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2011年10月24日 (月曜日)

遅まきながら「Forever Begins」

気が付けば、山中千尋のファンであった。気が付けば、デビュー・リーダー盤から全てのリーダー作を所有していた。しかも、それぞれが結構ヘビー・ローテーション。彼女の紡ぎ出すフレーズが自分の感性に合うんだと思っている。

で、その山中千尋、この8月に最新作『Reminiscence』をリリースした。なかなかの内容のアルバムである。当然、ヘビーローテーションな一枚となっている。そろそろ、この『Reminiscence』のレビューをこのブログに掲載せんとなあ、と思っていたら、ふと気付いた。

前作『Forever Begins』(写真左)のレビューをアップするのを忘れていた。ちなみに、この前作の『Forever Begins』については、実にその内容が気に入っている。我がバーチャル音楽喫茶『松和』でもヘビーローテーションな一枚となっていたし、今でもネタ切れになると、ちょくちょくトレイに載る。レビューをアップするのを忘れていたとは「不覚」であった。

ということで、遅まきながら『Forever Begins』。最新作『Reminiscence』の前に『Forever Begins』である。というのも、この『Forever Begins』が無いと、次作『Reminiscence』は無い、という切っても切れない、表裏一体となったアルバム。この『Forever Begins』は、山中千尋のジャイアント・ステップな一枚なのだ。

この『Forever Begins』、一言で評すると「歌心溢れるフレーズ満載の超絶技巧なピアノ・トリオ」。最近の若手のピアノ・トリオは、ややもすると超絶技巧に走りがちなのであるが、この山中千尋の『Forever Begins』は違う。まず、第一に「歌心溢れる、口ずさめるような印象的なフレーズ」が満載である。
 
Forever_begins
 
冒頭の山中千尋のオリジナル「So Long」がその代表例。出だしから親しみ溢れる、弾むような印象的なピアノのフレーズ。なんかの時に口ずさめるキャッチャーなフレーズ。しかし、展開部に入ると超絶技巧なテクニック溢れる弾きまくり。オスカー・ピーターソンのフォロワーと言っても良い位の超絶技巧さ。
 
2曲目の「
Blue Pearl」から3曲目の「Summer Wave」については、お得意のピアノのスケールを幅広く使いながら、ブワーッとポジティブに拡がる様な印象的なフレーズを展開する。ピアノの幅を最大限に活かして、輝く様なフレーズを紡ぎ上げていく。これって、山中千尋の個性。
 
そして、4曲目の「
Cherokee」が凄い。こんなアレンジの「Cherokee」を聴いたことが無い。実に印象的な判り易いフレーズ。この「Cherokee」のアレンジこそが山中千尋の面目躍如。こんなアレンジを施せるジャズ・ミュージシャンは今までいなかった。それほどまでにユニーク。けど、決して可笑しくない。このアレンジって絶対に「有り」。やられた〜って思った(笑)。
 
7曲目のラテン・ナンバー「
The Moon Was Yellow」の健康的な妖艶さも良い。これも山中千尋のアレンジの才のなせる技。ラテン・ナンバーは下手にいじると、その曲の持つ「妖艶さ」が下品になるんだが、この山中千尋のアレンジは決して下品にならない。曲の特性を良く分析した、実に効果的なアレンジ。脱帽である。
 
良いアルバムです。山中千尋のアレンジャー&コンポーザーの才能を十二分に堪能出来る秀作。アレンジ&コンポーズが優れているからこそ、トリオの持つ超絶技巧なテクニックも嫌味に聴こえず、爽快、痛快に感じる事ができる。
 
こんなに
「歌心溢れるフレーズ満載の超絶技巧なピアノ・トリオ」は、なかなか無い。快作である。しかし、アルバム・ジャケットは「シュール」である(笑)。

 
 

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