こんなアルバムあったんや・11
今日は、アーマッド・ジャマル祭りの番外編。「こんなアルバムあったんや」の第11回目。アーマッド・ジャマルの『Freeflight』(写真左)をご紹介する。
アーマッド・ジャマルの『Freeflight』。1971年7月17日、モントルー・ジャズ・フェスティバルでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p, el-p), Jamil Nasser (b), Frank Gant (ds)。モントルーはスイスにある。冒頭、スイス語(フランス語?)でのアナウンスで、このライブ盤は幕を開ける。
ここでのアーマッド・ジャマルのピアノは、1950〜1960年代までの「しっとりシンプルでオシャレなサウンド」のスタイルが強い。1960年代終わり〜1970年代以降の「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」は多少見え隠れはするが、基本は1950〜1960年代までの「しっとりシンプルでオシャレなサウンド」を踏襲している。
不思議なピアニストである。このアルバムの前に録音された『The Awakening』は1970年の録音。『Poinciana Revisited』は1968年の録音。この2枚のアルバムの、ジャマルのピアノのスタイルは、1960年代終わり〜1970年代以降の「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」である。しかし、1971年録音のこの『Freeflight』は、1950〜1960年代までの「しっとりシンプルでオシャレなサウンド」に戻っている。
しかも、このライブ盤では、ジャマルは電子ピアノ、つまり「エレピ」を弾いているのだ。いや〜珍しい。というか、エレピを弾く必然性があったのか。ジャマルのエレピのスタイルは、実にシンプルでテクニックについては稚拙ですらある。
しかし、例えば、ビル・エバンス、チック・コリア、ハービー・ハンコック、そして、キース・ジャレット等々、超一流のアコースティック・ピアニストのエレピが皆、そうであるように、ジャマルのエレピにも独特の個性的な「味」がある。決して上手くは無いのだが、独特の響きとフレーズがあるのだ。
ジャマルの歪んだ響きのエレピのイメージは「サイケデリック」、そして、リズム&ビート的には「ジャズ・ロック」。エンタテインメント性が豊かなピアニストとして、当時の音楽のトレンドを上手く取り入れた感がある。
この歪んだ響きのエレピを時代遅れと聴くか、サイケデリック色が豊かなジャズ・ロックの名演として聴くか、それによって、このライブ盤の評価は180度変わる。
僕は、このジャマルの「ヘタウマ」なエレピ、好きですね。サイケデリック色が豊かなジャズ・ロックな香りが芳しく、シンプルで稚拙ではあるけれど、味のある演奏で、なかなか聴き応えがあります。
しかし、1950〜1960年代までの、音数を厳選し、間を活かした「しっとりシンプルでオシャレなサウンド」で、マイルスに一目置かれたアコースティック・ピアニストであるアーマッド・ジャマルが、サイケデリック色が豊かなジャズ・ロックなエレピを弾いてしまうのだ。思わず「こんなアルバムあったんや」である(笑)。
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