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2011年11月 3日 (木曜日)

欧州ジャズと日本人の相性

ジャズの本場は米国ではあるが、1960年代より欧州でもジャズが本格的に盛んとなり、現代では、ジャズの拠点としては、本場米国と欧州の2大拠点を中心に展開している。

もちろん、日本人ジャズ・ミュージシャンは、1950年代より本場米国を目指した。穐吉敏子や渡辺貞夫を筆頭に、米国への留学、渡米を経て、その成果を日本へ持ち帰り、日本のジャズは発展した。

そして、1970年代後半より、日本人ジャズ・ミュージシャンは欧州を目指す。僕の記憶の中での日本人ジャズ・ミュージシャンの最初の印象的な成果は、フリー・ジャズの山下洋輔だったと記憶している。現代ではフリー・ジャズは欧州が拠点。

欧州ジャズは、土地柄からクラシックの素養をベースとした、耽美的でリリカルな音の響きをベースとし、構築力と演奏力に優れた「印象派ジャズ」的な側面と、現代音楽を応用したアブストラクトな演奏とジャズ特有のモーダルな演奏をミックスした「フリー・ジャズ」的な側面と、2つの側面が最大の特徴として挙げられる。

日本人ジャズ・ミュージシャンの持つ日本人的な特性を前提とすると、どちらかというと欧州ジャズの方が相性が良いように思える。米国の場合、黒人中心なジャズのトレンドが中心が故、ファンキー、ゴスペル、ブルースという、アフリカン・ネイティブな音楽的要素が重要になるんだが、これは日本人にとっては「新しい音楽文化」であり、体幹として身につくには、もう少し時間がかかるだろう。

しかし、欧州の場合、土地柄からクラシック音楽の素養がベースに漂っていて、調性、無調性、スケール、モードといった、クラシック音楽的な要素を応用した構成になっている。これは、戦前より、クラシック音楽を中心に西洋音楽を身につけてきた日本人にとっては、取っつきやすいものではある。
 
最近、欧州ジャズにチャレンジし、欧州ジャズに身を置く、日本人ジャズ・ミュージシャンが多く見受けられるようになった。例えば、雑誌「ジャズ批評」中心に評価が高い「平林牧子」は、そんな欧州ジャズに身を置く、若手ミュージシャンの代表例である。
  
Hide_and_seek
 
その平林牧子が、欧州ジャズ出身であり、明らかに欧州ジャズへの傾倒を明確に示したアルバムがある。セカンド・リーダー作の『Hide and Seek』(写真左)。2008年4月、コペンハーゲンでの録音。ちなみにパーソネルは、Makiko Hirabayashi (p), Klavs Hovman (b), Marilyn Mazur (ds,perc)。

欧州ジャズにおける代表的なピアノ・トリオの音が、アルバム全編に渡って味わえる。リリカルで耽美的なジャズ・ピアノの響き。硬質で切れ味の深いベースの響き。締まりが良くパーカッシヴなドラムの響き。印象的な間の取り方と3者が独立して奏でるフリーキーでアブストラクトなインプロビゼーション。

1曲1曲が、精緻に、丁寧に、特別な配慮を持って創られ、演奏される。職人芸を尊ぶ日本人の心根が感じられて、なんだかホッとする。精緻に丁寧に創られているからといって、ダイナミズムが損なわれていることは無い。全編に渡って、ダイナミック・レンジの広い演奏が展開される。決して性急なアプローチで破綻しない、十分にコントロールされたリズム&ビートは欧州ジャズなれではのものだろう。

このアルバム『Hide and Seek』は、米国を核とするジャズとして聴くと「これはジャズじゃない」となるかもしれない。しかし、欧州を核とするジャズトして聴くと「これは十分にジャズである」となる。この『Hide and Seek』は、徹頭徹尾、欧州ジャズにおける代表的なピアノ・トリオ例である。

アルバム全編を通じて、フリーキーな方向へはあまり傾いていないところが、欧州ジャズにおける代表的なピアノ・トリオ例とは言え、日本人ならではの抑制なのかも知れない。シンプルなフレーズの展開も日本人ならではの感性を感じる。豊かな響きと絶妙な間を使ったインプロビゼーションにも日本人ならではの「侘び寂び」的な感性を感じる。

今まで感じてきたよりもかなり、欧州ジャズと日本人ピアニストの相性は良いのかもしれない。
 
(なお、平林牧子のファースト・リーダー作『MAKIKO / マキコ』については、2011年2月21日のブログ「不思議な欧州ピアノ・トリオ」(左をクリック)としてアップしているので、こちらもご覧いただければ幸いです)
 
 
 

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Fight_3

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