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2012年2月の記事

2012年2月29日 (水曜日)

ジャズ・ロックなクルセイダーズ

The Crusaders(クルセイダーズ)は、今でも僕の大のお気に入りである。当初は、ジャズ・クルセイダーズと名乗り、1961年に『フリーダム・サウンド』でデビュー。以来、バンド名やメンバーを変えつつ、40年以上継続する、今や老舗のフュージョン・バンドである。

そんなクルセイダーズが、1974年にリリースしたライブ盤がある。The Crusaders Live at The Roxy、タイトルは『Scratch』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Wayne Henderson (tb), Wilton Felder (ts), Joe Sample (key), Stix Hooper (ds), Larry Carlton (g), Max Bennett (b)。蒼々たるメンバーである。

1974年と言えば、クロスオーバー・ジャズ全盛時代。ファンク色の強いバンドやジャズメンは、時代のトレンドとして、洗練された「ジャズ・ロック」を追求することが多い。

ここでのクルセイダーズもその例に漏れず、洗練された「ジャズ・ロック」を追求する。冒頭のタイトル曲「Scratch」から、スティックス・フーパーのファンクネス溢れるドラムが「ジャズ・ロック」的リズムを供給する。心地良いファンクネス。純ジャズとは明らかに異なる、ロック的なリズム&ビート。思わず身体が揺れる。

そして、このアルバムのハイライトが2曲目の「Eleanor Rigby」。ビートルズの名曲だが、1974年のその時点で、ビートルズのカバーっていかがなものか、と思うが、このカバー演奏のインプロビゼーションの展開を聴くと、この「Eleanor Rigby」は、単なる素材にしか過ぎないのが判る。
 

Crusaders_scratch

 
インプロビゼーション部の展開を聴いていると、別に主題が「Eleanor Rigby」で無くても全く問題無い。「Eleanor Rigby」は、ジャズ・ロックな展開の「単なる切っ掛け」。

しかし、この「Eleanor Rigby」のインプロビゼーション部の展開は凄い。ウィルトン、ウェイン、ジョーの順番でソロを取っていくが、これがまあ「凄い」。バッキングのラリカルとベネットもファンキーで格好良い。特に、ウェインのトロンボーンが限りなくファンキーで良い。

3曲目の「Hard Times」は、クロスオーバー・ジャズの次のトレンド、フュージョン・ジャズの兆しを感じる演奏。ソフト&メロウな雰囲気を醸し出しながら、洗練されたファンクネスを創出していく。雰囲気のあるソフト&メロウな演奏。ジョー・サンプルのフェンダーローズが良い雰囲気だ。続く「So Far Away」、ラストの「Way Back Home」も、どちらかと言えば、ソフト&メロウなファンク・フュージョン的な演奏。 

このライブ盤、前半は、収録された1974年のトレンドである洗練されたジャズ・ロックを追求し、後半は、これからのトレンドであるソフト&メロウなファンク・フュージョンを追求する。ここに、時代のトレンドを追求しつつ、次の時代のトレンドも見据える、常に進歩し前進する、ポジティブなクルセイダーズが、ここに記録されている。

 
 

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2012年2月28日 (火曜日)

このマイルスは「可愛い」

マイルスのアルバムの全てが名盤という訳では無い。特に、1950年代前半のビ・バップ時代の後、ハードバップ時代の初頭の頃のマイルスは、まだまだ駆け出しの発展途上だった。加えて、1953年までは完璧なジャンキーで、麻薬禍から抜け出せず、マイルスのパフォーマンスには「何か重要なものが欠けている」雰囲気があった。

ここに『Blue Haze』(写真左)というアルバムがある。1953年から翌年にかけて残された3つのセッションを収録。そう、プレスティッジ・レーベルお得意のセッションの寄せ集めアルバム化戦略である。順を追うと、1953年5月19日と1954年3月15日の録音、1954年4月3日の録音。

1953年5月19日の録音は「When Lights Are Low」「Tune Up」「Miles Ahead」「Smooch」の4曲。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John Lewis (p), Charles Mingus (p), Percy Heath (b), Max Roach (ds)。「Smooch」では、ベーシストのチャールズ・ミンガスがピアノを弾いている。「Tune Up」はピアノレス・トリオの珍しい編成。

まだ、麻薬禍の真っ只中での録音なので、どの曲の演奏にも、なんだか「暗い翳り」とテクニックを振るいきれない「中途半端さ」が漂っている。ペットの音は、既にしっかりと「マイルスの個性」を確立しているので、ちょっと聴いていて戸惑う。
 
「When Lights Are Low」「Tune Up」は、後の「マラソン・セッション」での決定的名演があるが、それに比べると、似ても似つかぬ、マイルスの美意識は強く感じるが、まだまだ鍛錬が必要な発展途上の演奏である。
 
Blue_haze
  
1954年3月15日の録音は「Four」「Old Devil Moon」「Blue Haze」。パーソネルは、Miles Davis (tp), Horace Silver (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。1954年4月3日の録音は「I'll Remember April」。パーソネルは、Miles Davis (tp), Dave Schildkraut (as), Horace Silver (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。う〜ん、パーソネルの出入りがややこしい。

1954年は既に麻薬禍から抜け出しており、ペットの音には張りがあって「暗い翳り」はもう感じる事は無い。しかし、テクニック的には、 まだまだ駆け出しの発展途上で、後に高速展開でビシッとライブで決める「Four」など、低速の安全運転。「Old Devil Moon」もテクニックはまだまだ。マイルスの個性的なペットの音だけで、とりあえず聴かせる。テクニック的には、麻薬禍真っ只中の1953年の録音の方が優れた感じなので、ジャズの演奏というのは良く判らんなあ(笑)。

この『Blue Haze』のマイルスの調子はイマイチ。但し、ペットの音は既に「マイルスの個性」を確立させているところは「さすが」。しかし、全編を通じて、ここでのマイルスは、どう聴いても、まだまだ駆け出しの発展途上。ジャズ者万民にキッチリと聴かせるには、ちとテクニックが不足している。

でも、このアルバムでのマイルスは「可愛い」。あの強面もマイルスにも、こんなに「可愛い時代」があったんやなあ、と思うと、なんだか可笑しくなる。この『Blue Haze』は完璧にマイルス・マニア向け。でも、マイルス者の方々は、どこかでこのアルバムを絶対に手に入れて聴いて下さい。ここには、若かりし頃の、まだまだ青くて発展途上の「可愛らしい」マイルスが鎮座ましましている。

 
 

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2012年2月27日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・9

当ブログでは、幾つかの特集シリーズがあります。右の「カテゴリー」にあるのですが、今日の「こんなアルバムあったんや」シリーズは、ジャズ者中堅〜ベテランクラスの方々向けかな。ジャズ・フュージョンの異色盤・企画盤・珍盤・迷盤の類をご紹介しています。
 
「こんなアルバムあったんや」シリーズ、今日は第9回目。今日はフュージョン・ジャズの「こんなアルバムあったんや」。

「ヒロシマ(Hiroshima)」というバンドがある。1974年に日系アメリカ人三世のメンバーにより結成されたフュージョン・バンドである。ちなみにメンバーは、Dan Kuramoto (fl,Syakuhachi), June Kuramoto (Koto), Danny Yamamoto (ds), Kimo Cornwell (Key), Dean Cortez (b), Shoji Kameda (Taiko)。

担当する楽器を見ると「んっ〜」と思う。「琴」「太鼓」「尺八」が入っている。そう、「ヒロシマ(Hiroshima)」というバンドは、太鼓や琴、尺八など日本の伝統楽器を用いたフュージョン・バンドである。これって、米国人独特の「日本的感覚」であり、直接的に、太鼓や琴、尺八などを用いて音楽を演奏するだけで「オリエンタル」、若しくは「ジャパニーズ」。

でも、日本人からすると、これは実に「こっ恥ずかしい」仕業であり、出来れば、聴かなかったことにしてしまいたい欲求に駆られる。聴いてしまったら、とにかく暫く「据わりが悪い」。とにかく、太鼓や琴、尺八など日本の伝統楽器を用いてフュージョン・ジャズをやるなんて、これって「キワモノ」扱いされて当然、という雰囲気になる。

そんな彼らのデビューアルバムが『Hiroshima』(写真左)。ジャケット・デザインを見るだけで、「キワモノ」の雰囲気がプンプンする(笑)。1979年のリリース。1979年と言えば、フュージョン・ジャズの流行が下降線になりつつあった「フュージョン末期」の頃。

「フュージョン末期」になると、この時期にデビューしてくるフュージョン・バンドは、ジャズから少し離れたところにあって、当時流行だったソフト&メロウな要素をバッチリ反映して、なぜか必ずボーカルものが入っているものが大多数。どう考えたって、もう、フュージョン・ジャズとは呼べんやろう、という、R&B、ポップス、ワールドミュージック、そして、最後にちょろっとジャズ、といった電気AOR的なものばかり。

Hiroshima

この『Hiroshima』も例外では無い。フュージョン・ジャズ的な演奏の中に、R&B、ポップス、AORをごった煮にして、ワールドミュージック的な要素に「日本の伝統楽器」を活用するという強引な仕掛け。演奏能力は決して高くないし、ボーカル曲は甘ったるい。アルバム全体の音は明らかに「フュージョン末期」を代表する音作りである。

だが、アルバム全体を聴き直して見ると、楽曲それぞれの出来は「まずまず」で、ジューン・クラモトの琴のセンスは「なかなか」のもの。エレギの代わりの「琴」なのだが、これがまずまず成功していることは確か。ぎりぎり「キワモノ」を回避している。とりあえず、アルバム全編聴き通せるのだから、この『Hiroshima』というアルバム、フュージョン末期の佳作ではある。

ヒロシマの音楽は、何かを主張しようというものではない。ヒロシマの音楽は、米国ならではの「お気楽なキワモノ風」の作りではあるが、演奏全体の出来はまずまずで、音の雰囲気については、古さは否めませんが、忘れた頃に「ちょろっと」聴くには、なかなか面白い盤ではある。

太鼓や琴、尺八など日本の伝統楽器を用いたフュージョン・バンドということで、1979年の頃、大学生でジャズ者初心者駆け出しの頃であった僕は、このデビューアルバム『Hiroshima』については「どん引き」(笑)。他人がかける『Hiroshima』は仕方無しに最後まで聴くが、自分自らリクエストすることは無かったし、自分でこの盤を手にすることは無かったなあ。友人に無理矢理買わせたのを覚えている(笑)。

この「ヒロシマ(Hiroshima)」というバンド、現在も活動中で、時代と共に、フュージョン・ジャズから離れてきているが、その人気は衰えることがなく、むしろ高まっている、とのこと。やっぱり、米国って、米国人独特の「日本的感覚」があって、直接的に、太鼓や琴、尺八などを用いて音楽を演奏するだけで「オリエンタル」、若しくは「ジャパニーズ」になって、遂には「ファンタスティック」となるのかなあ。

でも、現在でも健在ってところが、1979年、デビューアルバムを、なんやかんや言いながら聴いていた僕達にとっては、お互い「同志」の様な、なんだか「心強いもの」を感じますね〜(笑)。

 
 

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2012年2月26日 (日曜日)

サンタナのギターロック・カバー集

土日は、70年代ロック・Jポップの日。今日は「Santana(サンタナ)」。この「サンタナ」の名前を聞いて、「おおっ」と小さな歓声を上げる方って、もう今では、少なくなっているのでは無いかと思うのですが、いかがでしょうか。

「サンタナ」は、名ギタリストのカルロス・サンタナ(Carlos Santana)を中心にしたグループのこと。ラテン・フレイバーを前面に押し出したラテン・ロック的な楽曲と、カルロス・サンタナの「スピリチュアル」な面を押し出したジャズ・ロック的な楽曲が特徴のバンドです。特に、1970年代に大活躍したバンドですが、現在でもメンバーをチェンジしつつ、元気に活動中です。

そんなサンタナが、突如、2010年にギターロック・カバー集をリリース。ロックギターの名曲群をさまざまなヴォーカリストを招いてカヴァーするというスタイルのカバー・アルバムで、そのタイトルは『Guitar Heaven: The Greatest Guitar Classics Of All Time』(写真左)。

収録されたそれぞれの曲は、カバーっていうよりはコピーに近い。元の楽曲を比較的忠実に演奏しつつ、そこはかとなく、オリジナリティを加えてサンタナ風味に仕上げました、というような感じのアレンジで統一されている。

このサンタナ風味に仕上げました、というところが「ミソ」で、かなりの有名曲ばかりなのだが、原曲に負けずに、原曲を活かしつつ、サンタナの音に仕上げているところが、他の平凡な「カバー・アルバム」と一線を画するところだろう。カバー・アルバムなので、何度も繰り返し聴く類のアルバムでは無いけど、サンタナのエッセンスはしっかり伝わってくる好盤だと思います。

収録された曲は以下の通り。ロックの名曲揃いで、どの曲もエレギがメインの曲ばかりで、いわゆる「ギターヒーロー」もの。選ばれた曲のオリジナル・バンドは当然ハードロック系なんだkが、ブリティッシュ系が中心というのは面白い。タイトルを見渡すだけで、なんだか「クラクラ」しそうなほど、きら星の如くロック名曲がズラリと並ぶ。壮観である。
 
Santana_guiter_heaven  
 
・Whole Lotta Love (LED ZEPPELIN)
・Can’t You Hear Me Knockin’(R.STONES)
・Dance The Night Away(VAN HALEN)
・While My Guitar Gently Weeps(THE BEATLES)
・Sunshine of Your Love(CREAM)
・Bang A Gong(Get It On)(T-REX)
・Photograph(DEF LEPPARD)
・Smoke On The Water(DEEP PURPLE)
・Riders On The Storm(THE DOORS)
・Fortunate Son(C.C.R.)
・I Ain’t Superstitious(JEFF BECK)
・Back In Black(AC/DC)
・Little Wing(JIMI HENDRIX)

