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2012年1月28日 (土曜日)

チューリップのデビュー盤である

最近のことであるが、NHKの「SONGS」のスペシャルに財津和夫さんが登場した。財津和夫さんと言えば、伝説のフォーク・ロック・グループ「チューリップ」のリーダーであり、Jポップ界を代表するメロディーメーカーの一人でもある。

僕は高校時代から、尊敬する日本のミュージシャンとして、吉田拓郎、財津和夫、小田和正の3人が絶対的存在。その一人が出演している。元気そうで安心したのと、やはり、「財津者」の僕としては、財津さんの音世界はしっくりくる。良い番組でした。

そして、久し振りに「チューリップ」のアルバムを聴き直したくなった。なにを隠そう、松和のマスターこと私は「チューリップ」のマニアである。1973年の大ヒット「心の旅」を耳にして以来、チューリップはずっと好きなバンドのひとつ。特に、高校時代から大学時代にかけては、密かにチューリップ者として、アルバムを買い続け、聴き続けた。

しかし、僕の周りには、チューリップ者はいなかったなあ。「心の旅」のヒットくらいしか認知度が無く、よってアルバムを愛で、アルバムの魅力を語る友人は皆無。後に「サボテンの花」がドラマのタイアップ曲として、リバイバル・ヒットした時は、大いに溜飲が下がった思いがしたものだ(笑)。

そんなチューリップのデビューアルバムが『魔法の黄色い靴』(写真左)。当時、フォーク・ロック・バンドのデビュー・アルバムとしては、なかなかに金のかかったもので、ダブル・ジャケット仕様に、ポスターなどが同梱されており、当時のレコード会社の期待度の高さが窺い知れる。確かに、このデビュー・アルバム、チューリップの個性がぎっしり詰まった、当時のJポップ・シーンには無かった、斬新でハイレベルなロック・ポップなアルバムであった。

兎にも角にも、タイトル曲であり、デビュー・シングルでもあった「魔法の黄色い靴」が素晴らしい。この曲をFMで耳にしたのは、1974年。荒井由実の ポップな曲が流れ始めている中で、この「魔法の黄色い靴」も流れていた。聴いたことが無い「コード進行」、それまでのフォーク・ソングには無い「歌い 方」、全く新しい響きを湛えた「コーラス」。今の耳で聴いても、この曲は斬新。フォーク・ロックの名曲である。

Tulip_yellow_magical_shoes

そして、2曲目の「あいつが去った日」より、「千鳥橋渋滞」「ハーモニー」「おいらの気楽な商売」「私の小さな人生」と、LP時代のA面を飾る、素晴らしいフォーク・ロックの名演がズラリと並ぶ。どの曲も、当時のJポップ・シーンには無かった、洒落ていて、かつ、ポップ度の高い曲で、1970年代前半のフォーク・ソング全盛時代においては、ちょっと浮いた存在だった。でも、この洒落たところが良いんですよね。

まだ、1970年代前半は、録音の機材や録音方法も発展途上の時代、アレンジなどもまだまだテクニック不足で、演奏全体の雰囲気は地味で洗練されておらず、完成度は低いのですが、それをカバーして余りある曲のユニークさと斬新さが素晴らしい。

これらの曲を今の録音環境とアレンジのテクニックで、完全リメイクして欲しいですね〜。曲それぞれの内容が良いので、その出来はかなり期待できるのでは無いかと思います。

LPのB面の「もう笑わなくっちゃ」「言葉が出ない」「思えば遠くへきたものだ」「どうして僕は淋しいんだ」「風」の流れも、チューリップ・マニアには堪えられない内容なんですが、A面に比べると、ちょっと「力尽きた」感はあるかな。アレンジにやっつけ感があって、演奏自体も荒さが目立ちます。実に惜しい。曲自体は良いんですよ。

でも、ラストの「大魔法の黄色い靴」には聴く度に感心する。このアルバムのタイトル曲「魔法の黄色い靴」にオーケストラのアレンジを施して、チューリップのメンバー、そして、スタッフも交えての「大合唱曲」としてリプライズしているんだが、これが素晴らしい出来なのだ。これだけ、ストリングスのアレンジに耐える楽曲もなかなか無い。やっぱりこの「魔法の黄色い靴」は名曲なんだと痛く感心したのを昨日のことの様に覚えている。 

一般万民にお勧めする内容のアルバムでは無いんですが、Jポップ、フォーク・ロックのマニアの方には一度聴いて頂きたいアルバムではあります。勿論、チューリップ・マニアの方々にはマスト・アイテムでしょう。

デビュー・アルバムだから、出来はイマイチなのではと懸念しているのであれば、全く心配はいりません。チューリップのメンバーの個性がキラキラ煌めいていて、チューリップ・マニアであれば、かなり楽しめる内容です。

 
 

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