フリー・ジャズなドルフィーである
フリーキーなフレーズを連発する割に、意外とオーソドックスで限りなくフリーなモード系ジャズ、アブストラクトで唯一無二の個性が、エリック・ドルフィーの身上。
ドルフィーはほどんどの演奏で、決してフリー・ジャズの領域には入らない。伝統的なジャズの境界線ギリギリのところで留まりながら、限りなくフリーキーにアルトをフルートをバスクラを吹き回していくドルフィーは凄い。純ジャズの中で、一番フリー寄りに位置するジャズメンである。
そんなドルフィーがフリーの領域に入ったアルバムがある。『Other Aspects』(写真左)。このアルバムには、ドルフィーのフリー・ジャズな演奏が満載である。このアルバムは、3つの録音年月に分かれる。
まず、1960年7月の録音は、5曲目(ラスト)に収録されている「Improvisations And Tukras」で、パーソネルは、Eric Dolphy (fl) Roger Mson (tambura) Gina Lalli (tabla)。
1960年11月の録音は、2曲目「Inner Flight, #1」、4曲目「Inner Flight, #2」、3曲目「Dolphy-N」で、パーソネルは、Eric Dolphy (as, fl) Ron Carter (b -3曲目のみ)。
そして、1964年3月の録音は、1曲目「Jim Crow」で、パーソネルは、Eric Dolphy (as, bcl, fl) Bob James (p) Ron Brooks (b) Bob Pozar (ds, per) David Schwartz (vo)。
1曲目の「Jim Crow」は、フリー・ジャズのとても良い演奏である。ユニークなのは、人間の肉声とドルフィーのアルトとのコラボ。人間のボーカルを楽器に見立て、ドルフィーのアルトのフリーキーなフレーズに絡む。
演奏の中間部分と後半の終わり部分に突如として出てくるピアノ・トリオの演奏は、伝統的なジャズの範疇内ではあるが、かなりアブストラクトな響き。なんと、フュージョン・ジャズの大御所ボブ・ジェームスの若き日のピアノである。
そして、ラストの「Improvisations And Tukras」は、アフリカン・ネイティブなパーカッションのリズム&ビートと、アフリカン・ネイティブな民謡の響き。アーシーでフォーキーでネイティブなバックに乗って、ドルフィーがフリーキーにフルートを吹きまくる。フリーキーではあるがアブストラクトでは無い。ドルフィーのフルートは、限りなくアーシーで限りなくアフリカン・ネイティブである。とても聴き易く、とても心地良い、ドルフィーのフリーキーなフルート。
アルトのソロも良い、ベースとのデュオも良い。どの演奏も限りなくフリーキーであるが、決して、激情にまかせるままのアブストラクトな演奏では無い。ほど良く抑制され、知性と理性にコントロールされた、理知的なフリー・ジャズがこのアルバムにはある。限りなくフリーキーなインプロビゼーションではあるが、決して、アブストラクトな演奏には陥らない。
このアルバム『Other Aspects』は、良心的なフリー・ジャズを体験できる好盤である。フリー・ジャズの入門盤としても格好の内容である。あまりジャズ本で採り上げられることは少ないが、どうして、この『Other Aspects』は、フリー・ジャズの名盤だと僕は思う。
ドルフィーの、フリー・ジャズに対する才能とセンスをビンビンに感じる事ができる、この『Other Aspects』というアルバムには、ドルフィーの「奇才」と呼ばれるべき才能がぎっしりと詰まっている。
エリック・ドルフィーは、1曲目「Jim Crow」の録音の3ヶ月後の1964年6月、糖尿病による心臓発作の為、38歳という若さで、ベルリンにて他界した。実に惜しい才能であった。
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