ロイドのサイケデリック・ジャズ
1960年代後半、フラワームーブメントの煽りで、サイケデリック・ジャズなるものが流行った。その中核は、Charles Lloyd(チャールズ・ロイド)。バックに、あのKeith Jarrett(キース・ジャレット) や Jack DeJohnette(ジャック・デジョネット)を従えて、カルテットとして活動していました。
サイケデリック・ジャズとは言っても、サイケデリック・ロックの様な奇天烈なものでは無く、アーシーで浮遊感のある、ジャズ・ロックとフリー・ジャズのミックスと言った感じの演奏が特徴です。フラワームーブメントの中で受けに受けたジャズなので、サイケデリック・ジャズと呼ばれるのでしょうか。
そのロイドが、キースやデジョネットを従えて活動していた期間は約2年半程度の短期間。そんな短期間の割に、意外と多作で、Atlanticレーベルには8枚のアルバムが残されているようです。当時、このロイドのカルテットは凄い人気だったようですね。
さて、そんなCharles Lloyd Quartetの『Charles Lloyd In Europe』(写真左)をご紹介しましょう。パーソネルは、Charles Lloyd (ts, ss, fl), Keith Jarrett (p), Cecil McBee (b), Jack DeJohnette (ds)。1966年10月29日、ノルウェーの首都オスロの"Aulaen Hall"でのライブ録音とのこと。しかし、このライブ盤、ほんまにライブ録音なんかなあ。観客の歓声や拍手がなんか「わざとらしい」ところが気になる(笑)。
このチャールズ・ロイドのカルテットは、1960年代後半、突如として現れた、なかなか面白い内容のカルテットだった。当時の流行だった、テナーの神様コルトレーンとハービー・ハンコックらの新主流派のモード・ジャズがコラボした様な音。当時、ジャズの世界で「先端」と言われたトレンディーな音をいち早くブレンドした演奏。
バックの3人を従えて、リーダーのロイドがやりたいことをやっているという感じでは無くて、キースはピアノを好き勝手に弾き、デジョネットは叩きまくり、マクビーは我が道を行く、といった風。バックのキース、デジョネット、マクビーのピアノ・トリオのやりたい通りに、リーダーのロイドが乗っかったような演奏。
フロントのロイドが吹かずに、このキース、デジョネット、マクビーのピアノ・トリオの演奏だけになった部分は、それはそれは、素晴らしいピアノ・トリオの演奏になる。
印象的なフレーズ満載の、浮遊感溢れる、美しいモード・ジャズ。そして、モード・ジャズがどんどん発展していって、遂にはフリーに突入する瞬間。これまた美しい。ピアノ、ドラム、ベースが一体となった硬軟自在、変幻自在な演奏は素晴らしい。
ロイドのテナーは、コルトレーンの影響を受けた、というか、コルトレーンそっくり。コルトレーンの演奏の要素やテクニックを全て取り込んで、耳当たりよく、聴き易くした感じとでも言ったら良いでしょうか。とって、コルトレーンほどの深みとテクニックはありません。でも、とにかく聴き易い。
ハードバップ時代の歌うようなフレーズや十八番のシーツ・オブ・サウンド、フリーに走った時の「スピリチュアルな咆哮」など、コルトレーンそっくりに、テクニックのレベルを落として聴き易くしたような、意外と計算された演奏。
聴き易いと言えば、確かに聴き易い。そんな聴き易いコルトレーンの様なロイドのテナーと、まだまだ駆け出しでやっつけ感はあるが、キース、デジョネット、マクビーの、新しい響きと展開を湛えたピアノ・トリオの組合せ。
当時のサイケデリック・ジャズなるものを感じるのに、格好なライブ盤だと思います。でも、ジャズ演奏としての「拡がり」と「深み」に欠けるところがあり、何度か聴くと演奏の展開を覚えてしまい、先が読めるようになってしまって「聴く楽しみ」が薄れてしまうのが「玉に瑕」です。
このロイドのサイケデリック・ジャズの一連のアルバムは、忘れた頃に時たま聴き直す、という感じの聴き方が、飽きが来ないという意味で一番だと思います。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」、「v_matsuwa」で検索して下さい。
がんばろう日本、がんばろう東北。自分の出来ることから復興に協力しよう。
« お次は「かぐや姫ライブ」でこざる | トップページ | スウィング・ジャズに走る時 »
コメント