リンゴの「ジャズ・スタンダード」
ポール・マッカートニー(Paul McCartney)が、コール・ポーターやファッツ・ワーラーなど、20世紀初期のティン・パン・アレーの名曲、いわゆる「ジャズ・スタンダード」をカバーしたアルバム『Kisses in The Bottom』が話題になっている。
「今やらなければ、もう絶対にやらないっていうような作品だよ」は、ポールの言葉。確かにそう思う。スタンダード曲のカバーは、確かにポールの本筋では無い。
まあ、ビートルズ時代からオリジナリティー溢れるロック楽曲を創作し続けてきた、また、それがポールの最大の価値なんだが、そんなポールが、いきなり「ジャズ・スタンダード」をカバーしたアルバムを量産し始めたらし始めたで、不気味ではある(笑)。
しかし、ポールが「ジャズ・スタンダード」をカバーしたアルバムばかりが話題になっているが、ビートルズの中で、「ジャズ・スタンダード」をカバーしたアルバムをリリースしたメンバーがいる。しかも、1970年3月のリリース。ポールのそれより、40年以上前である。そのメンバーとは、リンゴ・スター(Ringo Starr)、そのアルバムのタイトルは『Sentimental Journey』(写真)。
ふふふっ、1970年当時、押しも押されぬビッグ・スターの一人であるリンゴが、いきなりソロ・アルバムをリリースする。しかも、その内容が、ロックでは無く、「ジャズ・スタンダード」のカバー集というのだから痛快だ。当時のロック者やビートルズ者、リンゴ者の方々の「激しい戸惑い」ときたら、想像に難くない。ビックリしただろうなぁ(笑)。
まずは、アレンジが実に良い。そのアレンジを手がけたのは、ジョージ・マーティン、エルマー・バーンスタイン、クインシー・ジョーンズ、ポール・マッカー トニーという一流のプロデューサー、アレンジャー陣。これだけの錚々たるプロデューサー、アレンジャー陣が腕を振るったアレンジである。悪かろう筈が無い。
リンゴの「ほのぼのとしてポジティブなボーカル」の個性を良く活かしたアレンジで感心することしきり。リンゴのボーカルはテクニック的には決して上手く無い。しかし、味があるというか、上手くは無いが「聴き応え」のあるボーカルをしている。このリンゴの個性的なボーカルが、実はスタンダード・ナンバーと相性が良い。
改めて、その収録曲を列挙すると、以下の通りになる。
1. センチメンタル・ジャーニー(Sentimental Journey)
2. 夜も昼も(Night And Day)
3. ウィスパリング・グラス
(Whispering Grass - Don't Tell The Tress -)
4. バイ・バイ・ブラックバード(Bye Bye Blackbird)
5. アイム・ア・フール・トゥ・ケア(I'm A Fool To Care)
6. スターダスト(Stardust)
7. ブルー・ターニング・グレイ・オーバー・ユー
(Blue, Turning Grey Over You)
8. 慕情(Love Is A Many Splendoured Thing)
9. ドリーム(Dream)
10. あなたはいつも
(You Always Hurt The One You Love)
11. 愛してると云ったっけ
(Have I Told You Lately That I Love You?)
12. レット・ザ・レスト・オブ・ザ・ワールド・ゴー・バイ
(Let The Rest Of The World Go By)
う〜ん、なかなか渋い選曲ですね〜。感心します。皆が知っている大スタンダードと、恐らくリンゴが個人的に愛するスタンダードの、大きく分けて2つの系統に分かれる感じ。リンゴのスタンダード曲に対する「思い入れ」と「捉え方」が、なんとなく判るような気がします。
まあ、リンゴも基本的には「ロックの側のミュージシャン」なので、いきなり「ジャズ・スタンダード」をカバーしたアルバムを量産し始めたらし始めたで、不気味ではある(笑)。まあそれは杞憂というもので、リンゴは、この『Sentimental Journey』以降、「ジャズ・スタンダード」をカバーしたアルバムを作ってはいない。
リンゴは両親のために本作をリリースしたのだとか。そう言えば、ジャケット写真はリンゴの生まれ育った一帯の写真を使っている。ど真ん中に「エンプレス・パブ」がドーンと写っていて、リンゴが育てられた家は、このエンプレス・パブの奥の角を左手に行くとすぐにあるとのこと(レコード・ジャケットに写っているらしい)。
つまり、このアルバムで歌われるジャズ・スタンダードは、リンゴにとっての「音楽の原風景」なのだ。
大震災から1年。決して忘れない。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。
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某同級生のお陰で、数十年ぶりに「Sentimental Journey」
を聞くことが出来ました。
いやはや、ものすごぉく懐かしく、そして幸せな気分になりました。
やっぱりリンゴの声は幸せを運んでくれます。
でも、このアルバムを聞くと、なんと彼の歌声の低いことか!!
ビートルズでソロを歌っていた数々の曲は、彼にとってはすごく
キーが高かったんだろうなぁ、と今更ながらにびっくり。
頑張ってたんだ、わたしのリンゴ(^^)
投稿: ひとんちゃんぅぅぅ | 2012年3月18日 (日曜日) 22時25分
やあやあ、こんばんは、ひとんちゃん。松和のマスターです。
実はこのリンゴの『Sentimental Journey』は、「ジャズ・スタンダード」
のカバー集ということもあって、10年ほど前にCDで入手して以来、時々、
引っ張り出してきては聴いていて、アレンジの素晴らしさも相まって、
意外な愛聴盤として結構、長く聴き親しんでいます。
リンゴのボーカルは実に味がある。テクニックよりも味で勝負する
ボーカルで、仰るとおり、キーは低めですが、ジャズ・スタンダードを
唄いこなす場合、これぐらい、音域に余裕のある感じの方が安定感と
落ち着きが出て良いかと思います。そういうところにリンゴのボーカルに
関するセンスを感じます (^_^)v。
リンゴの音楽センスの良さを強く認識させてくれる「隠れ名盤」です。
投稿: 松和のマスター | 2012年3月18日 (日曜日) 22時50分