困惑の『Riding with the King』
『ライディング・ウィズ・ザ・キング(Riding with the King)』(写真左)は、2000年に発表されたエリック・クラプトン(Eric Clapton)とB.B.キング(B.B.King)が競演したアルバム。
振り返れば、21世紀になってのエリック・クラプトンのアルバムは企画ものが中心。これはもう「昔の名前で出ています」的なメリットをクラプトンが最大限に活かした、いわゆる「懐メロ」を武器にしたクラプトンの戦略かと思ってしまう。
正直言って、この『Riding with the King』にはガッカリした。クラプトンのブルース・ロック(生粋のブルースでは無い)については1970年代から変わりは無い、聴き馴れたもの。いや、聴き馴れたものとは言っても、1970年代のクラプトンのブルースよりは、かなり端正で癖の無い、聴き易いものとなっている。
なんや引っかかりが無いというか、1970年代の泥臭い雰囲気が希薄になったというか、CD世代の、今のクラプトンのファンには良いかもしれないが、LP世代の、1970年代のクラプトンのファンからみればどうも物足りない、ということは無いだろうか・・・。
B.B.キングについても同じことが言える。クラプトンに合わせていて、クラプトンを凌駕することは御法度的な「抑制」感じる。どう考えても、ここでのB.B.キングは、僕達が知っているブルース歌いのB.B.キングでは無い。あの泥臭くてブルージーな「ブルースの歌い手」のB.B.キングは「ここにはいない」。端正で癖の無いブルース。これって生粋のブルースやないやろ。
これは、このアルバムのプロデュースの問題かと思うが、どうも、B.B.キングの個性を殺して平準化して、そこにクラプトンが乗っかる、みたいな、なんか変な雰囲気を感じる。どう考えても、生粋のブルースの要素を活かそうとしたアルバムとはとても思えない。
どういう方針でプロデュースされた共演アルバムなのか良く判らないが、これがブルースだと思われると、ちょっと困る。これはどう聴いても、ブルージーなポップ・ロックだろう。これがブルースだと言えば、「ブルース」そのものに怒られる(笑)。
そこまでネガティブな評論する位なら聴くな、と熱狂的なファンから揶揄されそうだ。申し訳ない。
しかしながら、無責任な感想を述べているのでは無い。1974年からエリック・クラプトンをリアルタイムで聴き続け、同じ時期からB.B.キングをリアルタイムで耳にしてきた世代からすると、この『Riding with the King』については、やっぱり「ちょっとちゃうなあ〜」と感じてしまうのだ。
綺麗な音、端正な音、形の決まった音。せっかく、エリック・クラプトンとB.B.キングが共演しているのに、このアルバムには、共演ならではの「化学反応」は残念ながら無い。あるのは平凡なプロデュースによる「予定調和」だけ。がっかりだ。
最後に、この『Riding with the King』というアルバムの名誉の為に言っておくと、ブルースを題材にした、という前提を除いて、アルバムの質という点では、かなりの高得点だと思う。
しかし、このアルバムを「ブルースのアルバム」として聴くと、ちょっと違和感があるということ。クラプトンのアルバムという点では及第点。しかし、「ブルースのアルバム」として聴くと、ちょっとちゃうなあ、という感じです。
「Key to the Highway」「Three O'Clock Blues 」「Come Rain or Come Shine 」などは出来の良いトラックとは思うのですが、どう聴いても「ブルース」を感じないんですよね〜。困ったアルバムです(笑)。
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