クインシー・ジョーンズに憧れて
1982年リリースの、Herbie Hancock『Lite Me Up』(写真左)。このアルバムは、評論家筋からは「酷評」されていた。踊れないディスコ・アルバムという評価が大勢で、ハービーはもう終わりだ、なんて酷い評価をする評論家もいた。
でも、このアルバムって、そんなに「酷評」されるような内容では無い。というか、出来は良い。というか、かなり良い出来だと思うんですよね。ブラコン・アルバムとして聴くと、はたまた、ハービーの憧れのクインシー・ジョーンズ路線のアルバムとして聴くと違和感が無いと思うんですが・・・。
恐らく、当時、ハービー・ハンコックは、クインシー・ジョーンズに憧れていたいに違いない。どう聴いたって、この『Lite Me Up』はクインシー・ジョーンズの『Sounds...and Stuff Like That』や『The Dude』を目標に作成されたとすれば、その内容には違和感が無いと思うんですが・・・。
ということで、この『Lite Me Up』というアルバムは、ディスコ・アルバムでは無く、ブラコン・アルバムとして、クインシー・ジョーンズのフォロワーとしてのハービーのブラコン・アルバムとして、評価したほうが据わりの良いアルバムです。
そういう前提をおいて聴くと、あら不思議、なかなかダンサフル、ジャジーでファンキーな、ジャズ畑出身ならではのブラコン・アルバムとして十分な内容だと感じられると思います。
単純にブラック・ファンク中心の単純なリズム&ビートでは無く、さすがはハービー、ジャズ畑出身の、実にジャジーでちょっと複雑なリズム&ビートの仕込みが個性的。これは、ジャズ畑出身の優れたアレンジジャーにしか出来ない、特別な個性でしょう。
アルバムの演奏全体を通じて、「演奏の切れ味」と「アレンジの妙」という点では、クインシー・ジョーンズの諸作にはかないません。そういう意味では、さすがはクインシー・ジョーンズ、ブラコン的なアレンジャー&コンポーザーという観点ではまだまだハービー・ハンコックは発展途上、クインシー・ジョーンズの方が遙かを先を走る、ハービー憧れの存在であることが良く判ります。
でも、このアルバムの出来は良いです。かなり充実していると思います。単純に、ブラコン・アルバムとしてのハービーのアレンジャー&コンポーザーとしての優れた才能を感じます。
また、このアルバムの面白いところは、ハービー自身がボコーダー無しに、4曲目「Paradise」と5曲目「Can't Hide Your Love」の2曲でボーカルをとっているところ。ハービーが生声で歌う貴重なアルバムです。で、この2曲のハービーのボーカル、これがなかなかのものです。意外と上手いですよ、ハービーの歌。
憧れのクインシー・ジョーンズにはかなわないまでも、クインシー・ジョーンズを目指したブラコン・アルバムとしては、十分に評価できる内容だと思います。あまり、従来の評論家の酷評を鵜呑みにする必要な無いと思います。しかし、何故、ハービーのブラコン路線は、日本のジャズ評論家には、押し並べて受けないのかなあ。不思議です。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」、「v_matsuwa」で検索して下さい。
がんばろう日本、がんばろう東北。自分の出来ることから復興に協力しよう。
« こんなアルバムあったんや・3 | トップページ | ロッド・スチュワートの最高傑作 »
コメント