寛いで、静かにジャズを楽しむ
The Modern Jazz Quartet With Jimmy Giuffre『The Modern Jazz Quartet At Music Inn』(写真左)。 モダン・ジャズ・カルテット(Modern Jazz Quartet、略してMJQ)に、クラリネットの才人ジミー・ジュフリー(jimmy giuffree・写真右)が参加した佳作。MJQの作品の中でも、あまり名前が挙がらない地味なアルバムである。
でも、この地味で話題に乏しいアルバムが、僕にとっては、なかなかに捨てたものでは無い盤なのだから、ジャズって不思議。なかなか滋味溢れるクールな演奏が詰まっていて、寛いで、静かにジャズを楽しむにはもってこいのアルバムなのだ。
たまにあるのだが、音が大きな、音が元気なジャズが、ちょっと耳に付くことがある。時には、耳に付かない程度の静かな音で、小粋で内容のあるジャズ演奏が聴きたくなることがある。なにも、熱気溢れ、ファンキーで溌剌とした演奏だけがジャズでは無い。TPOに合わせて、ジャズのアルバムもしっかりと選びたいものである。
さて、この『The Modern Jazz Quartet At Music Inn』というアルバム、1958年8月、"Music Inn"での録音になる。ちなみにパーソネルは、Jimmy Giuffre (cl, ts, bs), Milt Jackson (vib), John Lewis (p), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)。ジミー・ジュフリーはクラリネットだけではなく、テナー、バリサクも吹いている。
このアルバム、一言で言うと「静かではあるが、内容は豊か」。演奏時代は穏やかで、徹底的に抑制・コントロールされているが、演奏の内容自体は、高いテクニックに裏打ちされて、密度が濃く、実に地味深い。抑制・コントロールされた環境の中で「静かな躍動感」を内に秘めたクールな演奏である。よって、静かな演奏が続くが、ちゃんとした再生装置を介して聴けば、最後まで決して飽きない。
収録された曲を眺めてみても、「Oh Bess, Oh Where's My Bess」や「Two Degrees Easy, Three Degrees West」「The Man That Got Away」など、かなり渋い曲を選曲していて、曲名を見ただけでも触手が伸びるくらいだ。この渋いスタンダード曲を、滋味溢れるクールな演奏で弾き紡いでいくのである。「抑制の美」である。なにも、熱気溢れ、ファンキーで溌剌とした演奏だけがジャズでは無い。
ラストの「Variation No.1 On "God Rest Ye Merry, Gentlemen"」では、MJQとJimmy Giuffreが一体となった「抑制の至芸」を聴くことができる。これだけ高度なテクニックに裏打ちされたクールなジャズは、なかなか聴くことが出来ない優れたもの。
ちなみに、このアルバムのタイトルにある"Music Inn"とは、マサチューセッツ州パークシャーの山の中の別荘地のことです。当時、よくジャズ・コンサートが開かれていた場所として有名ですね。
その"Music Inn"の草原で寛ぐMJQとJimmy Giuffreの写真があしらわれたジャケットもなかなか味があって、僕のお気に入りです。ジャケット良し、演奏良し。地味ではあるが、なかなかの内容を誇るMJQの佳作だと思います。
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