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2011年10月11日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・1

今回から、新しいシリーズを始めます。シリーズ名は「こんなアルバムあったんや」。ジャズを長年聴いていると、隠れ名盤や思わぬ佳作に出会うこともありますが、「なんじゃこりゃー」と頭を抱えたくなったり、首を捻ったりするアルバムにも出会います。

この「こんなアルバムあったんや」シリーズは、読んで字の如く。そのアルバムに出会って、その出会いに感心したアルバムをご紹介します。まあ、ジャズの雑学というか、ジャズの裏話として、気軽に読んで頂き、ご一笑頂ければ、と思います。

さて、第1回目のアルバムは『Hymns / Spheres』(写真左)。キース・ジャレットのパイプ・オルガンのソロ。1976年の9月、西独ベネディクト修道院のホリー・トリニティ・オルガンによる演奏。発売当時はLP2枚組のボリューム感タップリのアルバム。

あのジャズ・ピアノの雄、キース・ジャレットがパイプ・オルガンでソロをやるのですから、当然、ジャズ的な演奏を期待するのですが、これが全く(笑)。といって、クラシカルな教会音楽としてのパイプ・オルガンとも違う、 オリヴィエ・メシアンらの現代オルガン音楽の影響を、バッチリ受けたものです。

が、このキースのオルガン・アルバムに出会ったのが、ジャズ者初心者1年目ほやほやの時期。キース・ジャレットが優れたジャズ・ピアニストというのは、「ケルン・コンサート」や「サムホエア・ビホア」を聴いて知っていたので、てっきり、このパイプ・オルガンのソロもジャズだと思い込んでいました。

しかし、どう聴いても、ジャズに聴こえない(笑)。自分にはジャズを聴き分ける才能が無いのではないか、って、当時はかなり真剣に悩みました(笑)。まあ、どう聴いたってジャズには聴こえない。現代オルガンなんだって知ったのは、このアルバムを初めて聴いてから、2年ほど経ってから。
 

Keith_hymns_spheres

 
ただ、現代オルガンの影響を受けた手法での演奏というのは、なかなか判らなかった。パイプ・オルガンはもともと好きだったのと、教会音楽としてのパイプ・オルガンは学生時代に馴染みがあったので、クラシカルなパイプ・オルガンの奏法はある程度、理解していたのですが、それとも違う奏法に面食らいましたね。現代オルガンの奏法と知って、図書館でそのサンプルとなるLPを借りて聴いて、やっとこさ、このキースのオルガン盤の内容が理解出来ました。

キースのパイプ・オルガンの即興って、なかなか聴くことが出来ないと思うのですが、このアルバムの演奏って、一定の成果を上げていると思います。パイプ・オルガンの音、一本槍のLP2枚組のボリュームある演奏集なんですが、全編に渡って、しっかりとテンションが漲り、飽きが来ることはありません。

パイプ・オルガンが相手とは言え、キース独特のフレーズが満載で、さすがキースと思わせます。特に、冒頭の「Hymn Of Rememberance」は聴く度に、パイプ・オルガンの重低音と分厚い音圧に圧倒されながらも、その美しいフレーズに心が動きます。各それぞれのパートで、キース独特のフレーズが乱舞しています。が、演奏の内容としては「現代音楽」なので、一般のリスナーの方々には、取っつきにくさはあると思います。

今回、調べてみてビックリしたのが、この『Hymns / Spheres』、このアルバムはもともとLP2枚組みだったのに、いつの間にやらばっさりと省略され、CDでのリイシューでは1枚に縮退されていた。しかも、個人的にお気に入りの「Hymn Of Rememberance」は未収録。よくよく見渡せば、LP2枚組時代に気に入っていたトラックがことごとく省略されていたのには参った。しかも、タイトルも、ご丁寧に『Spheres』(写真右)となっていて、片割れの「Hymns」はどこかへ消えていた。

キースのパイプ・オルガンによる即興演奏。実に珍しい、ECMレーベルならではのアルバム。ジャズでは無いが、僕はこのキースのパイプ・オルガンによる即興は、今でも意外と気に入っている。是非とも、LP2枚の構成で聴きたい。『Hymns / Spheres』のフルセットで聴きたい。それでこそ、このキースのパイプ・オルガンによる即興演奏の真価が堪能出来る。

 
 

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Fight_3

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