ボーカリストも、なかなかに考えた選定で、SoundgardenのChris Cornell、Stone Temple PilotsのScott Weiland、 Linkin ParkのChester Bennington、 TrainのPatrick Monahan、Jonny Langら米系シンガーを中心に、個性的なボーカリストが適材適所で配されている。
 
この他にも、サンタナ作品ではすっかりお馴染みのMatchbox TwentyのRob Thomasや御大Joe Cockerまでもが参加亜している。このボーカリスト達の個性を楽しみのも、このカバー・アルバムの楽しみである。
 
そして、ユニークなコラボが、チェリストのヨーヨー・マとインディア・アリーを招いた、ビートルズの「While My Guitar Gently Weeps」。あの〜、ヨーヨー・マって、世界的なチェリストですよね。その世界的なチェリストが、サンタナとコラボって、ビートルズのWhile My Guitar Gently Weeps」をやるなんて、時代も変わったもんですわ(笑)。

このカバー・アルバムって「何でまた今更?」という唐突感は否めませんが、きっと、あんまり深い意味も無く「やりたかった」んでしょうね(笑)。やりたいことやれて良かった〜、なんて雰囲気が伝わってくる、なかなかの内容です。70年代ロック者の方々は、一度聴いてみると良いんではないでしょうか。結構、じんわりと「はまります」。

 
 

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2012年2月25日 (土曜日)

ロッドのボーカル最高峰アルバム

土日は、70年代ロック・Jポップの日。今日は、ロッド・スチュワート。ロッドのアルバム聴き直しを久し振りに再開する。

今日のアルバムは、Rod Stewart『Foot Loose & Fancy Free』(写真)。邦題は『明日へのキックオフ』。リアルタイムで、このアルバムを聴いていた僕にとっては、この邦題の方がピンとくる。

このアルバムは、1977年の作品で、全英3位・全米2位にランクイン。惜しくも、全英全米共に一位を逃している。特に、ソロ3作目の『Every Picture Tells A Story』から始まり、『Never A Dull Moment』『Smiler』『Atlantic Crossing』『A Night on the Town』と5作連続で獲得してきた全英一位の座を逃している。

しかし、このソロ8枚目の『Foot Loose & Fancy Free』はロッドのボーカリストとしての最高傑作である。ソロ・デビューアルバム『An Old Raincoat Won't Ever Let You Down』から始まり、米国に渡る直前の『Smiler』辺りから積み上げてきた、ロッドの大好きなR&B、ロックンロール、ゴスペル、ファンク、そして、カントリー&ウエスタンなどを趣味良くブレンドした、米国ルーツ・ミュージックの要素を反映した音作りが完成の域に達している。

収録されているどの曲も非常に出来が良く、聴き応えがある。当然、ロッドのボーカルも絶好調。特に、冒頭の「Hot Legs」のむっちゃ格好良いロックンロール、続いて2曲目の「You're Insane」の渋くてパンチの効いたR&B。そして、絶品のバラード曲、3曲目の「You're In My Heart (The Final Acclaim)」。この冒頭の3曲だけでも、このアルバムの出来の良さが良く判る。
 
Foot_loose_fancy_free
 
加えて、優れたアレンジが、このアルバムの魅力を更に高めている。その優れたアレンジの一例が『You Keep Me Hangin' On』。このシュープリームスがオリジナルのコッテコテのR&B曲を、メリハリの効いた、ストレートで劇的な展開のロック曲に仕立て直している。ここまで優れたアレンジを施されると、このシュープリームスの名曲が、ロッドのオリジナル曲の様に響く。

そして、極めつきの名曲がラストを飾る「I Was Only Joking」。邦題は「ただのジョークさ」。この曲は歌詞良し、曲良し、アレンジ良し、演奏良し。全てが良い、奇跡の様な楽曲である。アコギのソロからストロークへ展開する印象的な前奏からして、もう「これは凄い曲に違いない」という気分にさせてくれる。そして、あのロッドの「しわがれ声」で訥々と歌い出すところなんぞはゾクゾクする。

曲の中間部分、リズムが弾け、テンポが上がって、エレギの伸びのあるソロが入ってくる所なんぞは「快感」である。聴く度に、今でもゾクッとする。なんといっても、エレギの伸びのある音が素晴らしく官能的で刺激的。この昼間部の長い間奏がハイライト。この演奏は素晴らしい。そして、静寂に立ち返り、訥々としたロッドのしわがれ声が、悲しい恋の終わりを呟くように歌い上げる。涙無くしては聴けない絶品である。

バンドとしての一体感も抜群。全編に渡って、カーマイン・アピスのドラミングがバンド全体の演奏を引き締めています。いわゆる「ロッド・スチュワート・バンド」の演奏が光ります。ちなみにパーソネルは、ビリー・ピーク(g)、ジム・クリーガン(g)、ゲイリー・グレインジャー(g)、フィリップ・チェン(b)、ジョン・ジャーヴィス(key)、カーマイン・アピス(ds) の6人。トリプル・リード・ギターの編成が際立ちます。

このソロ8枚目の『Foot Loose & Fancy Free』はロッドのボーカリストとしての最高傑作。ロッドのロック・ボーカリストとしての最高の姿がこのアルバムに記録されていると思います。ポップス・ファンの方々は一度、聴いてみて欲しい。70年代ロック者の方々には「マストアイテム」です。
 
 
 

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2012年2月24日 (金曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・26

当ブログでは、幾つかの特集シリーズがあります。右の「カテゴリー」にあるのですが、今日は「ピアノ・トリオの代表的名盤」です。「ピアノ・トリオの代表的名盤」は、ジャズ初心者の方々でも十分楽しめるアルバムをご紹介しています。
 
「ピアノ・トリオの代表的名盤」の第26回目は、Red Garland(レッド・ガーランド)の登場です。ジャズ・ピアノの入門書には、必ずと言っていいほど出てくる、レッド・ガーランドの最有名盤。そのタイトルは『Groovy』(写真)。タイトルも良し、ジャケット・デザインも、見る度に「ジャズ」を感じるジャケットでとても良い。

ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。1956年12月、1957年5月と8月の録音。録音日が3つに別れているのは、プレスティッジ・レーベルならではのいい加減さ。ジャム・セッションよろしく撮りためた録音を、アルバムの流れや全体の雰囲気を鑑みながら、継ぎ接ぎにしてリリースする「お得意技」である(笑)。

冒頭の「C Jam Blues」を聴いてみると、ガーランドのジャズ・ピアノの特徴が良くわかる。無駄な手癖を省いた、出来るだけ音数を少なくした、シンプルな右手。そのシンプルな右手を引き立たせるかの如く、タイミング良く、合いの手を入れる様に絶妙なブロックコードを奏でる左手。
 
Groovy  
 
カクテル・ピアノと揶揄する人もいるが、決して、ガーランドのピアノはカクテル・ピアノでは無い。左手のブロックコードに、しっかりとしたビートが効いていて、リズム感のあるオフ・ビートが、右手のシングル・トーンにジャズ独特の粘りを与える。どのジャンルの音楽にでも言えることだが「分かり易い」ということは、聴いてもらう方からすると非常に大切な要素であり、テクニック的に非常に難しいことだ、ということを忘れてはならない。

この「分かり易い」ガーランドのピアノは、ジャズ初心者にとって、実に取っつき易いジャズ・ピアノのひとつだと言えるだろう。

さて、ガーランドのピアノの最大の特徴である、その「分かり易さ」を最大限活かした演奏が、2曲目の「Gone Again」と、3曲目「Will You Still Be Mine?」だ。シンプルな右手による印象的な、唄うように奏でられる旋律、ジャズのビートを押しだしながら、カクテル・ピアノ的解釈を戒める左手のブロックコード。印象的な佳曲ほど、ガーランドのピアノは良く似合う。

ピアノ・トリオに大切な要素は、相棒のベース、ドラムのサポートであるが、このアルバムでの、ベースのポール・チェンバース、ドラムのアート・テイラーは申し分ない。全曲に渡って、アート・テイラーのドラムは、柔軟、堅実、かつドラマチックなドラムを繰り広げ、ベースのチェンバースのウォーキング・ベースはガーランドの左手のビートを強烈にサポートする。あまり評判の良くないチェンバースのボーイングも、このアルバムでは控えめで好ましい。

プレスティッジに残されたレッド・ガーランドの素晴らしい一枚。ハードバップ時代のピアノ・トリオの代表的名盤の一枚です。
 
 
 

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2012年2月23日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・8

当ブログでは、幾つかの特集シリーズがあります。右の「カテゴリー」にあるのですが、今日の「こんなアルバムあったんや」シリーズは、ジャズ者中堅〜ベテランクラスの方々向けかな。ジャズ・フュージョンの異色盤・企画盤・珍盤・迷盤の類をご紹介しています。

さて、ボブ・ジェームス(Bob James)といえば、今やフュージョン界の大御所であるが、デビュー当時は、リリカルであるが、フリーに寄ったアブストラクトな演奏が特長の新進気鋭のピアニストであった。

が、1970年代に入ると、判りやすいアレンジと底にしっかりとしたジャズの雰囲気をキープした、フュージョン・オーケストラの人気者として君臨、次々とヒット作を量産。「ミスターNY」なんて呼ばれたりして、フュージョン・ジャズの第一人者にのし上がった。

そんなボブが何を思ったのか、1995年、本格的なピアノ・トリオ・アルバムを発表した。そのアルバムが今回ご紹介する『Straight Up』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Bob James (p), Brian Blade (ds), Christian McBride (b)。1995年12月の録音。

まず、いきなり目につくのは、1曲目の「Nightcrawler」。この曲は、彼の5枚目のフュージョンアルバム『Heads』からの彼のオリジナル曲。なかなかにブルージーで落ち着いた、ちょっと小粋な作品だったのだが、ピアノ・トリオの演奏としても、原曲の雰囲気をしっかり保持していて秀逸。

ボブのピアノは出だしから、ちょっとアブストラクトな香りをしっかり漂わせる。ピアノの弦を直接、指で弾く前衛的な前奏から、「Nightcrawler」の美しい主題を少しずつ転調させながら、不協和音を少し隠し味的に織り交ぜながら、フュージョンの名曲ならではの美しい旋律をピアノで奏でながらも「不思議な緊張感」が漲る1曲目。
 
Bob_james_straightup
 
続いて2曲目の「Ambrosia」は、実にリリカルな小品。途中、クラシック的な旋律も見られて、なかなかに美しい。良い感じだ。デビッド・ベノア等、フュージョン・ジャズ系、若しくは、スムース・ジャズ系のキャッチャーでリリカルで印象的な響きを持ったピアノ。

美しいといえば、3曲目の「James」にとどめを刺す。この曲、パット・メセニーの名曲なのだが、もともとパットの演奏も美しいが、このボブのピアノの演奏は、それにも増してとりわけ美しくリリカルだ。溜息が出そうな、その美しい旋律とピアノ・タッチはこのアルバムの最大のハイライト。この1曲だけでもこのアルバムを手に入れても損はないと僕は思う。

しかしながら、どうして、美しくてリリカルなだけがこのアルバムの表情ではない。次の4曲目『The Jody Grind』は、ホレス・シルバー作で、とにかくファンキーでエネルギッシュ。他の曲も、とにかく、リリカルで、ちょっとアブストラクトで、それが適度な緊張感となっていて、とにかく優れた内容であることは間違いない。

アルバム全体を見渡すと、いろいろなスタイルが「てんこ盛り」で、ちょっと「とっちらかった」雰囲気があるのが玉に瑕ですが、まあ、ボブのアコピは、アブストラクトなデビュー当時からするとガラッと変わって、フュージョン・ジャズで得た成果を、今回、ちょっと、ピアノ・トリオで表現してみた、って感じでしょう。内容的には良いです。ピアノ・トリオの佳作でしょう。

といって、ボブ・ジェームスが以降、アコピのトリオで勝負し続けられるかと言えば、そこまででは無い。「やはり野に置けレンゲ草」という言葉があるが、「やはりフュージョンに置けボブ・ジェームス」といったところか。やはり、ボブ・ジェームスの本質はフュージョン・ジャズにあり、エレピにあり、プロデュース&アレンジの才能にある。
 
 
 

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2012年2月22日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・35

当ブログでは、幾つかの特集シリーズがあります。右の「カテゴリー」にあるのですが、「こんなアルバムあったんや」や「ジャズ喫茶で流したい」や「ピアノ・トリオの代表的名盤」、「ビッグバンド」等がそうです。

右の「カテゴリー」から選んでクリックすれば、そのカテゴリーに該当する記事が検索されて表示されます。特に「ジャズ喫茶で流したい」や「ピアノ・トリオの代表的名盤」は、ジャズ初心者の方々でも十分楽しめるアルバムをご紹介していますので、楽しんで頂ければと思います。

今日は、その「ジャズ喫茶で流したい」シリーズの第35回目。小粋なピアノ・トリオ盤をピックアップしました。

さて、デビッド・マシューズといえば、フュージョン界で、その作品数たるや、相当数にのぼるフュージョン界指折りの売れっ子コンポーザー&アレンジャー。

1970年代のフュージョン全盛時には、相当数の企画物を統率、その素晴らしい内容と成果から、以降、その名を不動のものとしている。そして、1980年代に入ると、ビッグバンドの総帥として、数々のヒット・アルバムを輩出、純ジャズの世界では「マンハッタン・ジャズ・クインテット」というバップ・スタイルのコンボを指揮し、数々のヒット作を制作してきた。

