「赤ペト」の想い出
「赤ペト」とは、ジャズ・ピアノのミューズ、ミシェル・ペトルチアーニ(以降、ペトと呼ぶ)の18歳のときの公式デビュー盤。その名もズバリ『Michel Petrucciani』(写真左)。
ジャケット写真を見て頂くとお判りの通り、あざやかな赤が基調の、ペトの顔のアップがドーンとど真ん中。このジャケットのイメージから、このアルバムは「赤ペト」と呼ばれている。1981年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Michel Petrucciani (p), J.F. Jenny Clark (b), Aldo Romano (ds)。
確か、銀座の山野楽器で聴いたのが最初かと思う。冒頭の「Hommage A Enelram Atsenig」。速い演奏でも、上手く「間」を活かした展開。ビル・エバンスの流儀の踏襲。確かなテクニック。加えて、アフリカン・アメリカンのルーツ的個性であるファンキーな雰囲気、アーシーな雰囲気は基本的に希薄。
これはアフリカン・アメリカンのピアニストでは無い。実にヨーロピアンなピアニスト的雰囲気でありながら、そこはかとなくジャジー。初めて聴いた時は、チック・コリアかと思った。
が、少し聴き進めると、チックよりもタッチが強くて太い。電光石火の力強さでは無く、重量級の太いタッチ。そして、チックの場合、アブストラクトにフリーキーにインプロビゼーションが展開する傾向があるんだが、それが全く無い。不協和音を敢えて避けている様に、クラシック音楽の様に端正で整然としたインプロビゼーション。
2曲目のスタンダード曲「Days Of Wine And Roses」の優しくロマンティシズム溢れるフレーズ。しかし、その優しいフレーズを紡ぐタッチも強くて太い。しかも、チックにありがちな「スパニッシュ・フレーズ」の手癖が全く無い(笑)。
じゃあ、このピアノは誰なんだ。ということで、ジャズ・コーナーのカウンターに走って、このアルバムを手にとって、初めて知った名前がミシェル・ペトルチアーニ。名前からフランス人だと想像した。フランス人がこんなに端正で整然としたジャズ・ピアノを弾くんや、と妙に感心した。
この公式デビュー盤『Michel Petrucciani』、いわゆる「赤ペト」には、ペトの個性の全てが詰め込まれている。ペトの紡ぎ出す色彩豊かなフレーズは実に魅力的であり個性的。強くて太いタッチで紡ぎ出すダンディーなロマンティシズムも魅力。ペトを感じ、ペトを理解するには、まず、この「赤ペト」から入ることをお勧めする。
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