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2012年3月 4日 (日曜日)

「風」のオリジナリティー『海風』

かぐや姫の伊勢正三と、猫の大久保一久が1975年に結成したフォーク・デュオ「風」。セカンドアルバムまでの「風」は、アコギ主体のフォーク・デュオだったが、サード・アルバム『Windless blue』からアコギをエレキに持ち代え、その音楽コンセプトを大幅に拡げた(昨日のブログ参照・左をクリック)。

電気楽器の導入を前提として、当時、流行の先端だった米国西海岸ロック、特に、ロスのアーバン系ロック(例えばSteely Danなど)のアレンジを下敷きにしている。コーラスの付け方だって、ブラスの付け方だって米国西海岸。エレギの音も米国西海岸である。「ほおづえをつく女」など、文句なく格好良いエレギの音、フレーズも米国西海岸である。

そんな「風」が、遂に米国西海岸に飛んで、ロサンゼルスにてレコーディングをしてしまう。その作品が、4thアルバム『海風』(写真左)。1977年10月25日のリリース。このアルバムは、当時、オリコンチャート1位に輝いている。

さすがに、音作りは、徹頭徹尾、米国西海岸ロック。リズムもビートもエレキの音もエレピの音も、当時の流行の最先端を行っていた米国西海岸の音ではある。
 
が、しかし、アルバム全体の音と曲の雰囲気は、決して、米国西海岸に偏ったものでは無いように感じる。米国西海岸への偏り度合いは、前作のサード・アルバム『Windless blue』の方が顕著だと思う。この微妙な軌道修正というか、調整を感じて、どうにもこうにも、この4thアルバム『海風』は、長年に渡って、僕にとって「厄介な」アルバムの一枚だった。

読売オンラインの「生き方!私流」というコラムに、当時の伊勢正三の想いが綴られている。このコラム記事を読ませて貰って「なるほどなあ〜」と思った。リリース当時から、このアルバムはリアルタイムで体験し続けているが、どうにも腑に落ちないことがあった。が、この昨年6月の伊勢正三の想いを読ませて貰って、やっと合点がいった。ちょっと抜粋させていただく。
  
Kaze_umikaze
 
「音楽的に一番こだわっていたころ。もっと一気に進んだのが4枚目の『海風』。『風』の後半、オリジナリティーっていうのを考えるようになった。当時、アメリカ録音の機会があったからです。向こうのレベルの高さみたいなものを目の当たりにするし、日本で格好いいと思ってやっていたウエストコーストサウンドだって、本物じゃない感じがした。『おまえの音楽やってみな』って言われた時、まねっこの音楽しかない。」(以上、2011年06月14日  YOMIURI ONLINEより抜粋)
 
その「腑に落ちないこと」とは、このアルバム『海風』では、ファースト・アルバム、セカンド・アルバムで漂っていた「フォークソング時代のウェットで現実的な世界」を再び全面に押し出している、という点。サード・アルバムのLP時代のB面の「シティ・ポップの大人で洒落た雰囲気なアレンジとのギャップ」という、当時の「日本のポップス」らしい、ちょっとした「違和感」を、このアルバム『海風』では敢えて前面に押し出しているように感じるのだ。

つまりは、『風』のオリジナリティーという点を追求した結果、音作りは米国西海岸ロックのトレンドを拝借はしているものの、歌われる音自体は「日本のポップス」らしい「フォークソング時代のウェットで現実的な世界」を前面に押し出すことを敢えて選択したんだ、と僕は解釈した。決して「まねっこの音楽」にはしたくなかったんだ、と理解した。

いや〜合点がいきましたね〜。この4thアルバム『海風』って、アレンジと演奏は抜群で、アレンジと演奏だけ取れば、「Japanese City Pop」の古典的名演として、前作の『Windless Blue』を超えるものだと思うんですが、歌われる音自体は「日本のポップス」らしい「フォークソング時代のウェットで現実的な世界」を前面に押し出している。そこがどうしても「City Pop」としての音とのギャップがあって、当時から「戸惑い」を感じる部分だったんですが、やっと合点がいきました。

冒頭のタイトル曲「海風」だけが「Japanese City Pop」の古典的名演として突出しているところが、当時の『風』の想いと取り巻く環境の「ギャップ」を反映している様で、なかなかに興味深いですね。

この4thアルバム『海風』は、『風』のオリジナリティーという点を追求した結果として記録された「日本のポップス」いわゆる、70年代Jポップとしての傑作と位置づけられる作品だと思います。 

 
 

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