そんなマシューズが、活動25周年目、ピアノ・トリオ・スタイルでのアルバム録音を行った。その記録がこの『Billy Boy』(写真左)。ちなみにパーソネルは、David Matthews (p), Michael Moore (b), Dave Weckl (ds)。1986年7月の録音。
 

Matthews_billy_boy

 
収録された曲を見ると、また、日本のレコード会社の好きな企画物か、と眉を曇らせる方もいらっしゃるかと思う。正に、耳にタコな、ジャズ・スタンダードの名曲ばかりがずらりと並ぶ。が、意外や意外、その内容はピアノ・トリオとしてなかなかのものである。

実は、彼は右手が不自由で、その右手の人差指と左手でピアノを弾きます。でも、そういうことはまったく気がつかないほど、フレーズの組み立てとコンピング(コードのバッキングのこと)の入れ方が上手い。上手く間を活かしたシングルトーンと合わせて、完全にマシューズのピアノの個性として見事に成立しています。

そんなマシューズのピアノが、アタックの強いシングル・トーンと絶妙の間で入る。そして、アタックの強いブロックコード。全体の印象は「実にシンプル」。アタックの強いシングルトーンが実に印象的。それでいて「間」の取り方が絶妙。それぞれの演奏に「ため」が出来て、実に味わい深く、スペースを巧く使ったピアノ・トリオとでも表現できる名演を繰り広げる。

また、「耳にタコな、ジャズ・スタンダードの名曲ばかりがずらりと並ぶ」と書いたが、そこは、売れっ子アレンジャーのマシューズのこと、ひとヒネリもふたヒネリも入れた、マシューズならではの、新鮮で耳あたりの良いアレンジで、決して聴き手を飽きさせないところはさすが。アルバムに収録された、どの曲をとってみても、ピアノ・トリオ演奏の愉しさを満喫できる。

サイドメンのベースのマイケル・ムーア、ドラムスのデイブ・ウェックルも好演しており、マシューズの特徴的なピアノを、邪魔にならず、かといって、目立たないと言うわけではなく、主張するところはしっかりする、というような、彼らの優れたサポートがよりこのアルバムの演奏を引き立たせている。

ジャケットもなかなか秀逸で、ピアノ・トリオの入門盤として、大推薦のアルバムである。

 
 

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2012年2月21日 (火曜日)

スウィング・ジャズに走る時

切れ味の良いジャズ、先取性のあるジャズ、ジャズの第一線の演奏を聴きまくって、ちょっと耳が疲れたりする。疲れた時には、ちょっと目先、いや耳先を変えて、日頃、あまり聴かないジャンルの音楽を聴くのが良い。

ジャズを離れる時は、70年代ロック、70年代Jポップに走るんだが、ジャズのままでいる時には、最近、よく「スウィング・ジャズ」に走ったりする。「スウィング・ジャズ」とは、1930年代から1940年代初めにかけて大流行したジャズの形態の一つ。スウィングのリズムを含んだ軽快なダンスミュージック的なジャズで、鑑賞用のジャズとしては、最初の形態だろう。

その後のビ・バップやハード・バップやモード・ジャズとは比べものにならないほど、アレンジも和音もシンプルで、コード進行だってシンプル、グループサウンズの展開だって、至って「シンプル」。「スウィング・ジャズ」には、独特のリズム感と独特のアレンジの傾向があって、聴いていると直ぐに「スウィング・ジャズ」だと判る特徴的なもの。

この独特のリズム感と独特のアレンジの傾向が癖になり、シンプルなアレンジや和音、コード進行が心地良かったりする。まあ、しばらく聴き続けると、独特のリズム感と独特のアレンジの傾向が「金太郎飴」で耳につくようになり、シンプルなアレンジや和音、コード進行に飽きてしまったりするんやけどね・・・(笑)。

とにかく、ジャズの第一線の演奏を聴きまくって、ちょっと耳が疲れたりした時には、この「スウィング・ジャズ」的雰囲気の演奏が良い。このところ良く聴くアルバムが『Art Tatum/Benny Carter/Louis Bellson』(写真左)。ジャズピアノの神様、Art Tatum(写真右)のリーダー作である。
 
Tatum_carter_bellson
  
Benny Carter (as), Art Tatum (p), Louis Bellson (ds)の変則トリオの演奏。なんとベースがいない。ジャズ・ピアノの神様、アート・テイタムがその左手で、ベースラインも合わせて弾いていたりする。

典型的な「スウィング・ジャズ」的雰囲気の演奏なんだが、録音時期は1954年6月。時代はハード・バップ時代である。そんなハード・バップな時代に、カーター、テイタム、ベルソンという、スウィング・ジャズの時代から第一線で活躍してきたベテラン・ジャズメンが演奏する「スウィング・ジャズ」。

そこはかとなく、ハード・バップの影響も見え隠れして、本家本元の「スウィング・ジャズ」よりもモダンで洒落ている。スウィング・ジャズ独特のリズム感と独特のアレンジの傾向がベースとなった、スウィング・ジャズ独特の音の響きが前面に出てはいるが、不思議と古さは感じない。

カーターのアルトが吹きまくり、テイタムのピアノが弾きまくる。特に、テイタムのピアノは凄いテクニック。さすがは、ジャズ・ピアノの神様である。あまりに弾きまくっているので、「うるさい」という向きもあるが、僕はそうは思わない。これだけのテクニックで弾きまくることの出来るピアニストはそうはいない。クラシック音楽のピアニストの世界と肩を並べるだけのテイタムのテクニックは、やはり傾聴に値する。

徹頭徹尾、モダンで洒落た「スウィング・ジャズ」って感じで、良い雰囲気のアルバムです。収録された曲もジャジーでキャッチャーで、実に聴きやすいものばかりです。ふふん、と鼻歌まじりに聴き進めて、気が付くと2〜3回と繰り返し聴いていたりするから「あら不思議」(笑)。

疲れた時には、ちょっと目先、いや耳先を変えて、日頃、あまり聴かないジャンルの音楽を聴くのが良い。最近の僕のお勧めは、モダンで洒落た「スウィング・ジャズ」。アート・テイタムやルイ・アームストロング、ベニー・グッドマンがお気に入りになりつつあります。
 
 
 

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2012年2月20日 (月曜日)

ロイドのサイケデリック・ジャズ

1960年代後半、フラワームーブメントの煽りで、サイケデリック・ジャズなるものが流行った。その中核は、Charles Lloyd(チャールズ・ロイド)。バックに、あのKeith Jarrett(キース・ジャレット) や Jack DeJohnette(ジャック・デジョネット)を従えて、カルテットとして活動していました。

サイケデリック・ジャズとは言っても、サイケデリック・ロックの様な奇天烈なものでは無く、アーシーで浮遊感のある、ジャズ・ロックとフリー・ジャズのミックスと言った感じの演奏が特徴です。フラワームーブメントの中で受けに受けたジャズなので、サイケデリック・ジャズと呼ばれるのでしょうか。

そのロイドが、キースやデジョネットを従えて活動していた期間は約2年半程度の短期間。そんな短期間の割に、意外と多作で、Atlanticレーベルには8枚のアルバムが残されているようです。当時、このロイドのカルテットは凄い人気だったようですね。

さて、そんなCharles Lloyd Quartetの『Charles Lloyd In Europe』(写真左)をご紹介しましょう。パーソネルは、Charles Lloyd (ts, ss, fl), Keith Jarrett (p), Cecil McBee (b), Jack DeJohnette (ds)。1966年10月29日、ノルウェーの首都オスロの"Aulaen Hall"でのライブ録音とのこと。しかし、このライブ盤、ほんまにライブ録音なんかなあ。観客の歓声や拍手がなんか「わざとらしい」ところが気になる(笑)。

このチャールズ・ロイドのカルテットは、1960年代後半、突如として現れた、なかなか面白い内容のカルテットだった。当時の流行だった、テナーの神様コルトレーンとハービー・ハンコックらの新主流派のモード・ジャズがコラボした様な音。当時、ジャズの世界で「先端」と言われたトレンディーな音をいち早くブレンドした演奏。
 
バックの3人を従えて、リーダーのロイドがやりたいことをやっているという感じでは無くて、キースはピアノを好き勝手に弾き、デジョネットは叩きまくり、 マクビーは我が道を行く、といった風。バックのキース、デジョネット、マクビーのピアノ・トリオのやりたい通りに、リーダーのロイドが乗っかったような演奏。
 
Charles_lloyd_in_europe
   
フロントのロイドが吹かずに、このキース、デジョネット、マクビーのピアノ・トリオの演奏だけになった部分は、それはそれは、素晴らしいピアノ・トリオの演奏になる。
  
印象的なフレーズ満載の、浮遊感溢れる、美しいモード・ジャズ。そして、モード・ジャズがどんどん発展していって、遂にはフリーに突入する瞬間。これまた美しい。ピアノ、ドラム、ベースが一体となった硬軟自在、変幻自在な演奏は素晴らしい。

ロイドのテナーは、コルトレーンの影響を受けた、というか、コルトレーンそっくり。コルトレーンの演奏の要素やテクニックを全て取り込んで、耳当たりよく、聴き易くした感じとでも言ったら良いでしょうか。とって、コルトレーンほどの深みとテクニックはありません。でも、とにかく聴き易い。

ハードバップ時代の歌うようなフレーズや十八番のシーツ・オブ・サウンド、フリーに走った時の「スピリチュアルな咆哮」など、コルトレーンそっくりに、テクニックのレベルを落として聴き易くしたような、意外と計算された演奏。

聴き易いと言えば、確かに聴き易い。そんな聴き易いコルトレーンの様なロイドのテナーと、まだまだ駆け出しでやっつけ感はあるが、キース、デジョネット、マクビーの、新しい響きと展開を湛えたピアノ・トリオの組合せ。

当時のサイケデリック・ジャズなるものを感じるのに、格好なライブ盤だと思います。でも、ジャズ演奏としての「拡がり」と「深み」に欠けるところがあり、何度か聴くと演奏の展開を覚えてしまい、先が読めるようになってしまって「聴く楽しみ」が薄れてしまうのが「玉に瑕」です。

このロイドのサイケデリック・ジャズの一連のアルバムは、忘れた頃に時たま聴き直す、という感じの聴き方が、飽きが来ないという意味で一番だと思います。

 
 

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2012年2月19日 (日曜日)

お次は「かぐや姫ライブ」でこざる

南こうせつとかぐや姫の傑作ライブ盤、というか、日本のフォーク・ミュージックのライブ盤の中でも、秀逸な内容を誇るライブ盤である『かぐや姫ライブ』(写真左)。

かぐや姫が1975年4月、東京神田共立講堂で行われた解散コンサートを最後に解散する半年前、人気絶頂期であった1974年9月15日のリリース。1974年7月、京都会館、及び大阪厚生年金会館でのライブ録音となっている。「曲良し、演奏良し、構成良し」の揃いも揃った三拍子。

改めて、今の耳で聴いても、その圧倒的な演奏力には度肝を抜かれる。アコギ2〜3本+アコベが基本構成のライブなので、どうしても音が薄くなるんだろうな、なんて思ってしまうんだが、どうして、この充実度の高さはなんなんだ・・・。ボーカルの確かさ、そして、コーラスアレンジの良さ、加えて、アコースティック中心ではあるが、楽器の名手達のテクニックの素晴らしさが、この充実度の高さを実現している。とにかく上手い。惚れ惚れする。

さて、このライブ盤、収録曲それぞれの内容が優れている。収録された曲の順番に、一言ずつ僕の印象をまとめてみた。

まずは、オープニング、1曲目「うちのお父さん」。当時、かぐや姫のライブのオープニングの定番。のどかな田舎の風景が目の前に浮かぶような、ホンワカした詩とリズミカルな曲。結構、盛り上がります。南こうせつさんが「僕らしい曲」とこの曲を挙げていましたが、確かにそう思います。日本の牧歌的雰囲気が強く漂うフォークロックの名曲でしょう。

2曲目の「僕の胸でおやすみ」は、曲自体はかなりシンプルな構成で、ちょっと地味なんですが、歌詞の内容を含めて、円やかな優しさが漂う曲で、僕は結構気に入っています。アコギのストローク部分のアレンジが秀逸で、実際に、自分で弾いてみると、その秀逸さを再認識する。

3曲目は「ペテン師」。正やんのフォークロックの傑作です。ハードボイルドなアレンジで、本当に格好良い。当時、アコギ2〜3本+アコベが基本構成に、電気楽器を2〜3つ追加して、これだけ分厚い演奏が出来るのか〜、と心から感心したのを覚えています。
 
Kaguyahime_live
  
4曲目の「加茂の流れに」は、ギター2本のデュオで大変映える曲で、今でも大好きです。シンプルな構成の歌詞、アレンジなんですが、ここまで「京都」と「悲恋」の雰囲気を出せるなんて、今でも感心してしまいます。ここまで、動と静、動と静という順番の曲の流れはメリハリが効いていて、とても良い感じです。

5曲目のパンダさんの作なるフォークロックの名曲「君がよければ」から、6曲目のトロピカルでリズミカルな「カリブの花」、そして、LPで言えば、A面のラスト、7曲目の「22才の別れ」の怒濤の流れは圧倒的。特に、7曲目の「22才の別れ」については、6弦アコギと12弦アコギの2本の伴奏が美しい。これほど、アコギが映える曲も、なかなか無い。

8曲目、LP言えば、B面の1曲目。大名曲の「妹」。伴奏無しにいきなり「いもうとよ〜」とボーカルから入るところが、実に格好良い。スタジオ録音の方は、ストリングスが入ったりしていて結構大がかりなアレンジでしたが、このライブ盤でのアレンジは、これまたアコギが素晴らしく映えるアレンジです。アコースティックギターが好きな方は是非チャレンジしてみて下さい。決まったら「快感」です。

