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2012年3月 2日 (金曜日)

1963年、アコ・マイルスの分岐点

今日の話題は、マイルス・デイヴィスの聴き直しシリーズ。マイルス・デイヴィスのアコースティック時代のアルバムの聴き直しシリーズである(ちなみに、右のカテゴリーの「マイルス・デイヴィス」を選択すれば、マイルス・デイヴィスの記事を検索してお楽しみ頂くことができます)。

さて、時代は1963年の初めに遡る。1963年の初め、マイルスの配下からメンバーが次々と退団。マイルスは新たなメンバーを探さなければならなくなる。そこで、目を付けたのが、Victor Feldman(ヴィクター・フェルドマン)。当時、L.A.を拠点に、なかなか新鮮な響きのピアノを弾いていて、米国西海岸ジャズの中、人気ピアニストの一人だった。

マイルスはフェルドマンを自身のバンドに勧誘している。が、フェルドマンは米国西海岸に留まることを選択する。しかしながら、マイルスは、一期一会とばかりに、フェルドマンとの録音を残す。その記録を留めたマイルスのオリジナルアルバムが『Seven Steps to Heaven』(写真左)。

このアルバムの中で、フェルドマンとの録音は、1曲目の「Basin Street Blues」、3曲目の「I Fall In Love Too Easily」、5曲目の「Baby Won't You Please Come Home」の3曲。録音日は1963年4月19日。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Victor Feldman (p), Ron Carter (b), Frank Butler (ds)。すでに、ベースのロン・カーターはここで参入している。

かたや、2曲目の「Seven Steps To Heaven」、4曲目「So Near, So Far」、6曲目「Joshua」の3曲は、1963年5月14日の録音。 ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), George Coleman (ts), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。黄金のクインテットと呼ばれるメンバーの中の4人、マイルス当人と、ピアノのハンコックとベースのロン、ドラムのトニーが初めて揃って録音したことで有名なセッション。
 
Seven_steps_to_heaven
  
まず、この2つのセッション共通として言えることは、このアルバムでのマイルスは既に「ジャズ界の帝王」としての貫禄十分。ペットのテクニックも音色も、全く持ってマイルスの個性が映えまくっており、堂々たる吹きっぷりである。マイルスのペットは、その存在感が抜群で、このアルバムのマイルスのペットを愛でるだけでも十分な聴き応えがある。

そして、 マイルス当人と、ピアノのハンコックとベースのロン、ドラムのトニーが初めて揃って録音したということで、1963年5月14日の録音ばかりが「斬新な響きを宿した先進的な演奏」としてもてはやされはいる。

まあ、確かにそうなんだろうが、ハービーもロンもトニーも録音当時、まだまだ若手駆け出し、アイデア優先の弾きっぷり、叩きっぷり、展開もまだまだ地味で、手放しで誉めそやすほどの高みには達していない。確かに、ハービーもロンもトニーも音の響きは斬新。当時としては、最先端の今までに無い「新しい響きと感性」を宿していることは聴いてとれる。しかし、この3曲だけ聴けばこのアルバムは十分、っていうほどでは無い。

逆に、ジャズ本、マイルス本にては必ず評価の低い1963年4月19日ではあるが、僕はそんなにレベルの低い演奏とは思わない。フェルドマンのピアノの響きやテクニックは、ハービーと比較して劣るものでは無い。

逆に、米国西海岸ジャズ独特の爽やかさという点では、フェルドマンのピアノの個性の方が映える。ドラムのフランク・バトラーの叩きっぷりだって、当時のトニーと比較しても、なんら劣るものではない。逆に、珍しいマイルスのワンホーン・カルテットとして、マイルスのペットだけをクローズアップしていて、聴いていての楽しさは、1963年4月19日の方が上だ。

この1963年録音の『Seven Steps to Heaven』は、当時、マイルスが次のステップとして進むべき方向として、米国西海岸と米国東海岸という「2つの方向」を見据えて、どちらの方向に進むかを斟酌していたということを示唆してくれる。1963年4月19日の録音と1963年5月14日の録音が綺麗に交互に配されていることからも、当時、マイルスもプロデューサーのテオも、どちらの録音も甲乙付けがたいと判断していたに違いない。

でも、1963年4月19日のフェルドマン自身が参加したセッションの方が、圧倒的に評価が低い。不思議だ。あまりに旧来の評論を鵜呑みにし過ぎなのでは、と思う。ちなみに、タイトル曲の「Seven Steps To Heaven」はフェルドマンの作曲です。テーマ部の「たった、たった、たーたーたっ」。確かに「7音」=「Seven Steps」なんですね(笑)。
 
 
 

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