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2012年1月19日 (木曜日)

RCA最後の『The Standard』

1961年11月、2度目の雲隠れからのカムバック後、満を持してRCAと契約、RCAもロリンズの売上に期待した。そして、かの名盤『橋』を録音する。この『橋』から、『ホワッツニュー』『アワ・マン・イン・ジャズ』『3イン・ジャズ』『ソニー・ミーツ・ホーク』『ナウズ・ザ・タイム』と続くのであるが、レコード会社が思ったほど売れなかったらしい。

時代は、1962年頃、ジャズは、ハード・バップのピークの時代を経て、フリー・ジャズやモード・ジャズが台頭し始めた頃。マイルスの薫陶を受けた、モード・ジャズを核とした「新主流派」が新しい響きのジャズを推進し始めた頃である。徐々にジャズは複雑化、長時間化し、ジュークボックスやFMでのリクエストをベースとした娯楽音楽としての役割を負えなくなっていた。

そして、1964年、『ナウズ・ザ・タイム』の次作で、RCA最後の作品『The Standard』(写真左)をリリースする。ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts), Herbie Hancock (p), Jim Hall (g), David Izenzon, Teddy Smith (b), Stu Martin (ds)。目を惹くのは、ピアノにハービー・ハンコックを起用していること。逆に、ベースとドラムはほぼ無名(リズムキープはまずまずだけど)。

収録曲を見渡すと、バリバリのスタンダード集。前作の 『ナウズ・ザ・タイム』の路線を踏襲している。ジュークボックスやFMでのリクエストのニーズに応える為、1曲の所要時間は約3〜4分程度。4曲目の「My One And Only Love」のみが長尺6分。LP全部で10曲(初出LP)。

収録されたのがスタンダード曲なので、テーマ部がなかなかにキャッチャーな旋律があしらわれている。そのキャッチャーなテーマを吹いて、ロリンズの豪快で奔放なアドリブが展開され、そして、再びキャッチャーな旋律で終わる。それが3〜4分の短時間の中に詰め詰めに詰め込まれているのだ。それが10曲続く。

しかも、ロリンズのソロがかなり充実していて素晴らしいが故に、ロリンズのブロウだけが延々と続くイメージで、何気なく聴いていると、何の曲を演奏されているのか判別に苦労する。素晴らしいロリンズのソロが延々と続く感じで、アルバム全編聴き終えた後、ロリンズのブロウでお腹が一杯になる。とにかく、ロリンズのブロウが耳につき過ぎるのだ。
 
Rollins_standard
 
やはり、ジャズには「間」と「チェンジ」が必要だと感じる。確かに、この『The Standard』では、曲毎に、ロリンズが歌っている感じの建て付けなんだが、テナー・サックスは肉声に近い響きで、しかも音が大きいとくる。どうしても耳に付く。LPとして10曲聴き続けることがちとしんどい。フロントのテナーだけ2〜3分の間、聴き続けるのは辛いし、これが10曲続くとやはり辛い。

しかし、4曲目の唯一の長尺演奏である「My One And Only Love」は絶品。ジム・ホールが抜けて、代わりにハービー・ハンコックのピアノが入ったカルテット構成の演奏なのだが、これが実に良い。ロリンズは心ゆくまでテナーを吹きまくり、ハービーのピアノは実に美しい。新主流派の響きが実に理知的で流麗。このロリンズとハービーとの共演は聴きもの。

ロリンズのインプロビゼーションは、一つのテーマから、バリエーションを重ね繰り返して、徐々にその内容を高めていくタイプなので、演奏時間はいきおい延びる。つまり、ロリンズは、ハード・バップやモード・ジャズに向いている訳で、そもそも、ビ・バップのような瞬間芸で、判りやすい旋律をまとめるような、ポップスライクな演奏スタイルでは無い。

RCA時代のロリンズは素晴らしい。2度目の雲隠れからのカムバック後のロリンズはあらゆる面でグレードアップしている。吹きっぷり、テクニック、イマージネーション、どれを取っても、他の追従を許さない「孤高のテナー」。しかし、レコード会社の意向とその意向に沿ったプロデュースのミスで、その素晴らしさが半減しているのは実に残念。

しかし、この残念さを払拭してくれるアルバムがある。ビジネス的に恵まれなかったRCA時代のロリンズが、何の気兼ねもなく、スタンダード中心に、テナーを吹きまくった未発表の演奏を集めた『After The Bridge』(2008年11月3日のブログ参照・左を来リック)という未発表音源集がある。是非ともこの『After The Bridge』を入手し聴いて欲しい。RCA時代のロリンズが如何に素晴らしかったかを実感できる。

 
 

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コメント

古い話ですみません。 最近 ロリンズを聞き返して このアルバムも聞き返しました。 昔は私も売れ線を狙ってスタンダードをてんこ盛りにしていると思っていたのですが聞き返して違うのではないかと思いだしました。 まず ほとんどの演奏が b,dsのトリオでテーマの吹き方などもかなり異様です。 このアルバムは実は実験的なアルバムだったのではないでしょうか。 どちらにせよあまり好きな1枚ではありません。 RCA時代のロリンズは実際にレコード会社となにがあったのかはわかりませんが いわれているようにいろいろ模索していたのでしょうね。

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