英国ロックはジャズロックの宝庫
1970年代の英国は、ロックとジャズの境目が曖昧。ロックとジャズ、特にジャズロックやクロスオーバー、フュージョンとの境界が実に曖昧。ミュージシャンがこれらをシェアしていて、米国のように、ロックはロック、ジャズはジャズという感じで、ミュージシャンが分かれていないところが面白い。
つまり、ロック系のミュージシャンが、ジャズロックやクロスオーバーやフュージョンをやったり、ごった煮で演奏したりで、特に、ジャズロックとクロスオーバーは、あっちこっちに飛び火して、ロックの中にジャズロックの要素が深く入り込んでいたり、クロスオーバーそのもののアプローチをしてみたり。
日本では、それを十把一絡げで「プログレッシブ・ロック」の範疇に押し込めたので、何がなんやら判らない状態になった。はっきり言うが、ロック系のミュージシャンが、ジャズロックやクロスオーバーやフュージョンをやるのは「プログレッシブ・ロック」では無い(笑)。
さて、そんなロック系のミュージシャンが、ジャズロックやクロスオーバーやフュージョンを「ごった煮」で演奏した好例がある。その名は『801 Live』(写真左)。ブライアン・フェリーとともにロキシー・ミュージックを支えたギタリスト、フィル・マンザネラ(Phil Manzanera・写真右)が率いる「801」の1976年発表のライブ盤。
「801」はバンド名、ちなみにパーソネルは、Roxy Music陣営より、Phil Manzanera (g)・Brian Eno (key, syn,g,vo), Quiet Sun, Matching Mole陣営から、Bill MacCormick (b)、Curved Airk陣営から、Francis Monkman (key)、Simon Phillips (ds), Lloyd Watson (g)。グラム・ロックからカンタベリー・ミュージックの範疇から集まった、鬼才、奇才、精鋭ミュージシャンたち。
これがまあ、聴き始めると面白いこと面白いこと。冒頭の「Lagrima」〜「TNK (Tomorrow Never Knows)」のリズム&ビートは、エレクトリック・マイルスのポリリズミックな変則ビートそのもの。そんなエレクトリック・ジャズのリズム&ビートに乗って、ジョン・レノンの名曲「Tomorrow Never Knows」をカバるのだから凄い。エレクトリック・ジャズの本家本元も真っ青な演奏。
メンバー構成など見かけ上は、英国グラム・ロックからカンタベリー・ミュージックの範疇だが、中身はしっかりとジャズロックし、クロスオーバーしている。成熟したジャズロック&クロスオーバーなインスト・ナンバーがとても格好良い。
Brian Enoのボーカル・ナンバーは、ちょっと「変態ボーカル」なので、さすがにジャズロック、クロスオーバーとはいかない。これはどちらかと言えば、英国でのサイケデリック・ロックの残照的演奏である。1960年代終盤から1970年代初頭にかけて流行ったサイケデリック・ロック。しかし、バックのリズム&ビートは、エレクトリック・ジャズの8ビートを踏襲したりしているから、とってもややこしい(笑)。
ジャズの範疇での、ジャズロックやクロスオーバー・ジャズのファンの方々には、一度、この『801 Live』は聴いて頂きたいですね〜。本家米国には絶対に無い、英国ならではのジャズロック&クロスオーバーを堪能することが出来ます。本家本元、米国のジャズロック&クロスオーバーの演奏よりも、ロックの要素が入り込んでいるだけ、英国のジャズロック&クロスオーバーの方が、キャッチャーでコマーシャルなところが、これまた個性的です。
いや〜、英国のロック系のジャズロックやクロスオーバーは面白いですよ。テクニックも優秀で破綻することが無いところも、なかなかに評価できるところ。ちょっとサイケデリックが入ってきて、ちょっとズッ転けることもありますが、それはそれで「ご愛嬌」(笑)。
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