ヤヘルのオルガンの音は一度填まったら病みつきになる。
そんなサム・ヤヘルのアルバムの中で、僕が愛して止まないアルバムの一枚が『Trio』(写真左)。1997年12月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Sam Yahel(org), Peter Bernstein(g), Brian Blade(ds)。ブライアン・ブレイドのドラム参加が目を惹く。
冒頭の「Blues for Bulgaria」が、サム・ヤヘルのオルガンの個性を代表する。ファンキー色は殆ど感じない。静的な響きの中に、そこはかとなく漂うブルージーな感覚。このクールでブルージーな感覚が実に心地良い。
全編に渡って、サム・ヤヘルの静的でクールなオルガンにピッタリと寄り添うようなピーター・バーンスタインのギターが、これまた実に心地良い。サム・ヤヘルの静的でクールなオルガンの音をそのままギターに置き換えた様な響き。
そして、静的でクールなフロント楽器に、心地良い躍動感と緊張感を供給してくれるのが、ブライアン・ブレイドの、間を活かした、ポリリズミックなドラミング。切れ込むようなシンバルの響きが実にクール。
全編に渡って、ギター、ドラムスというシンプルなトリオ編成でありながら、音の厚みも十分、スイング感溢れる演奏と濃厚に漂うグルーブ感が堪らない。コッテコテの「どファンキー」とは対極の、静的でクールな、決して熱くならない、冷静で涼しげなオルガン・ジャズ。これもまた良し、である。
そして、「A Nightingale Sang In Berkeley Square」。僕はこの4曲目を限りなく愛してやまない。
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