« ヤヘルの静的でクールなオルガン | トップページ | 財津さんのセルフカバー集・2 »

2012年3月23日 (金曜日)

エレクトリック・マイルスの最終章

さて、久し振りに、エレクトリック・マイルス。いよいよ、エレクトリック・マイルスの前半のピークに差し掛かる。

1974年3月30日、カーネギー・ホールのライブ録音。そのライブ盤のタイトルは『Dark Magus(ダーク・メイガス)』(写真)。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp, org), Dave Liebman (ss, ts, fl), Azar Lawrence (ts), Pete Cosey, Reggie Lucas (el-g), Michael Henderson (el-b), Al Foster (ds), Mtume (per) 。

エレクトリック・マイルスの前半の終着点『アガパン』の9ヶ月前。フロントのサックスがデイブ・リーブマンの時代。このライブ盤の内容こそが、エレクトリック・マイルス前半戦の最終形。
 
重量級ファンクネスをベースに、ヘヴィーでポリリズミックなリズム&ビートを創出。そんな超弩級なリズム&ビートをバックに、マイルスの電気トランペットとリーブマンのサックスが乱舞する。

『Dark Magus(ダーク・メイガス)』はCD2枚組。CD1枚目は、重量級ファンクネスな超弩級リズム&ビートの洪水。冒頭から、暴風雨の様な激しいリズム&ビートが疾走する。凄まじくハードでヘヴィーで、叩き付けるようなリズム&ビート。なぜ、ここまでにハードなのか。なぜ、ここまでにヘヴィーにしなければならぬのか。激しいテンションと激しい音圧が耳を襲う。

そんな凄まじくハードで叩き付けるようなリズム&ビートをマイルスの電気ペットが切り裂き、リーブマンのサックスが浮遊する。凄まじいほどの音圧。暴風雨のようだ。そして、疾走感抜群のファンクネス。マイルスが『Miles In The Sky』以降、エレクトリックの世界で追求してきたリズム&ビートの最終成果。
 

Dark_magus

 
CD2枚目は、エレクトリック・マイルスが現出する「エレクトリック・メインストリーム・ジャズ」の世界。電気楽器の世界は、メインストリーム・ジャズを表現することは出来ない、とする、頭でっかちのジャズ者の人々に対する「アンチ・テーゼ」。

アブストラクトなマイルスの電気ペットとリーブマンのサックス。それだけでも凄まじいばかりのフリーキーなインプロビゼーションなのだが、そこに、重量感たっぷりなファンクネス溢れる、ポリリズミックでヘヴィーなリズム&ビートが流れ込むと、なんと素晴らしい、芳しき「メインストリーム・ジャズ」が創出される。

リズム&ビートとアブストラクトなマイルスの電気ペットとリーブマンのサックスとが「渾然一体」となった混沌とした音世界ではあるが、ポリリズミックでヘヴィーなリズム&ビートが、その混沌とした音世界を、芳しき「メインストリーム・ジャズ」として成立させる。まるで魔法を見ているような変貌ぶり。限りなくアーティスティックな音世界。

エレクトリック・マイルスの基本である「ファンク・ミュージックの追及」は、このライブ盤で最終章に差し掛かる。最終章は、凄まじくハードでヘヴィーで、叩き付けるようなリズム&ビートが主役。溢れんばかりに危険な香りが漂い、一瞬、不気味ですらあり、芳しくもある。もはや、行き着くところまで行ってしまおうと、生き急ぐように疾走する音。ここでのマイルスは、もはや破綻一歩手前で留まっている様な、レッドゾーン突入直前で危険な状態。

聴くほうも真剣勝負を強いられる。それほどまでに「暴力的で危険な音世界」である。ジャズに優しさ、優雅さを求める向きには、絶対にお勧めしない。正にエレクトリック・マイルス者だけが踏み込むことの出来る「暴力的で危険な音世界」である。取り扱い注意なライブ盤である。
 
 
 
★大震災から1年。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

« ヤヘルの静的でクールなオルガン | トップページ | 財津さんのセルフカバー集・2 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: エレクトリック・マイルスの最終章:

« ヤヘルの静的でクールなオルガン | トップページ | 財津さんのセルフカバー集・2 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2023年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

カテゴリー