デスモンドのアルトの本質
今年の冬は寒い。とびきり寒い。でも、もう飽きた。といって、いきなり暖かくなる訳でも無い。仕方が無いので、せめて、暖かな気分になるジャズを聴くことにした。う〜ん「暖かな気分になるジャズ」かぁ。と考えていたら、久々に、ポール・デスモンドを極めたくなってきた。
ウォームで軽やかに飛翔するリリカルなフレーズ、間合いを置きながら、ストレートにスクエアにスイングするインプロビゼーション。ポール・デスモンドのアルト・サックスの個性は他に無い、唯一無二な個性である。このデスモンドのアルトは独特の円やかな音色が特徴で、一聴するだけで直ぐに判る。
しかし、何故かはハッキリしないが、ポール・デスモンドほど、ジャズ評論家の間で評価が低いサックス・プレーヤーはいないだろう。イージーリスニングだとか、ムード音楽だとか、ひ弱だとか、スイングしないとか、悪評ズラリ。どうしてここまで酷いかなあ。
まあ、MJQもそういう傾向にあるけど・・・。ジャズでクラシックやるんじゃないとか、ジャズとは言えない繊細な音とか結構酷い。煙草の煙が充満する薄暗いライブハウスで、熱気溢れる、ファンクネス溢れる、音が弾けて、汗の飛び散る様な演奏だけがジャズじゃないんやけどなあ。
でも、ネット上での、一般のジャズ者の皆さんのデスモンドの評価は決して低くない。というか、ネットでのジャズ者の方々のデスモンドの評価は当を得ている。良かった。僕は、このポール・デスモンドのアルトが大好きなのだ。独特なスイング感、円やかな音色、ウォームで軽やかに飛翔するリリカルなフレーズ、どれを取っても僕には申し分の無い個性である。
そんなポール・デスモンドのアルトを、心ゆくまで堪能できるアルバムが『First Place Again』(写真左)。1959年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as), Jim Hall (g), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)。ポール・デズモンドのアルバムに、デスモンドお気に入りのギター、ジム・ホールが参加したアルバムは6枚あるが、これがその最初となる作品。
ウォーム・アルトのデスモンドの代表作。ウォームなリリカルさの中に「鋭い切れ味」が感じられる硬派な一枚。聴き応え十分。裏ジャケットに、サブ・タイトルとして「An ”After Hours” Session With Paul Desmond And Friends」とある。う〜ん、至極納得。寛いだセッションの中に、デスモンド、ホール、ヒース、ケイの4人4様の玄人芸が、丁々発止と繰り広げられる。
選曲も渋いスタンダード曲中心で、変に企画性を持たせずに、シンプルにセッション風にサラリと仕上げたところが良い。セッション風な録音の中で、デスモンドは、本来の自由奔放なアルトを十分に聴かせてくれる。ホールは、内に熱気を秘めながら、クールで滋味溢れる渋いギターを淡々と聴かせてくれる。この対象的なデスモンドとホールのコラボが実に素晴らしい。
デスモンドがいつになく「鋭い切れ味」で、熱気溢れるブロウを聴かせてくれる。デスモンドのアルトの本質が十分に聴いて取れる名盤だと思います。他の3人、ホールのギターも滋味溢れ、ヒースのベースは堅実堅牢なビートを供給し、ケイのドラムは多彩なテクニックをそこはかとなく披露して、デスモンドのアルトを彩ります。良いアルバムです。
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