9曲目の「海」は、語りの中の流れでのさり気ない演奏。10曲目の「星降る夜」は、かぐや姫お得意のスリーフィンガーのメジャー調の軽妙な曲。11曲目の「置手紙」は、これも、かぐや姫お得意のスリーフィンガーのこちらはマイナー調の軽妙な曲。この「星降る夜」と「置手紙」のメジャー調とマイナー調の対比がとても美しい。

12曲目の「眼をとじて」は、個人的な思い入れの強い曲で、今での大好きな曲です。スタジオ録音のアレンジも情緒溢れるもので、素晴らしい内容でしたが、このライブ・バージョンのアレンジも素晴らしい。高校時代の片思いの彼女の雰囲気にピッタリあっているという「個人的な思い入れ」を込めて、良くコピーしましたね〜(笑)。コード進行もシンプルで、詩もなかなか良くできており、今でも好きな曲です。

ラス前、13曲目は「あの人の手紙」。かぐや姫として唯一の反戦歌。印象的なハイテンポのストロークで、アコギの格好良さが、ビンビンに伝わってきます。これ、コピーして、ラストの雄叫び合わせて、アコギのストロークがバシッと決まれば、本当に「快感」です。

そして、ラストは「神田川」。歌詞の内容が、過剰にウエットで暗く、当時から曲自体はあまり好きではありませんが、ギター2本で渋く決める、このライブ盤のアレンジには、強く心を動かされます。このアレンジは良い。「神田川」が生まれ変わったように、シンプルなラブソングとして響きます。

このライブ盤、Jポップにおける「フォーク・ソング」と呼ばれるジャンルでの名盤として、絶対のお奨めです。特に、このライブ盤の楽曲のシンプルさとアコギ中心のアレンジの素晴らしさを、今の若い世代にも聴いてもらいたいですね。

 
 

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2012年2月18日 (土曜日)

まずは『かぐや姫フォーエバー』

「YOMIURI ONLINE」で、南こうせつさんのインタビュー記事が連載されている。毎週火・金曜日に更新されていて、直近、2月17日で11回を重ねている。かぐや姫時代の頃の話やソロの初期の時代の話はなかなかに興味深く、毎回、楽しく拝見させていただいている。

この南こうせつさんのインタビュー記事を読んでいて、無性に「南こうせつとかぐや姫」を聴きたくなってきた。南こうせつとかぐや姫とくれば、まずは『かぐや姫フォーエバー』(写真)だろう。

1975年4月、東京神田共立講堂で行われた解散コンサートを最後に解散する直前、1975年3月にリリースされた2枚組ベストアルバムで、オリコンLPチャートのトップ100に186週ランクインを記録している。当時としては、LP2枚組というボリュームも勘案すると、破格の「モンスターアルバム」であった。僕と同世代の方々で、このアルバムを持っている、もしくは、聴いたことがある人って結構いるんじゃないかな。

かぐや姫といえば、この2枚組ベストにとどめをさすでしょう。かぐや姫の場合、『三階建ての詩』以前のアルバムは、たまに「えっ」と思うような「迷曲」が入っており、なかなか、推薦盤としてのアルバムの特定ができません。それを考えると、このベストアルバムは、それぞれのオリジナルアルバムからの「良い曲」の選りすぐりで、かぐや姫を聴きたいとする「かぐや姫ビギナー」には、この「フォーエバー」と「かぐや姫ライブ」の2枚を聴いて頂ければ、かぐや姫の本質を掴んで頂けるに十分だと感じているくらいです。

じっくり収録曲を見渡してみると、それぞれの曲名が実にシンプル。今は英語の曲名が多く、日本語の題名も長い。それに比べて、かぐや姫の曲名のシンプルなこと。シンプルが故に、今でも曲名を見ただけで、その曲のメロディーと歌詞が自然と口をついて出てきます。シンプルな曲名を見ただけで、何を歌っているのかが「連想」できるんですね。このシンプルさが、かぐや姫の身上でしょう。

しかも「君がよければ」「ペテン師」「眼をとじて」「今はちがう季節」「アビーロードの街」などのフォーク・ロック系の楽曲の音楽性の高さ、「この秋に」「あてもないけど」「けれど生きている」「22才の別れ」「妹」などのアレンジの素晴らしさが際立っていて、今の耳で聴いても古さを感じません。
 
Kaguyahime_forever
  
とにかく楽曲の内容とアレンジが良い。聴いているとついついコピーしたくなるんですよね。高校〜大学時代、この「フォーエバー」と「かぐや姫ライブ」の主だった曲はほとんどコピーしていました。完璧にコピーできると、素人なりに「快感」なんですよね。それだけ、このかぐや姫の楽曲の内容と演奏が確かだったということでしょう。

さて、愛着のある曲たちの中で、僕の大好きな曲を幾つか、ご紹介しましょう。

まずは、名曲「なごり雪」。この曲はイルカがヒットさせましたが、僕はイルカの「なごり雪」は、当時からあんまり好きでは無いんです。翳りがあって必要以上にウェットで、なんだか主人公の男性が「女々しい」(笑)。それに比べて、正やんの「なごり雪」は、爽やかであっけらかんとしていて、そこはかとない清々しさと仄かな明るさを伴っていて、主人公の男が「実に潔い」。「なごり雪」については、僕にとっては、このかぐや姫のバージョンが「絶対」ですね〜。

次に「眼をとじて」。シンプルな曲なのですが僕は大好きです。この曲については、このスタジオ録音バージョンの方が、ライブバージョンよりもアレンジが心地良いです。シンセサイザーとフェンダーローズという、所謂「エレピ」を効果的に使って、豊かな叙情性を表現しています。このアレンジの「叙情性」がこの曲の最大の武器で、シンプルではあるが叙情的な歌詞と合わせて、この曲を印象深い曲に仕立てています。

そして「妹」。この曲のアレンジが凄い。アコギとアコピのシンプルな響きが実に印象的。チェンバロの使い方も良く、ストリングスの使い方も秀逸。バックコーラスの付け方も申し分無く、そんな凄いアレンジをバックに、こうせつが実に気持ちよさそうに、この名曲を歌い上げていく。これだけ優れたアレンジをバックに付けているのである。前で歌う側としては、それはもう「快感」だろう。

3年ほど前、ステレオのアンプを大幅グレードアップして気が付いたんですが、このアルバム、音がかなり良い。僕の所有する93年版CDは、バーニー・グランドマンの手によるリマスター盤ですが、とにかく音が良い。これは、もともとのマスターテープの音質が良かったからこその「リマスターによる音質の向上」と解釈しています。現行CDの音質はどうなんだろう。

当時、このLP2枚組ボックスの帯紙に書かれていた「明日に、もし何か見失うことがあったら思い出して下さい。かぐや姫の世界を・・・・」。いまでもこのアルバムのキャッチコピーにはグッときます。

 
 

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2012年2月17日 (金曜日)

クロスオーバーなデスモンド

いやいやいや〜激しく寒い朝である。うっすらと屋根に雪が積もっているではないか。冷蔵庫の中を歩いて最寄りの駅まで通っているような感覚。関東地方の中でも暖かい方の千葉県ですら、この寒さである。北の地方は推して知るべし、である。

あんまりに寒いので、今週は、ウォームで円やかなアルト、ポール・デスモンドで突っ走ることにする(笑)。今日は、イージーリスニング・ジャズの時代のデスモンドである。

1960年代の終わりから台頭してきた「クロスオーバー・ジャズ」。ロックとジャズの融合とか、ジャズとクラシックの融合という、異種格闘技のような感じのジャズ。そんな時代のトレンドの中で、イージーリスニング・ジャズも台頭しつつあった。

クロスオーバー・ジャズ、イージーリスニング・ジャズの専門レーベルが「CTIレーベル」。CTIレーベルは、1967年、プロデューサーのクリード・テイラーによって創設された。ジャズの大衆化を図るために設立され、クロスオーバー・ジャズのブームの中核を担った(Wikipediaより)。

そんなCTIレーベルと契約を結んだデスモンド。CTIから数々のクロスオーバー・ジャズに乗った佳作をリリースする。特に、デスモンドの場合は、クラシックとジャズの融合、クラシックの弦のアレンジに乗って、ジャズ・スタンダードの焼き直しやボサノバ、サンバなどの名曲をカバーした。電気楽器とはあまり付き合わず、基本はアコースティックなところが、ハードバップ時代からのベテランらしいところである。

そんなデスモンドの異種格闘技的なアルバムが『From the Hot Afternoon』(写真)。デスモンドのイージーリスニング・ジャズの傑作。全編、ブラジルの世界。ボサノバ&サンバをやらせたら、デスモンドの円やかなアルトは最適。さすがCTIレーベル、さすがはクリード・テイラー。慧眼恐るべしである。
 
From_the_hot_afternoon   
 
しかし、厳密に言うと、このアルバムは、Milton Nascimento & Edu Loboの作品集。改めて、よくよく収録曲を眺めると、10曲のうち、Milton Nascimentoの曲が6曲、Edu Loboの関係する曲が4曲。ブラジル音楽といっても、ボサノバ&サンバでなく、ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ、つまりはMPBの曲を主体にしたアルバムです。く〜、小粋やなあ。むっちゃ格好ええ企画アルバムですわ。

演奏の雰囲気は「ブラジル」。基本的にはボサノバ&サンバと同等の雰囲気です。特に、4曲目の「To Say Goodbye」は、切々と女心を唄うWanda De Sahの唄が実に魅惑的です。このWanda De Sahの歌声に呼応するように吹き上げるデスモンドのウォームで円やかなアルト・サックス。デスモンドのアルトと魅惑的なMPBの女性ボーカルは相性抜群である。

そして、なんと、Edu Lobo本人がGuitarとVocalで2曲に参加。おやおや、と思ってパーソネルを眺め直してみると、基本的にブラジルのミュージシャンとのコラボではないか。なるほど、演奏の雰囲気が米国っぽくないな、ジャズっぽくないな、と思ったがそういうことなんですね。

弦のアレンジャーは、ドン・セベスキーなので、ちょっと古さを感じてしまうのですが、1969年の録音という観点で聴き直すと、これはこれで、当時の流行というものが感じられて、これはこれで「あり」かな、と思います。古さもここでは「個性」として良いと思います。

このアルバムの音が好きなら、クロスオーバー・ジャズを楽しめると思いますし、このアルバムの音が嫌いなら、クロスオーバー・ジャズを楽しめることは無いと思います。クロスオーバー・ジャズの基準となるような音が詰まっている、クロスオーバー時代の生き証人のようなアルバムです。

良いクロスオーバー・ジャズ、イージーリスニング・ジャズのアルバムです。1960年代終わりから1970年代前半のクロスオーバーの時代の音をしっかりと感じる事が出来ます。もちろん、デスモンドのウォームで円やかなアルトもバッチリ堪能できます。

 
 

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2012年2月16日 (木曜日)

アグレッシブなDBQとデスモンド

今週の初め、ポール・デスモンドを極めたいと思って、早、木曜日になる。え〜い、今週はポール・デスモンドで突っ走るぞ。

今日までご紹介したポール・デスモンドは、「鋭い切れ味」で、強いアルトを吹きまくるデスモンドだった。どれもが、デスモンドのリーダー作、若しくは双頭リーダー作。デスモンドに辛口の方々は「でも、The Dave Brubeck Quartet(DBQと略)でのデスモンドは、ひ弱でスイングしてないで〜」って言いそう。

どうも、ポール・デスモンドのアルトに対して誤解した評価をお持ちの方々は、このDBQに関しても、誤解した評価をお持ちの傾向が強い。どうしてどうして、DBQって、結構、硬派な演奏をするんやけどなあ。オフビートを強調した、粘りのあるファンキーなスイング感では無く、スクエアで間合いを入れた縦ノリのスイング感が抜群なのだ。硬質でゴツゴツした、木訥としたスイング感である。

そんなDBQのライブ盤がある。タイトルは『Dave Brubeck Quartet at Carnegie Hall』(写真左)。おさらいになるが、パーソネルは、Paul Desmond (as), Dave Brubeck (p), Gene Wright (b), Joe Morello (ds)。1963年2月22日、NYのカーネギーホールでのライブ録音。

どうも、DBQは、スタジオ録音とライブ演奏とは、その演奏方針を変えていたと思う。スタジオ録音は、家のリビングのステレオで鑑賞することを踏まえて、柔らかく耳当たりの良い、オシャレな演奏を心がけている様に感じる。逆に、ライブ演奏はバリバリ尖ったスクエアなスイング感で、ノリノリの演奏を繰り広げるという、エンタテインメント性を全面に押し出した演奏を主力とする 
 

Dbq_carnegie_hall

 
そんなDBQのライブ盤である。結構、エッジの立った、ノリノリの演奏を繰り広げている。そんなノリノリのDBQの演奏である。当然、アルトのデスモンドも、ノリノリの「鋭い切れ味」の強いアルトを聴かせてくれる。このライブ盤でのデスモンドのアルト、結構、聴きものです。これだけ、スクエアなビートに乗って、ノリノリに吹きまくるデスモンドも珍しい。

しかも、このライブ盤、デスモンドのアルトが結構フィーチャーされている感じなのだ。全編に渡って、デスモンドのアルトが前面に出て、それはそれは大活躍である。デスモンド者の方々に、なかなかのお勧めです。

