こんなアルバムあったんや・5
「こんなアルバムあったんや」シリーズの第5回目。今日は、ライオネル・ハンプトンのエンタテインメント性溢れるアルバムをご紹介する。
ライオネル・ハンプトン。スウィング・ジャズ時代の1930年頃にヴィブラフォンを初めてジャズ界に持ち込んだといわれる。ライオネル・ハンプトンは自らをエンターテイナーと称し、音楽は二の次と考えていた。
ビ・バップやハード・バップの複雑なコード進行には決して迎合しない、我が道を行くインプロビゼーションが潔い。しかし、逆に、インプロビゼーションにバリエーションは少ない。とにかく、音楽をアーティスティックなものと考えていない節が「ありあり」(笑)。
でも、彼の演奏は、パフォーマンスは聴いていて楽しい。ライブで見ることが出来たら、それこそ、さぞかし楽しいライブ・パフォーマンスだったに違いない。そんなハンプトンのエンターテイナーとしての楽しさを十二分に感じる事の出来るアルバムがある。『You Better Know It!!!』(写真左)である。
1964年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Lionel Hampton (vib), Clark Terry (tp), Ben Webster (ts), Hank Jones (p), Milt Hinton (b), Osie Johnson (ds)。 インパルス・レーベルからのリリース。いや〜、パーソネルを見渡すと、魅力あるベテラン・ジャズメンがズラリと並んでいる。壮観である。
このアルバムに詰まっている演奏を聴いていると、ライブ・ハウスでの演奏か、と思ってしまう位の「ライブ感」。とにかく、どの曲もどの曲も、メンバー皆、心から楽しんで演奏している。
ユーモアたっぷり、茶目っ気たっぷり。眉間にしわを寄せて聴く様な、難しいジャズでは無い。聴いていて、思わず口元が緩み、場面場面では思わず腹から笑ってしまう。そんな楽しいエンタテインメント。
ハンプトンはヴァイブだけでは無い。ボーカルも取っている。これがまた、渋くて上手い。ヴァイブだって余裕のある演奏が心地良い。クラーク・テリーのペットは暖かく、ハンク・ジョーンズのピアノは実に優雅。ベン・ウエブスターのテナーも悠々とした大らかさが実に良い。
こんなに楽しい、エンタテインメント優先のジャズ・アルバムがあったんですね。どうも、ジャズってアーティステックに攻めるアルバムが多くて、本来、ジャズが持つエンタテインメント性については、あんまり意識することが無いんですよね。
もともと、ジャズって、大衆音楽だった訳ですし、ダンス音楽でもあった訳です。そんな基本的なことを、ハンプトンはこのアルバムで思い出させてくれます。こんなアルバムがあったなんて。つい2年前までは知りませんでした。ジャズは奥が深いですね。
ラス前、8曲目「Swingle Jingle 」は、クリスマスソング「ジングル・ベル」をフィーチャーした作品。ミルト・ヒントンのベースとオージー・ジョンソンのドラムのスイング感が際立っていて、ついつい、身体全体で乗ってしまうくらいに、とにかく聴いていて楽しい演奏である。今のシーズンにピッタリです。
聴いていて充実感のある純ジャズや、内容充実で硬派なフュージョン・ジャズの間に、こんなエンタテインメント性溢れる楽しいジャズ盤が流れる。なんだか、想像しただけで心がすっかり和みます。良い感じですね〜。実は、最近、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、これをやって心を和ませています(笑)。
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