「クリスマス・イブ」に想う
クリスマス・イブである。FMから流れてくる曲はクリスマス・ソング一色で、ちょっと呆れた溜息が出たりする。なんで、日本ってこんなにクリスマスで変に盛り上がるようになったんだろう。キリスト教国でも無いのに実に不思議なことではある。
さて、FMから流れてくる曲の中に、この20年来、定番中の定番となった曲が「また」かかっていた。山下達郎の「クリスマス・イブ」(写真右)。もう、この曲は「耳タコ」な位に聴いている、または聴かされている曲なのだが、この曲だけは不思議と飽きが来ないし、「クリスマスで変に浮かれているような」嫌な気分にならない。
とにかく、この山下達郎の「クリスマス・イブ」は凄い完成度を誇る楽曲である。元々はこの曲は、1983年6月8日に発売された山下達郎通算7作目のスタジオ・アルバム『MELODIES』(写真左)のラストに収録された楽曲である。僕は、この『MELODIES』を、1983年の暮れに、LPで入手して、このラストの「クリスマス・イブ」を初体験し、椅子から落ちんばかりに驚いた。「なんなんだこの曲は・・・」。
山下達郎本人をして「作詞・作曲・編曲・ボーカル・コーラス・プロデュースなど、すべてにおいて完璧にできた曲」と明言している 位の楽曲である。それはそれは素晴らしい出来である。とにかく、その生い立ちが凄い。
コード進行は、バロック音楽の名曲、パッヘルベルの「カノン」のコード進行を借用している。この「カノン」のコード進行の借用が、バロック的なクラシックな雰囲気と賛美歌的な響きを増幅させ、クリスマスの楽曲として感べきなアレンジとして成立している。
また、小田和正主演のTBSの番組『クリスマスの約束』にて、2001年だったか、実は、この楽曲はオフコースの楽曲の雰囲気に触発されて作った、と小田和正宛の手紙で明かしていた。なるほど、コーラスのアレンジと雰囲気、楽曲へのエコーのかけ方など、オフコース(とは言っても、二人のオフコースの時代だと僕は思うが)の音作りをかなり意識している風に感じる。
山下達郎の楽曲としては歌詞も良い。恐らく、かなりの確率で来ないかも知れない彼女を待つ主人公。しかし、決定的に悲劇的結末でも無い、希望的な含みを持たした歌詞の展開は秀逸である。言葉も良く練られており、冒頭の「雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう」なんてフレーズは出そうで出ない。凡人は後で読むと書けそうな気がするが、この自然で秀逸なフレーズはいきなりは出ないだろう。
しかも、それを支える曲の展開は、バロックの楽曲のコード進行を借用した分、コード進行が決定的にマイナー調では無く、定期的にメジャー調に転調するので、決して、悲劇的にならない。というか、最後には希望の響きが感じられる(賛美歌ってみんなそうですよね)。
歌詞も結論を出していないし、曲の展開もまた始めに戻った形でフェードアウトして、余韻と含みを持たしているところが実に「ニクイ」。本当に良く出来た楽曲である。クリスマス・ソングとしても決定的な出来を誇っている。
しかし、1983年の暮れ、アルバム『MELODIES』をLPとして入手し、そのラストにひっそりと収録されていた、この「クリスマス・イブ」の存在にいち早く気付いていた僕にとっては、この曲が、JR東海の東海道新幹線「ホームタウン・エクスプレス(X'mas編)」のCMソングとして全国区となり、再度、シングル・カットされて大ヒットして、皆が知っている超有名曲となったことには、ちょっと淋しさと悔しさを感じるというのも正直なところ。
これだけの名曲中の名曲でありながら、あまりに有名になりすぎて、毎年、クリスマス流行曲として、結構気楽に気安く扱われているのが気になります。マニアである僕たちだけが知っている「秀逸な」クリスマス・ソングとして、そっとしておいて欲しかったなあ、というのが本音でしょうか。
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