収録された曲も、小粋なスタンダード曲から、DBQの大ヒット盤からの人気曲まで、なかなか聴き応えのある選曲である。そんな曲たちを熱気溢れる演奏で紡ぎ上げていく。

僕も、このライブ盤を初めて聴いた時、ビックリした。「これってあのThe Dave Brubeck Quartetなのか?」。DBQの大ヒット盤からの人気曲など、スタジオ録音よりもテンポが速い。「Three To Get Ready」「Blue Rondo A La Turk」「Take Five」、いずれも爽快である。

しかし、このライブ盤、ひとつだけ、欠点がある。ベースとドラムの長尺ソロが収録されていること。Disc2の「King For A Day」と「Castilian Drums」。これはいただけない。これだけが玉に瑕である、どう聴いても退屈である。

このベースとドラムの長尺ソロを除けば、意外や意外、アグレッシブなDBQを、アグレッシブなデスモンドのアルトを心ゆくまで堪能すること出来る、このライブ盤『Dave Brubeck Quartet at Carnegie Hall』は良いアルバムだと思います。DBQに対する誤解した評価も、デスモンドの対する誤解した評価も、一気に一転すること請け合いです。

 
 

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2012年2月15日 (水曜日)

続・デスモンドとマリガンの対比

Gerry Mulligan & Paul Desmondの名盤『Blues in Time』とくれば、次に続くは、Gerry Mulligan & Paul Desmond『Two of a Mind』(写真左)である。この流れは僕にとって「定番中の定番」(笑)。

改めて、この『Two of a Mind』、1962年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as), Gerry Mulligan (bs), John Beal (b), Connie Kay (ds)。フロントにサックス2本、ピアノレスでドラムとベースのリズセクション。変則的なカルテット編成は先の『Blues in Time』と同じ。

ウエストコースト・ジャズの最大の特徴でもある「秀逸なアレンジ」は相変わらず。マリガンが、このアルバムでも、アレンジの腕を存分にふるっている。前の『Blues in Time』よりも、さりげない感じの秀逸なアレンジが実に「ニクイ」。マリガンも大人になったのお。シンプルな中に、なかなかに味のあるアレンジである。

この『Two of a Mind』は、RCAレーベルからのリリースなので、前作『Blues in Time』よりもイージーリスニング・ジャズに傾いていて、デスモンドのアルトも円やかさが更に増している。でも、まだまだ、「鋭い切れ味」で、強いアルトを吹きまくるデスモンドは健在。

そのデスモンドの更にウォームで円やかになったアルトとは正反対の、バリサクの低音を活かしてブリブリと強烈なブロウで、デスモンドのアルトに相対するマリガンも健在。フロントに立って吹きまくるデスモンドの伴奏に回った時の、マリガンのバリサクの伴奏が素晴らしいところも健在。

Two_of_a_mind

というか、5年の月日の流れが、この二人のコラボをより味わい深く、地味深いものに進化させているように感じる。前作『Blues in Time』では、気合いを入れて必死に吹きまくっていた二人だが、この『Two of a Mind』では、お互いの音と個性をしっかり確認しながら、余裕のあるユニゾン&ハーモニー、余裕のあるスリリングなチェイスを聴かせてくれる。

「All The Things You Are」「Stardust」「The Way You Look Tonight」など、聴き易さ満点のスタンダード曲を、秀逸なアレンジと相性抜群のデスモンドのアルトとマリガンのバリサクが、サックスという同系の楽器でありながら、カバー音域が異なるが故に、「良い塩梅」の音の絡み具合で、実に魅力的に、実に円やかに、実に切れ味良く聴かせてくれる。

良いアルバムです。前作『Blues in Time』よりもイージーリスニング・ジャズに傾いていて、アレンジもさりげなく、「耳当たり」という点では、こちらの『Two of a Mind』の方が、ジャズ者初心者の方々へのお勧めかもしれません。といって、ジャズ者ベテランも方々にも是非一聴して頂きたく。デスモンドに対する感じ方がガラッと変わること請け合いですぞ。

ちなみに、この『Two of a Mind』も、アルバム・ジャケットについては2種類あって、現在、流通しているのは写真右のものみたいですが、僕の馴染みで好きなのは写真左のジャケット。僕はこちらの方が絶対に良い。遙か昔、LPの時代、僕が馴染みだったのは、この写真左のジャケットだったからです。あんまり、ジャケット・デザインは昔と変えて欲しくないなあ(笑)。

 
 

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2012年2月14日 (火曜日)

デスモンドとマリガンの対比

ポール・デスモンドの名盤『First Place Again』とくれば、次に続くは、Gerry Mulligan & Paul Desmond Quartet『Blues in Time』(写真)である。この流れは僕にとって「定番中の定番」。

改めて、この『Blues in Time』、1957年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as), Gerry Mulligan (bs), Joe Benjamin (b), Dave Bailey (ds) 。フロントにサックス2本、ピアノレスでドラムとベースのリズセクション。変則的なカルテット編成。プロテュースは、Verveレーベルの総帥Norman Ganz。

この『Blues in Time』の特徴は、ウエストコースト・ジャズの最大の特徴でもある「秀逸なアレンジ」。ウエストコースト・ジャズのリーダーであったマリガンは、バリトン・サックス(略して「バリサク」)奏者としての腕前も素晴らしいが、とりわけ、アレンジの才能がずば抜けている。そのマリガンの手になるアレンジが秀逸。

ウォームで軽やかに飛翔するリリカルなフレーズ、間合いを置きながら、ストレートにスクエアにスイングするインプロビゼーション。デスモンドのアルト・サックスの個性を最大に活かすべく、マリガンはアレンジの才の粋を尽くす。クラシックの対位法なども取り入れた斬新で聴き心地の良いアレンジ。

そんな優れたアレンジに乗って、デスモンドがアルトを吹きまくる。独特なスイング感、円やかな音色、ウォームで軽やかに飛翔するリリカルなフレーズ。加えて、このアルバムでは、デスモンドは「鋭い切れ味」で、強いアルトを吹きまくる。昨日ご紹介した『First Place Again』よりも強いアルトを吹きまくる。

マリガンは、そんなデスモンドを活かすべく、自分が主役な時には、バリサクの中高音域を中心に、小粋に軽やかで円やかなブロウを披露するのであるが、ここでは、その円やかなブロウを封印。
 

Blues_in_time

 
強く吹くデスモンドであるが、それでもデスモンドのアルトはウォームで円やか。そのウォームで円やかなアルトとは正反対の、バリサクの低音を活かしてブリブリと強烈なブロウで、デスモンドのアルトに相対する。

フロントに立って吹きまくるデスモンドの伴奏に回った時のマリガンのバリサクの伴奏が素晴らしい。いや〜上手いなあ。ピアノレスな編成なので、ピアノの役割であるフロントのアルトのインプロビゼーションの底を支える伴奏を、マリガンがバリサクで敢行する。絶妙な伴奏に惚れ惚れする伴奏テクニックである。

更に、デスモンドのアルトとマリガンのバリサクの対比が凄い。双方のブロウの特色、ウォームで円やかなアルトと低音の切れ味鋭い強烈なブロウが、お互いにお互いを惹き立て合う。デスモンドはマリガンの低音の切れ味鋭い強烈なブロウに刺激されて、更に「鋭い切れ味」で、更に強いアルトを吹きまくる。サックスという同系の楽器でありながら、カバー音域が異なるが故に、音の絡み具合が「良い塩梅」である。

なぜか、日本では過小評価されている感じのアルバムですが、どうしてどうして、聴き応え十分。優れたアレンジに乗って、適度な緊張感が心地良いユニゾン&ハーモニー、手に汗握るスリリングなチェイス。デスモンドのアルトとマリガンのバリサクの相性は抜群。双方とも、実に意欲的で挑戦的。1950年代のウエストコースト・ジャズの傑作の一枚です。お勧めです。

なお、アルバム・ジャケットについては、現在、流通しているのは、写真右のものみたいですが、僕の馴染みで好きなのは、写真左のジャケット。僕はこちらの方が絶対に良いなあ。それというのも、この写真左のジャケットを見るたびに、大学時代のジャズ者初心者の頃を思い出すからです。もちろん、LPの時代でした。

 
 

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2012年2月13日 (月曜日)

デスモンドのアルトの本質

今年の冬は寒い。とびきり寒い。でも、もう飽きた。といって、いきなり暖かくなる訳でも無い。仕方が無いので、せめて、暖かな気分になるジャズを聴くことにした。う〜ん「暖かな気分になるジャズ」かぁ。と考えていたら、久々に、ポール・デスモンドを極めたくなってきた。

ウォームで軽やかに飛翔するリリカルなフレーズ、間合いを置きながら、ストレートにスクエアにスイングするインプロビゼーション。ポール・デスモンドのアルト・サックスの個性は他に無い、唯一無二な個性である。このデスモンドのアルトは独特の円やかな音色が特徴で、一聴するだけで直ぐに判る。

しかし、何故かはハッキリしないが、ポール・デスモンドほど、ジャズ評論家の間で評価が低いサックス・プレーヤーはいないだろう。イージーリスニングだとか、ムード音楽だとか、ひ弱だとか、スイングしないとか、悪評ズラリ。どうしてここまで酷いかなあ。
 
まあ、MJQもそういう傾向にあるけど・・・。ジャズでクラシックやるんじゃないとか、ジャズとは言えない繊細な音とか結構酷い。煙草の煙が充満する薄暗いライブハウスで、熱気溢れる、ファンクネス溢れる、音が弾けて、汗の飛び散る様な演奏だけがジャズじゃないんやけどなあ。
 
でも、ネット上での、一般のジャズ者の皆さんのデスモンドの評価は決して低くない。というか、ネットでのジャズ者の方々のデスモンドの評価は当を得ている。良かった。僕は、このポール・デスモンドのアルトが大好きなのだ。独特なスイング感、円やかな音色、ウォームで軽やかに飛翔するリリカルなフレーズ、どれを取っても僕には申し分の無い個性である。
 

First_place_again

 
そんなポール・デスモンドのアルトを、心ゆくまで堪能できるアルバムが『First Place Again』(写真左)。1959年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as), Jim Hall (g), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)。

ポール・デズモンドのアルバムに、デスモンドお気に入りのギター、ジム・ホールが参加したアルバムは6枚あるが、これがその最初となる作品。

ウォーム・アルトのデスモンドの代表作。ウォームなリリカルさの中に「鋭い切れ味」が感じられる硬派な一枚。聴き応え十分。裏ジャケットに、サブ・タイトルとして「An ”After Hours” Session With Paul Desmond And Friends」とある。う〜ん、至極納得。寛いだセッションの中に、デスモンド、ホール、ヒース、ケイの4人4様の玄人芸が、丁々発止と繰り広げられる。

選曲も渋いスタンダード曲中心で、変に企画性を持たせずに、シンプルにセッション風にサラリと仕上げたところが良い。セッション風な録音の中で、デスモンドは、本来の自由奔放なアルトを十分に聴かせてくれる。ホールは、内に熱気を秘めながら、クールで滋味溢れる渋いギターを淡々と聴かせてくれる。この対象的なデスモンドとホールのコラボが実に素晴らしい。

デスモンドがいつになく「鋭い切れ味」で、熱気溢れるブロウを聴かせてくれる。デスモンドのアルトの本質が十分に聴いて取れる名盤だと思います。他の3人、ホールのギターも滋味溢れ、ヒースのベースは堅実堅牢なビートを供給し、ケイのドラムは多彩なテクニックをそこはかとなく披露して、デスモンドのアルトを彩ります。良いアルバムです。

 
 

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2012年2月12日 (日曜日)

チューリップ初のライブ盤である

実は、僕が初めて自腹を切って買ったチューリップのアルバムは『Live!! Act Tulip』(写真左)。購入した時期はハッキリと覚えている。1974年9月。高校1年生の秋の始めの季節である。

このライブ盤は、73年9月23日、渋谷公会堂で行われた初の単独ライブ、渋谷公会堂の動員記録を更新した熱狂のライブを収録したものである。シングル「心の旅」がオリコンシングルチャートで1位を獲得したのが1973年9月10日。オリジナル発売日は1973年12月1日、チューリップの最初の絶頂期での発売である。

いやはや、このライブ盤、これほど、客の歓声、叫び声が調整されていないライブ盤も珍しい(笑)。当時の熱狂感そのままに、女性ファンの黄色い声など、普通にステレオで音量を上げて聴いていると、気恥ずかしくなる。購入当時、僕はまだ高校1年生。そりゃあまあ、恥ずかしかったですね〜(笑)。最後の最後にファンの「もう死にそう・・」という声が入っていて、この部分には、あまりのリアリティに背筋がゾクッとしたものです。

収録された曲は全12曲。興味深いのは、当時のライブって、自分達の持ち歌に加えて、当時、流行っていた楽曲のカバーなんかを織り交ぜているんですよね。このライブ盤でも、ビートルズの「イエスタデイ」、サイモン&ガーファンクルの「4月になれば彼女は」が入っています。当時、オリジナルが最優先だった僕は、このカバーの存在が、どうしても好きになれなかった(笑)。

さて、このライブ盤に収録された全12曲は以下の通り。前述のカバーの2曲と、1973年10月5日に「心の旅」の次のシングルとしてリリースされた「夏色のおもいで」(写真右)が目を惹く。ちなみに「夏色のおもいで」松本隆の作詞家デビュー曲。また、チューリップの楽曲の中でメンバー以外が作詞した唯一の曲でもある。
 
Live_act_tulip
 
1. 夢中さ君に
2. 新しい地球を作れ
3. 早くおいで
4. 道化者
5. 二人で山へ行こう
6. 僕のお嫁さん
7. 心の旅
8. 思えば遠くへ来たものだ
9. イエスタデイ
10. 4月になれば彼女は
11. 夏色のおもいで
12. メドレー:夢中さ君に~魔法の黄色い靴~道化者~心の旅

