弾きまくる「泣きのギター」
あの伝説のフュージョン・バンド「Stuff」が好きなフュージョン者の方であれば、この辺の「Stuff」のメンバーのソロアルバムに触手を伸ばしていた筈である。いや、手を伸ばしていなければ、「Stuff」マニアでは無い(笑)。
泣きのギター「エリック・ゲイル(Eric Gale)」。この人のギターは、ファンキーでメロウ、ブルージーで「むせび泣く」ように音が伸びる「泣きのギター」が個性。エリック・ゲイルのソロアルバムは、この「泣きのギター」と「ポップなソフト&メロウなフュージョン・ジャズ」の両方が楽しめる。
1976年の作品『Ginseng Woman』(写真)。エリック・ゲイルのセカンド・アルバムになる(ファースト・アルバムは『Forecast』: 2010年7月11日のブログ参照・左をクリック)。CTI時代から頻繁にエリック・ゲイルを起用してきたBob James(ボブ・ジェームス)がプロデュース・編曲・キーボード担当と八面六臂のバックアップ。
やけど、これはあかんやろう(笑)。冒頭の「Ginseng Woman」の前奏のアレンジから、ボブ・ジェームス編曲が「もろ判り」の、思いっきり「ボブ・ジェームズ節」が炸裂した、どう聴いても「ボブ・ジェームスがリーダー」の演奏(笑)。当のゲイルも、ボブ・ジェームスのリーダー作で客演した時の同じ雰囲気で「泣きのギター」を紡ぎ上げている(笑)。
ブラスやストリングスの音の重ね方、ボブ・ジェームスの手癖のように良く出てくる「お決まりのフレーズ」、伴奏の入り方、入れ方、どれをとっても、どれを聴いても、どこから聴いても「ボブ・ジェームス」である。ちょっと、この『Ginseng Woman』は、ボブ・ジェームスの色が出過ぎていると言えば、出過ぎている。
確かに、この『Ginseng Woman』というアルバム、ボブ・ジェームスの音が色濃く反映されていて、エリック・ゲイルのみならず、ボブ・ジェームスのファンの方々にもお勧めな内容なんですね、これが(笑)。でも、2曲目以降、確かに、ボブ・ジェームスの色は相変わらず濃いですが、エリック・ゲイルの「泣きのギター」も存分に楽しめる演奏がズラリと並んでいます。ご安心を(笑)。
2曲目の「Red Ground」なんぞは、実に良い雰囲気。明るい爽快感溢れる海を連想させる、ゆったりとしたカリビアンな演奏は、実に良い。リラックス感満載のトロピカル・ミュージックとでも表現したら良いでしょうか。この曲でも、ボブ・ジェームスのアレンジが光ります。
3曲目の「Sara Smile」は、ホール&オーツの名曲のカバー。そこはかとなく、レゲエ感覚のリズムを巧く取り入れたこの演奏もなかなかの好演。女性コーラスの入り方も、なかなか「アーバン」かつ、ブルージーな雰囲気で、ゲイルの「泣きのギター」が映える。このトラックは、ボブ・ジェームス臭さも希薄で、ゲイル色満開と言ったところか。
4曲目の「De Rabbit」以降、5曲目「She Is My Lady」、ラストの6曲目「East End, West End」まで、エリック・ゲイルが弾きまくる。「泣きのギター」満載のトラックが3曲連続、エリック・ゲイルの「泣きのギター」が心ゆくまで堪能できる。
それもそのはず、Steve Gadd(ds)〜Richard Tee(key)をフィーチャーしており、これってもう「Stuff」です。その「Stuff」の演奏に、独特のリズム&ビートと派手なブラスの効いた、ボブ・ジェームスのアレンジを組み合わせた、これはもう「無敵」の演奏です(笑)。
特に、5曲目のバラード「She Is My Lady」は絶品。リチャード・ティー独特の個性的なストロークの効いたアコピのバッキング。これって、「Stuff」のバラード・ナンバーのアプローチを想起させますね。そして、官能的で素晴らしいソロを聴かせているHank Crawfordの「泣きのアルト」が実に良い。ゲイルの「泣きのギター」と相まって、「泣きの相乗効果」抜群のジャジーなバラードです。
ボブ・ジェームス色が強かったり、ゲイルが所属していた伝説のフュージョン・バンド「Stuff」の色が強かったり、ゲイルのソロアルバムとしての、ゲイルならではの音作りを感じることは出来ませんが、ゲイルの好きなアレンジやリズム・セクションに乗って、弾きまくる「泣きのギター」は結構圧巻で、結構聴き物です。フュージョン・ジャズの佳作として、気軽に楽しめる一枚です。
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