ジャズ喫茶で流したい・32
今年最初の「ジャズ喫茶で流したい」シリーズ。今回は第32回目。今回ご紹介するアルバムについては、このシリーズで採り上げて良いものかどうか、ちょっと迷った。
というのも、かなりの数のジャズ評論家の方々が、そして、かなりの数のジャズ喫茶のマスターが、ジャズ本でジャズ雑誌で、このアルバムを「隠れ名盤」として挙げ、このアルバムを褒め讃える。これだけ皆が「隠れ名盤」として挙げるんなら、このアルバムって「隠れ名盤」とちゃうやん、と悪態をつきたくなる。
皆が「隠れ名盤」なんていうから、後から後からジャズ評論家の方々が、ジャズ喫茶のマスターが、あまり深く考えずに右にならえをしているだけやないんか〜、このアルバムってほんまに「隠れ名盤」なんか〜、と意地悪に思って、たまにCDプレーヤーのトレイに載せるんだが、いや〜、これがまあ、ええんですな〜。
そのアルバムとは、Charlie Rouse(チャーリー・ラウズ)の『Yeah!』(写真左)。1961年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Rouse (ts), Billy Gardner (p), Peck Morrison (b), Dave Bailey (ds)。
チャーリー・ラウズと言えば、セロニアス・モンクの恋人みたいなテナー奏者で、長年セロニアス・モンクの下で、テナーを担当した。モンクの陰にラウズあり、ラウズの前にモンクあり、てな感じで、モンクのリーダー作には必ずといって良いほど、名前を連ねている。が、チャーリー・ラウズ自身のリーダー作で有名どころというのはあまり数が多くない。
しかも、この『Yeah!』のパーソネルを見渡すと、ラウズ以外、全く知らない面子ばかり。この『Yeah!』って、パーソネルだけを見ると、絶対に触手が伸びない。ラウズのリーダー作、しかもワン・ホーン作なので、思い切って手に入れてしまうか〜、というところか。
でも、このアルバム、素晴らしい内容のアルバムなんですよね。選曲もスタンダード曲中心で親しみ易く、スローなバラードからミッド・テンポの曲での、ラウズの余裕あるテナーが凄く良い雰囲気。唯一アップテンポの「Rouse's Point」でのラウズの覇気溢れる熱いブロウも魅力的。とにかく、このアルバム、ラウズのテナーが実に良い雰囲気で鳴っているんですね。ラウズのテナーをとことん愛でることの出来るアルバムと言えます。
バックのリズム・セクションもほとんど無名に近い面子なんだが、これがまあ、良い仕事しているんです。特に、ペック・モリソンのベースが良い音を出している。ブンブン、ゴリゴリッと、ウッド・ベースらしい、野太い弾けるような音が実に心地良い。
ドラムのデイブ・ベイリーは淡々と黙々とリズム・キープにのみ徹していて、ちょっと面白みに欠けるが堅実と言えば堅実。そして、意外なのは、ビリー・ガードナーのピアノが伴奏にソロになかなかに健闘していて、良い雰囲気を醸し出しているところ。ラウズのテナーに対するバッキングはなかなかのセンスです。
なるほど、かなりの数のジャズ評論家の方々が、そして、かなりの数のジャズ喫茶のマスターが、ジャズ本でジャズ雑誌で、このアルバムを「隠れ名盤」として挙げ、このアルバムを褒め称えるはずですね。実に良い内容の、絵に描いた様なハードバップ演奏、ジャズ・テナーのワン・ホーン・カルテットの推薦盤です。
でもなあ、かなりの数のジャズ評論家の方々が、そして、かなりの数のジャズ喫茶のマスターが、ジャズ本でジャズ雑誌で、このアルバムを「隠れ名盤」として挙げ、このアルバムを褒め讃えてんねんな。だから「隠れ名盤」やないんやけどな〜。でも、時々、「ジャズ喫茶で流したい」アルバムではあります。
ジャケット・デザインもエピック・レーベルとしては珍しく良い。このアルバムはジャケット・デザインとしても、演奏のリアルな音を楽しむとしても、LPで手に入れ、LPで聴き込みたいアルバムですね。
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