オリジナル・アルバムよりピックアップされた楽曲は、どれも、オリジナルよりアップテンポだったり、力強かったりで、当時のチューリップは、ライブにおいても既に相当の実力を持っていた、ということが窺い知れる。今でも、オリジナル曲の演奏については、結構、気に入っている。死ぬまでに一度、自らの手でカバーしたいなあ、とぼんやり思っている(笑)。

しかし、このライブ盤の客の歓声、特に女性ファンの黄色い声については「閉口」するなあ(笑)。当時のチューリップは、完全にアイドル・グループ扱いされていますよね〜。しかし、この後、チューリップは自らの手で、このアイドル・グループ路線から訣別し、硬派なフォーク・ロック・バンドとして、独自の個性的な道を歩んでいくことになるのですが、その話はまた後ほど・・・。

ということで、このライブ盤はチューリップ・マニア向け。逆に、チューリップ・マニアであれば、このアルバムは、突っ込みどころ満載だし、感心するところも多々あるし、意外に楽しめます。

 
 

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2012年2月11日 (土曜日)

オリジナルに匹敵するベスト盤

「この曲が売れなかったら福岡に帰る」。そんな悲壮な決意の中、1973年4月20日にリリースしたシングル「心の旅」が1973年9月10日付のオリコンシングルチャートで1位を獲得した。一躍、チューリップは「時の人」になる。

そんな背景の中でリリースされた『TULIP BEST』(写真)。1973年6月5日のことである。面白いのは、この「心の旅」のヒットに乗じて、急遽、アルバムをリリースする必要に迫られて作成された「急造ベストアルバム」では無く、「心の旅」がヒットの兆しを見せたタイミングで発売された「用意周到なベストアルバム」なんですね。いかにもチューリップらしい仕業です。

このアルバムはタイトルを見て判るように、先にリリースされた、ファーストアルバム『魔法の黄色い靴』、セカンドアルバム『君のために生まれかわろう』の2枚からの選曲と、新たに「僕のお嫁さん」「道化者」「二人で山へ行こう」を加え、シングルでリリースされた「心の旅」とそのB面「夢中さ君に」を合わせた「変則ベストアルバム」です。

ベストアルバムとは言っても、先にリリースされた2枚のオリジナルアルバムからの選曲も良好で、しかも、LPのA面、B面と曲の並び順も考えられたもので、ベストアルバムとは言いながら、これはこれで、オリジナルアルバムと同等、若しくはそれ以上のクオリティが素晴らしく、僕は、このベストアルバムについては、オリジナルアルバムと同等の扱いをしてきました。

Tulip_best

チューリップらしからぬ「心の旅」を先頭に持ってきたことが成功要因だろう。いきなりサビのコーラスから入る、当時としては斬新な構成を持った曲ではあったが、その頃のチューリップの音世界からは、ちょっと異質な聴き心地がする曲だったことは事実。その曲を一曲目に持ってきて、聴き手に「ガツン」と一発かまして、従来の「チューリップ・ワールド」に引きずり込んでいく。

2曲目以降、オリジナルアルバムからの再掲曲も新しく書き下ろした曲も、ひとつの「チューリップ・ワールド」の中で、どの曲も違和感無く繋がっている。特に、LP時代のA面を占める「心の旅」「僕のお嫁さん」「道化者」「二人で山へ行こう」「風よ」「千鳥橋渋滞」の流れは素晴らしく、僕は今でも、前奏から間奏、エンディングも含めて、このA面の曲の全てを口ずさめる位、当時、本当に良く聴き込んだものだ。

とは言え、B面の「魔法の黄色い靴」「一人の部屋」「夢中さ君に」「君のために生まれかわろう」「田舎へ引っ越そう」「電車」の流れも捨てがたい魅力が溢れてはいるのですが、ラス前の「田舎へ引っ越そう」とラストの「電車」の2曲の据わりが、僕にとってかなり違和感があって、ラス前、ラストの曲なので、もう少し、盛り上がって大団円、という感じのメリハリのある曲を持ってきて欲しかったな。

良い選曲のアルバムで、先にリリースされた2枚のオリジナルアルバムの存在を知らない方々にとっては、このベストアルバムは、完全にオリジナルアルバムに感じると思います。それほどまでに良く出来た「用意周到なベストアルバム」です。

この『TULIP BEST』に収録された曲は全て好きですが、特に「僕のお嫁さん」「千鳥橋渋滞」「魔法の黄色い靴」と、「道化者」〜「二人で山へ行こう」のメドレーがお気に入りです。

 
 

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2012年2月10日 (金曜日)

野球に関するジャケットが面白い

Eric Alexander(エリック・アレキサンダー)は中堅のテナーマン。1968年生まれなので、今年で44歳になる。1991年のセロニアス・モンク・コンペティションで銀賞獲得した時は弱冠23歳。まだまだ若手と思っていたのだが、あれからもう20年になるのか。44歳と言えば立派な「中堅」である。

モンク・コンペティションで銀賞獲得を機会にシカゴからNYに進出。92年よりほぼ毎年のペースで、コンスタントにアルバムをリーダー作をリリースし、若手ジャズメンとしては異例の好セールスを記録している。現在において、アコースティック・ジャズのど真ん中を行くテナー・サックス奏者である。

一昨日、このブログで「野球に関するジャズのアルバム」について語った訳だが、そう言えば、ジャケットが「もろ野球」しているアルバムがあるのを思い出した。

エリック・アレキサンダーの、1992年の初リーダー作の『New York Calling』から数えて8作目になる『Heavy Hitters』(写真左)である。1997年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Elic Alexander (ts), Harold Mabern (p), Peter Washington (b), Joe Farnsworth (ds)。

ジャケットの写真を見ると、思わず笑ってしまう。なんと、ユニークなジャケットであろう。エリックは大の野球ファンらしい。しかも、ニューヨーク・ヤンキースの大ファンとのこと。カルテットのメンバー全員がヤンキースのユニフォームを着て、バットを握ってポーズを取っている。なんともジャズ盤らしからぬ、楽しいジャケット写真である。
  
しかも驚くことに、ライナーノーツの見開きには、別のショットで、大リーグの審判の格好をした、ジャズアルバム録音の神様「ルディ・ヴァン・ゲルダー」も一緒に写っている。天才録音技師として有名なルディではあるが、天才故に「変人」な面もあることで有名な人なんだが、よく、こんな格好したもんだなあ。
 
それだけ、ルディはエリックのカルテットの音を「かって」いるのかもしれない。そう、ルディの録音のこのアルバム、まず、音が凄い。それだけでもこのアルバムは「買い」だ。
  
Eric_alex_heavyhitter
  
そして、その素晴らしい録音の中、エリックのテナーが実に映える。このアルバム、エリックのテナーのワン・ホーン盤だけあって、エリックのテナーを心ゆくまで楽しむ事が出来る。全編に渡って悠然と音数を選んで吹くエリックのテナーは実に個性的だ。

この頃のエリックは、若手テナーマンがほとんど陥る「コルトレーン症候群(超絶技巧なテクニックに走って歌心を二の次にする傾向)」には傾いておらず、シンプルで歌心を湛えたインプロビゼーションが凄く魅力的だった。

さて、アルバムの内容はといえば、オープニングの「Mr.Stitt」に暫く耳を傾けただけで、もう、このアルバムの素晴らしさが約束されたようなもの。よく抑制の利いた、それでいて力強いエリックのテナー。3曲目の「Rakin' & Scrapin'」なんか、絵に描いたような「ファンキー」なナンバー。

そして、素晴らしいのは、5曲目「On A Slow Boat To China」の高速テナー。高速テナーとは言っても、超絶技巧なテクニックには走らない、シンプルで歌心を湛えた、素晴らしい高速テナー。ワン・ホーン盤が故、エリックのブロウを堪能出来る。

ピアノのメイバーンも絶好調。ベースのワシントンは、ブンブンとベースを気持ちよく歌わせ、ドラムのファンズワースは、堅実かつ「うまい」ドラムスを披露する。このメンバーで、おかしなアルバムになる道理が無い。どの曲も一気に聴き切ってしまう佳作揃い。
 
極めつけは、8曲目の「Maybe September」。エリックの実力の程を証明する素晴らしいバラード演奏。まあ、一度、聴いておくんなさい。

野球に関するジャケットが面白い、カルテットのメンバーを「強打者」に見立てたこのアルバム。なかなか凄いアルバムです。

 
 

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2012年2月 9日 (木曜日)

こってこてのR&B曲のカバー集

「ファンキー&ソウルフル」を追求すると、ついには「ストリート・ミュージック」に行き着く。このガッド・ギャングも「ファンキー&ソウルフル」を追求していって、ついには「ストリート・ミュージック」に行き着いた。

そんな素敵なセカンド・アルバムが、The Gadd Gang『Here & Now』(写真左)。このセカンド・アルバムでは「ストリート・ミュージック」的なR&Bの名曲のカバーが特徴的。こってこてのR&Bカバー集なんだが、バリサクとアコベの低音の威力で、重心の低い、こってこてファンキーなフュージョン・カバーになっている。これって、フュージョン・ジャズでは他に無い個性。実に魅力的。

それぞれの選曲も良いのだが、何と言っても、メンバー達が実に楽しそうに演奏している、このアルバムの「楽しい雰囲気」が最高。この実に楽しい雰囲気の中、R&Bの名曲たちが、ガッド・ギャングの手で次々にカバーされていく。

最初の1曲目は、オーティス・レディングの1965年のヒット曲「お前を離さない」でファンキーに疾走する。2曲目はメドレーで、テンプテーションの1965年のヒット曲「マイ・ガール」で渋く、ソウルフルに歌い上げながら、ジミ・ヘンドリックスのトリオ=バンド・オブ・ジプシーの「チェンジス」で、バリバリファンキーに迫る。3曲目は、キング・カーティス、1964年初出の「ソウル・セレナーデ」は、ミドルテンポで、実に渋く、ファンキーにアレンジメントされている。この冒頭の3曲は、かなりの「聴きもの」である。
 
特に「マイ・ガール」は、個人的に涙が出るほど大好きな曲で、テンプテーションのオリジナル・バージョンは、学生時代、周りが呆れるほど繰り返し聴いたものだ。そんな大のお気に入りR&B曲の、ガッド・ギャングによるカバーである「My Girl〜Them Changes」。メンバーそれぞれの熱演が素晴らしい。ガッド・ギャングのベスト・プレイの一つだと僕は思う。
 
Here_and_now
 
4曲目は、日本でも人気の、プロコル・ハルムの「A Whiter Shade Of Pale(青い影)」(1967年)を、実に「ソフト&メロウ」かつファンキーに歌い上げる。この「A Whiter Shade Of Pale」。これはロック曲。R&B曲では無いが、アレンジはコテコテのR&B仕様。凄くベッタベタなカバーだが潔くて心地良し。

5曲目は唯一のオリジナルを挟んで、6曲目は、1943年初出のデューク・エリントン楽団の「昔はよかったね」は実にダンサフルで、踊り出したくなる。実にファンキーでR&Bなアレンジが素敵だ。7曲目は、イタリアのシンガー=ソングライター、ピノ・ダニエリの「ケ・オーレ・ソ」で、この曲の演奏は、ガッド・ギャングの「ソフト&メロウ」な側面を聴かせてくれる。

8曲目は、スティービー・ワンダーの1970年の名曲「涙をとどけて」で、再び、ファンキーで、ダンサフルな演奏に立ち返り、9曲目、アメリカ人なら誰でも知っている裏国歌「アメリカ・ザ・ビューティフル」で締めくくる。

そして、最後に特筆すべきは、コーネル・デュプリーのファンキー・ギター。このガッド・ギャングの『Here & Now』って、コーネル・デュプリーのギターが素晴らしい。デュプリーって、もともとR&B志向なんだが、このアルバムで、ど真ん中のR&Bをカバーしているってこともあって、バリバリに弾きまくっている。デュプリーのベストプレイのひとつだろう。

若い頃、この『Here & Now』は、あまりにコッテコテのR&B曲のカバー盤なので、そのあまりにあからさまなカバーの仕方に気恥ずかしさを感じて、ちょっと疎遠になった時期がある。50歳を過ぎた今では、そんなこと、全く無くて、このあまりにあからさまなカバーが潔くて心地良い。

ま、人間、年と共に音楽に対する許容量が増えるというのか、懐が深くなるというのか、若い頃、なかなか馴染めなかったアルバムが、50歳を過ぎた今では意外と「イケる」ということが多々ある。この傾向、僕だけかなあ。

とにかく素晴らしい、R&Bカバーのフュージョン・アルバムとして大推薦したい。良いアルバムです。

 
 

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2012年2月 8日 (水曜日)

野球に関するジャズのアルバム

2月になると、日本ではプロ野球のキャンプがスタート。それまではシーズンオフで、野球の話題はそこそこだったのが、キャンプ・インからは、スポーツニュースは野球の話の花盛りとなる。やっぱり、日本って国は野球が好きなんやな〜。

野球と言えば、本場は米国。米国と言えば「ジャズ」の発祥の国。野球にまつわる「ジャズ」演奏って結構あるんじゃないかと、昔、思った。が、これがなかなか無い。ジャズの本場ニューヨークと言えば、昔からヤンキースの本拠地で、野球のまつわる「ジャズ」演奏があってもいいのになあ。

と言うことで、野球に関するジャズのアルバムはないものか、と、自分のライブラリーをゴソゴソ探してみた。でも、やっぱり、なかなか無い。あきらめずに再びゴソゴソしていたら、やっとこのアルバムを見つけた。

Andre Previn & Russ Freeman『Double Play!』(写真左)。1957年4月、5月の録音。ちなみにパーソネルは、Andre Previn (p), Russ Freeman (p), Shelly Manne (ds)。ダブル・ピアノにドラムという変則トリオ。なんとベースがいないが、演奏のその時々で、ダブル・ピアノのどちらかがベースラインを担当しているので問題は無い。

さて、改めて、このアルバム、どういう経緯でこうなったのか、このアルバムの存在を知った時から、知りたくて知りたくて仕方が無いのだが、アンドレ・プレビン(写真右)とラス・フリーマンという2人のピアニストの連弾とシェリー・マンのドラムという大変珍しいフォーマットで演奏されている。

2人のジャズ・ピアニストの連弾を、野球の「ダブルプレイ」とかけたアルバム名。アルバム名だけが、野球に関係しているだけでなく、ジャケットの悩ましいオネーサンも野球帽をかぶって応援をしているみたいな風情。なかなかセクシーでよろしい。

Double_play

いやいや、それだけではない。オープニングの曲が、かの大リーグで有名な「Take Me Out To The Ball Game」。邦題「野球場につれていって」は、大リーグのサポーター共通の「応援歌」。この歌を敵味方ともに大声で歌いまくるのだから、大リーグは凄い。凄いを通り越して「羨ましい」。

そのような大有名曲が、いともたやすくジャズのフォーマットに乗っかって、とても楽しく愛らしく演奏される。恐らく、ジャズのアルバムの中で「野球場に連れて行って」を取り上げているのは、このアルバムだけじゃないか。とにかくアレンジが美しく愛らしい。この「野球場に連れて行って」のカバー、違和感は全く無い。

他の曲についても、曲のタイトルは、なんとなく「野球」にまつわるネーミングみたい。そして、演奏自体はどれをとっても、プレビンとフリーマンとの楽しい掛け合いと連弾。注意深く聴いていても、どっちがどっちなのか判らないくらい、素晴らしいテクニックと歌心溢れるフレーズの連発。

プレビンとフリーマンはピアノ連弾の相性抜群である。西海岸特有のちょっと乾いた響きのピアノが実に爽快。そんな爽快なピアノ音が連弾でダブルで響き渡るのだ。単純に聴き心地満点である。

プレビンがクラシック出身というのを知っていて、辛うじて、タッチが堅くシッカリしていて、リズムやタイミングがいかなる場面でも崩れない方がプレビンかな、と判る。それに比べて、フリーマンは、少しラフで粘りがあってジャジー。所謂、ジャズ出身のピアニストらしさが見え隠れする。

それと、特筆すべきは、シェリー・マンのドラミングの素晴らしさ。こんなに柔軟でカラフルなドラミングは、シェリー・マンだけのもの。ドラミングだけ聴いていても十分に楽しめる。シェリー・マンは、そんな繊細かつ大胆なドラミングで、プレビンとフリーマン、二人の連弾を明るくポジティブに盛り上げる。

破綻の少ない、緻密で大胆でクールでスピード感溢れる「米国西海岸ジャズ」の好アルバムです。特に、米国西海岸ジャズ者の方々にお勧めですね〜。爽快ですぞ。

 
 

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2012年2月 7日 (火曜日)

ビートルズのジャズ・カバー盤

昨日は、1970年代の伝説のロックグループ、Led Zeppelinの楽曲のジャズ・カバーについて語った。さすがに、Led Zeppelinの楽曲は個性が強く、なかなかジャズには展開しにくい「難物」だった。

それでは、ジャズで良くカバーされ、概ね良好にアレンジされるロックの楽曲は何か。それは、やはり「Beatles(ビートルズ)」の楽曲だろう。ビートルズがデビューして世界を席巻して以来、ジャズではビートルズの楽曲をことある毎にカバーしてきた。

今日は、バーチャル音楽喫茶『松和』のマスターである僕がお勧めする、ビートルズの楽曲のジャズ・カバー盤をご紹介したい。ざっと、ビートルズのジャズ・カバーとしてお気に入り盤が10枚くらいある中から、Central Park Kids『Play The Beatles』(写真左)を選んだ。1994年9月の録音。

いやあ、楽しいアルバムだ。アクセントとして、なかなか趣味の良いストリングスのアレンジに乗って、ジャズ・オーケストラ風の分厚い演奏がビートルズ・ナンバーを奏でていく。この演奏を担う「Central Park Kids(セントラル・パーク・キッズ)」とは、ニューヨーク・ジャズ界のスタジオ・ミュージシャン出身のベテランが、一時的に集まってできた、テンポラリ・グループである。

メンバーを見渡してみると、「マンハッタン・ジャズ・クインテット」に所属する、George Young (ts)や、Lew Soloff (tp)、David Matthews (p・写真右) の顔が見えるし(David Matthews はアレンジも担当している)、亡きギル・エバンスが率いていた「マンデイ・ナイト・オーケストラ」のChuris Hunter (as) もメンバーに名を連ねている。この素晴らしいメンバーで、ビートルズの曲をジャズにアレンジし、演奏するのだから、悪かろうはずがない。

演奏される曲は7曲。1曲目の「I Feel Fine」。パンチの効いたストリングスに導かれ、原曲を活かした、イカしたジャズが疾走する。これはいける。ストリングスのアレンジがなかなか良い。この「I Feel Fine」は、ジャズの「オフ・ビート」に良く乗る。選曲の勝利だろう。
 

Play_the_beatles

2曲目は「A Day In The Life」。ジャズギターのウエス・モンゴメリーのカバー演奏で有名な曲。さすがに、ウエスのカバー演奏には叶わないが、軽やかで乗り易い、楽しい演奏となっている。しかし、ちょっとアレンジしきれずに、手をこまねいている感じが無いでは無い。この曲のジャズ・アレンジは、ウエスの決定版があるだけに難しい。

3曲目は「MichelleI」。これはよくジャズで取り上げられるビートルズ曲ではあるが、あまり名演は無い。原曲のバラードが少々甘すぎるのと、そもそも、このビートルズの「MichelleI」のオリジナル演奏自体が、アレンジを含めて、相当の完成度であることが原因だろう。このアルバムでは、この原曲の甘さを押さえることで、なんとか、まずまずのカバー演奏になった。

4曲目は「Hello Goodbye」、5曲目は「A Hard Days Night」だ。この2曲ついては、へえーっ、この曲もジャズになるんだ、というのが正直な感想。マシューズのアレンジの勝利。特に、5曲目の「A Hard Days Night」は良いアレンジ、良い演奏。しっかりとジャズになっていて良い出来だ。意外と言えば意外だよな、「A Hard Days Night」がジャズ・カバーに耐えるとはなあ。

6曲目は、ジャズ・ミュージシャン御用達の「Norwegian Wood(ノルウェーの森)」。これは幾多のジャズメンがカバーしている。コード進行が面白く、このコード進行を借りてのインプロビゼーションは、なかなか聴き応えがある。が、この曲の持つメロディー自体は、これはこれで完成していてさわりようがない。アレンジのふるいどころが少ない曲という印象が強い。

そして、7曲目「The Fool On The Hill」でしめくくられる。この「The Fool On The Hill」のカバー演奏は「目から鱗」である。この「The Fool On The Hill」のジャズ・カバーのアレンジこそが、今回のDavid Matthewsのアレンジの極みではないか。「The Fool On The Hill」の持つ旋律をジャジーな4ビートに載せ替えて、そのユニークなコード進行の上に、フロント楽器のアドリブが繰り広げられる。良い感じだ。

このどの曲もよくアレンジされており、ソロパートもリリカル。たまには、耳慣れた曲で、こんな楽しいジャズがあってもいいではないか。リラックスして、楽しんで聴けるアルバムである。

 
 

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2012年2月 6日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・7

今日は、「こんなアルバムあったんや」シリーズの第7回目。今回は日本のジャズのアルバムからのチョイスである。

日野元彦『It's There』(写真左)。1993年3月の録音。ちなみにパーソネルは、日野 元彦 (ds), Steve Swallow (b), Karen Mantler (org), Mike Stern, John Scofield (g), Dave Liebman (ss), 日野 皓正 (tp)。

パーソネルを見る限り、実に魅力的なメンバーが終結し、きっと、純ジャズ系のコンテンポラリー・ジャズで、独特のリズム&ビートに乗って、ギターが捻れながらガンガンやるのか、と思うのだが、それでは今時の優れものなジャズと変わらない。それでは「こんなアルバムあったんや」にはならない(笑)。

収録された曲を見渡して頂きたい。収録された曲を並べると以下の様になる。何か感じるものはありませんか。ちょっと難しいですかね〜。
 
 
1. Tok O' The Town
2. The Ocean
3. The Rain Song
4. It's There
5. Hangin' Out
6. Thank You
7. Dazed And Confused
8. Stairway To Heaven
9. Stay Forever
 
 
1970年代のロック・マニアの方であれば、8曲目の「Stairway To Heaven」に着目して、もしや、と思われるのではないか。「Stairway To Heaven」、邦題「天国への階段」。1970年代英国ロックの伝説のバンド、Led Zeppelin (略してZep)の名曲中の名曲。ということで、他の曲を見渡しみると・・・。
 
 

Mhino_its_there
 
 
「The Ocean」「The Rain Song」(5th Album「Houses of the Holy」収録)、「Thank You」(2nd Album「Led Zeppelin II」収録)、「Dazed And Confused」(1st Album「Led Zeppelin I」収録)、「Stairway To Heaven」(4th Album「Led Zeppelin IV」収録)の5曲が、Zepの楽曲であることが判る。

ってことは、Zepの楽曲の「ジャズによるカバー集」ということになる。へっ〜、こんなアルバムあったんや〜。

で、このZepの楽曲の「ジャズによるカバー」が良好か、と言えば、これがな〜。意欲は買うが出来はイマイチ。そもそも、Zepの楽曲とは言っても、「Stairway To Heaven」だってマニアックな曲だし、「The Ocean」「Thank You」「The Rain Song」「Dazed And Confused」などは、Zepのファンでないと知らないだろう。

加えて、Zepはブルース基調のハードロック・バンドであり、「リフ&フレーズ」がメイン。印象的なメロディーもあるにはあるが、ジャズのインプロビゼーションの素材としては、メロディアスな面に欠ける。このカバー演奏を聴いていても、Zepの原曲のメロディーを拾うのが、かなり辛い。

目玉の「Stairway To Heaven」についても、ヒノテルのペットがテーマを吹き上げていくが、なんだか窮屈そうで無理がある。Zepの楽曲のフレーズやメロディーは、意外と複雑で個性が強く、アレンジがし難い。ジャズのリズム&ビートに乗せるには、かなり無理があるのでは、と感じる。

ギターの二人、Mike Stern, John Scofieldは、それぞれの個性を活かして、素晴らしい弾きっぷりである。でも、これだけ弾き倒すのであれば、何もZepの楽曲のカバーで無くても良い。どうして、こんな企画になったのか理解に苦しむ。

Zepの楽曲をカバる意欲は買う。でも、決して成果は挙げてはいない。惜しいと思うが、もともと、Zepの楽曲はジャズには合わない、ということなのだろう。でも、まさか、ジャズの世界で、Zepの楽曲をカバったアルバムがあるとは思わなかった。これこそ、ほんまの「こんなアルバムあったんや」である(笑)。
 
 
 
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2012年2月 5日 (日曜日)

寛いで、静かにジャズを楽しむ

The Modern Jazz Quartet With Jimmy Giuffre『The Modern Jazz Quartet At Music Inn』(写真左)。 モダン・ジャズ・カルテット(Modern Jazz Quartet、略してMJQ)に、クラリネットの才人ジミー・ジュフリー(jimmy giuffree・写真右)が参加した佳作。MJQの作品の中でも、あまり名前が挙がらない地味なアルバムである。

でも、この地味で話題に乏しいアルバムが、僕にとっては、なかなかに捨てたものでは無い盤なのだから、ジャズって不思議。なかなか滋味溢れるクールな演奏が詰まっていて、寛いで、静かにジャズを楽しむにはもってこいのアルバムなのだ。

たまにあるのだが、音が大きな、音が元気なジャズが、ちょっと耳に付くことがある。時には、耳に付かない程度の静かな音で、小粋で内容のあるジャズ演奏が聴きたくなることがある。なにも、熱気溢れ、ファンキーで溌剌とした演奏だけがジャズでは無い。TPOに合わせて、ジャズのアルバムもしっかりと選びたいものである。

さて、この『The Modern Jazz Quartet At Music Inn』というアルバム、1958年8月、"Music Inn"での録音になる。ちなみにパーソネルは、Jimmy Giuffre (cl, ts, bs), Milt Jackson (vib), John Lewis (p), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)。ジミー・ジュフリーはクラリネットだけではなく、テナー、バリサクも吹いている。
 

Mjq_jimmy_giuffree

 
このアルバム、一言で言うと「静かではあるが、内容は豊か」。演奏時代は穏やかで、徹底的に抑制・コントロールされているが、演奏の内容自体は、高いテクニックに裏打ちされて、密度が濃く、実に地味深い。抑制・コントロールされた環境の中で「静かな躍動感」を内に秘めたクールな演奏である。よって、静かな演奏が続くが、ちゃんとした再生装置を介して聴けば、最後まで決して飽きない。

収録された曲を眺めてみても、「Oh Bess, Oh Where's My Bess」や「Two Degrees Easy, Three Degrees West」「The Man That Got Away」など、かなり渋い曲を選曲していて、曲名を見ただけでも触手が伸びるくらいだ。この渋いスタンダード曲を、滋味溢れるクールな演奏で弾き紡いでいくのである。「抑制の美」である。なにも、熱気溢れ、ファンキーで溌剌とした演奏だけがジャズでは無い。

ラストの「Variation No.1 On "God Rest Ye Merry, Gentlemen"」では、MJQとJimmy Giuffreが一体となった「抑制の至芸」を聴くことができる。これだけ高度なテクニックに裏打ちされたクールなジャズは、なかなか聴くことが出来ない優れたもの。

ちなみに、このアルバムのタイトルにある"Music Inn"とは、マサチューセッツ州パークシャーの山の中の別荘地のことです。当時、よくジャズ・コンサートが開かれていた場所として有名ですね。

その"Music Inn"の草原で寛ぐMJQとJimmy Giuffreの写真があしらわれたジャケットもなかなか味があって、僕のお気に入りです。ジャケット良し、演奏良し。地味ではあるが、なかなかの内容を誇るMJQの佳作だと思います。

 
 

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2012年2月 4日 (土曜日)

春を感じる爽快フュージョン

リチャード・ティー(Richard Tee)。フュージョン界を代表するグループ「スタッフ」のキーボード奏者。その「スタッフ」の「うねり」の主役が、リチャード・ティーのフェンダーローズ。

恐らく、フュージョンのジャンルの中で、フェンダーローズを弾かせたら、このティーの右に出る者はいない。が、このアルバムでは、アコースティック・ピアノ中心に、ばりばり、弾きまくっているのだ。それが、なんだか、清々しくて爽快なのだ。春爛漫。春たけなわの雰囲気。

そんなリチャード・ティーのファースト・アルバム『Strokin'』(写真左)。とにかく、徹頭徹尾、ファンキーで爽快な、疾走感溢れるアルバムである。
 
1曲目の「First Love」の疾走感なんか、春のそよ風吹く中、颯爽と車でドライブしているような感じで、思わず、体を揺すり始めてしまう。途中から入る、良くアレンジされたストリングスも嫌味ではなく、その爽快感を後押ししている感じ。春のそよ風吹き抜けるって雰囲気はとても魅力的。

3曲目のタイトル曲「Strokin'」などは、リチャード・ティー独特の「ねばり」のある、芳しきファンクネス漂う、端正で硬質なアコースティック・ピアノを満喫できる。ピアノのタッチが音が、元気、元気。元気で弾けて明るい。出だしのフレーズから、ポジティブでキャッチャー。春風の中、キラキラする木漏れ日を浴びながらのジョギングってな感じで、「これぞ、ビタミン・ファンク」と、訳の分からないことを思ったりする。
 
Tee_strokin
 
4曲目の「I Wanted It Too」も、むっちゃファンキー。軽快な「どファンキー」である。効果的にシンセサイザーを使いながら、べとべとせず、軽快で爽快な感じで、この曲も「かっ飛ばしていく」。ニューヨーク中心に活動していたと記憶しているんだが、この米国西海岸はカリフォルニアを思い出させる、あっけらかんとした爽快感は素晴らしい。
 
5曲目の「Virginia Sunday」で、リチャード・ティーのフェンダー・ローズが炸裂する。スローテンポな楽曲で、独特の響きと粘りを伴ったソフト&メロウなフェンダー・ローズ。 これだけ、情感豊かで優しく爽快感のあるフェンダー・ローズを鳴らせるのは、リチャード・ティーだけだろう。聴いていて、心地よく、切なくなる「春」のような、ティーのフェンダー・ローズ。(最後、フェード・アウトされるのが残念なのだけど)。

それと、密かに確信しているのだが、ラストの「Take The "A" Train (邦題『A列車でいこう』)」は、ファンキーで切れが良く爽快で、メリハリがあって、「Take The "A" Train」の屈指の名演のひとつではないだろうか。少なくとも、こんなに明るくてファンキーな、疾走感溢れるピアノに乗った「A列車で行こう」は耳にしたことが無い。僕は、大学時代に耳にして以来、ずっと密やかに愛聴し続けている。

う〜ん、このアルバムは、春を感じさせてくれる、実にファンキーで爽快なフュージョン・ジャズですね。僕はこのアルバムが大好きです。

寒い寒いと嘆いても仕方が無い。前向きに「春」を感じさせてくれるフュージョン・ジャズを聴いて、気持ちだけでも温かくありたい。寒さ凌ぎの、気持ち的に「春」を感じさせてくれるのリチャード・ティーの『Strokin'』。お勧めです。

 
 

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2012年2月 3日 (金曜日)

気持ちだけでも温かくありたい

今年の冬はとても寒い。平年の平均気温と比較すると、2度近く低いらしい。そりゃ〜寒いわ。僕は寒さがとても苦手。今年の冬の寒さは、退院後の病み上がりの身体にとても堪える。ちょっと辛いのぉ〜。

でも、寒い寒いと嘆いても仕方が無い。寒い、寒いと言うのも「もう飽きた」(笑)。前向きに「春」を感じさせてくれるフュージョン・ジャズを聴いて、気持ちだけでも温かくありたい。
 
そんな前向きに「春」を感じさせてくれるフュージョン・ジャズは無いのか。ちょっと探して「これだ!」と選んだアルバムが、国府弘子の『Pure Heart』。(写真左)。

さて、本当に久し振りの『Pure Heart』を腰を据えて聴く。このアルバムは、1992年ににリリースされているのだが、収録されている音は、新しく生き生きとしている。ポジティブで元気印な国府弘子の面目躍如。聴いていて楽しい、ビタミンのようなアルバム。

冒頭の1曲目から実に春らしい演奏にニンマリ。春の暖かい日差しの中、お気に入りの普段着で、ブラブラと静かな街中を歩いているようなテンポ。ゆったりと歩くようなテンポ、僕の大好きなテンポ。このテンポだけでもこの曲はイケる。

Kokubu_pure_heart

そよ風に髪をくすぐられながら、見慣れた街で、新しい発見をしそうな予感。そんなワクワク感満載の、明るくあっけらかんで、気持ちの良いリズムの「Smooth Struttin'」。ホーン・セクションをバックに、軽やかでファンキーなリズムに乗って、リラックスした国府のピアノが闊歩する。う〜ん、完璧に雰囲気は「春」やなあ。

5曲目の「Weekend」も、軽やかなフルートとピアノが、ボサノバを奏でて、な〜んとなく、春の週末ってな感じだし、6曲目の「Carry Me With The Wind」なんかも、曲名を見るだけで、爽やかな春風が吹き抜けて行くようだし、アルバム全体の雰囲気は、春、春、春。

7曲目の「Barefoot Steppin'」は春そのもの。「Barefoot」とは裸足のことだけど、そうそう、暖かな、少し歩くと汗ばむような春たけなわの昼下がりなんぞ、裸足で、サンダルつっかけて、ぶらぶら、歩くのが僕は大好きです。少し、かすんだような、ぼんやりした青空と、あちこちの庭に咲く花々。ふとみると、軒下の日向で猫が大あくびしていたりして・・・。

春を連想させてくれる、ジャズのアルバムが少ない中、『Pure Heart』は、正に僕のお気に入り。寒い寒いと嘆いても仕方が無い。前向きに「春」を感じさせてくれるフュージョン・ジャズを聴いて、気持ちだけでも温かくありたい。寒さ凌ぎの、気持ち的に「春」を感じさせてくれる国府弘子の『Pure Heart』。お勧めです。

 
 

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2012年2月 2日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・34

「ジャズ喫茶で流したい」シリーズの第34回目。今日は、僕のとっておきのピアノ・トリオ盤について語りたい。

アルバム・タイトルは『Let's Play the Music of Thad Jones』(写真左)。いぶし銀ジャズ・ピアノ職人、トミー・フラナガン(略称トミフラ)がリーダーの、知る人ぞ知る、ピアノ・トリオの「隠れ名盤」である。

1993年4月の録音。トミフラの旧友サド・ジョーンズが書いた名曲の数々をプレイした「サド・ジョーンズ作品集」。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan(p)、Jesper Lundgaard(b)、Lewis Nash(ds)。実に良い雰囲気のピアノ・トリオである。絵に描いた様なピアノ・トリオである。

トミフラのタッチは端正で力強い。しかも、繊細な表現にも長ける。ほど良く抑制され、コントロールされたバップ・ピアノ。そう、トミフラの基本はバップ・ピアノ。バピッシュな演奏のスタイルは、いつの時代も全く変わらない。良い意味で「金太郎飴」的と言って良い。でも、マンネリに陥ることは決して無い。ピアノを使っての表現の幅と深さが圧倒的に備わっているのだ。

そんなピアノを使っての表現の幅と深さを駆使して、このアルバムの様な企画物をやるから、絶対にマンネリに陥らない。逆に、演奏する曲毎に、新しい響き、新しい展開を感じさせてくれたりして、トミフラは「名盤請負人」の名をほしいままにする。

これだけ歌モノを魅力的に弾き綴るジャズ・ピアニストは他にいないだろう。トミフラに美しいメロディーを持ったスタンダードをやらせたら、彼の右に出る者はいない。

Lets_play_thad_jones

この「サド・ジョーンズ名曲集」を聴くと、サド・ジョーンズ作の楽曲は、耳に馴染む、美しいメロディーを湛えているのがよく判る。そして、トミフラは、このサド・ジョーンズの手なる名曲達を、素晴らしいテクニックと歌心で弾き紡いでいく。このアルバムに収録された、そんな珠玉のサド・ジョーンズの名曲は以下の通り。

1. Let's
2. Mean What You Say
3. To You
4. Bird Song
5. Scratch
6. Thadrack
7. A Child Is Born
8. Three In One
9. Quietude
10. Zec
11. Elusive

2曲目の「Mean What You Say」や、7曲目の「A Child Is Born」などなど、収録されたどの曲も、それはそれは絶品である。そんな絶品を、トミフラをリーダーとしたトリオは、更に魅力的なピアノ・トリオ演奏へと昇華させていく。

見事である。ドラムのナッシュの至芸も見事、イエスパーの重量級のウォーキング・ベースも見事。派手さは無いが、聴き込むほどに味わいが豊かになり、味わいが深くなる。実に聴き応えのあるピアノ・トリオ盤です。

 
 

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2012年2月 1日 (水曜日)

ピアニストSayaは何処に行った

しばらくの間、すっかりその存在を忘れてしまっていた。アルバム棚を整理していて出てきたアルバム。Sayaの『Unity』(写真左)。2002年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Saya (p), マーク・ウイリアムス (b), ディゾーン・クレイボーン (ds)。

Sayaの2枚目のリーダーアルバム。第1印象は「シンプルでリリカルなピアノ・トリオ」。原曲のフレーズをそのまま活かしつつ、アドリブ・ラインを展開する判り易い演奏スタイル。シンプルだからといって、飽きるかと言えば飽きない。ピアノのタッチとフレーズにそこはかとないファンクネスと「コク」が同居する。

従来のメリハリが効いたピアノとゴリゴリのベース、4ビート主体のテクニックバリバリのドラムが一体となって、時にはリリカルに、時にはダイナミックにという、従来のジャズトリオの雰囲気とは一線を画した、不思議な雰囲気のする、ピアノ・トリオ。

そのピアノの音は、優しい中にちゃんと一本、筋の入った、しっかりとしたタッチ。力任せにキーを叩くことは一切無い、コントロールされた音。

最近のピアノ・トリオは、ビル・エバンスの晩年期によく似た音、先ほど書いた「メリハリが効いたピアノとゴリゴリのベース、4ビート主体のテクニックバリバリのドラムが一体となって、時にはリリカルに、時にはダイナミックに」という雰囲気)が主流というか、そればっかりで、また、それが雑誌の評論を見ると「良い良い」と書くものだから、なんだか、皆、同じ音になってしまって、面白くないのが本音。

このSayaのピアノは、それとは違って「個性的」。大人しめの音なので、クリスタル・ピアノ的な、軽音楽的な音かい、と思いきや、結構、芯が入っていて、ほのかにファンキーな雰囲気が見え隠れする不思議な音。音使いは、実にきめ細やか。
 

Saya_unity1

 
男性と違って、腕力の無い女性のジャズ・ピアノの一つのスタイルであり、一つの進む道なのかとも思う。なにも、男性のジャズ・ピアノと対抗することは無いし、モノマネすることも必要ない。そのような意味で、僕は、このSayaを支持したい。

アルバムの中身といえば、ビートルズあり、ロバータ・フラックあり、ファンキー・ジャズありで、選曲のバラエティーが楽しい。そんな中で、自作曲もなかなかの出来であり、彼女の持つ才能の一端が見え隠れして興味深い。

才能といえば、このバラエティーに富んだ選曲それぞれに、なかなか秀逸なアレンジが施されており、どの曲もが、ジャズしているのが面白い。昔のスタンダードを忠実に弾きこなすのもいいが、もう少し、現代の優れたポピュラーソングにもチャレンジすべきだ、と常々感じている私にとっては、このアルバムの選曲とアレンジは、実に興味深い。

しかし、2006年9月『Twilight』をリリース後、Sayaはメジャーでの活動を停止する。その後の消息はよく判らない。シンプルでリリカルなピアノは味わい深く、原曲のフレーズをそのまま活かしつつ、アドリブ・ラインを展開する判り易い演奏スタイルは、シンプルが故に長く愛聴することができるものだった。活動を停止し、消息不明状態に至ったのは実に惜しい。

暫くの間、その存在を忘れていたのは「汗顔の至り」。このSayaの『Unity』は僕にとって、意外とお気に入り。「ながら聴き」にピッタリなアルバムで、何気なく流しっ放しにしていると、優しい緩やかな雰囲気の音空間を提供してくれます。ハードなジャズ、シリアスなジャズの合間に、一服の清涼剤のようなアルバムの存在は、それはそれで捨て難い魅力があります。

 
 

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