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2011年9月13日 (火曜日)

孤高のエレ・マイルスの音世界

Miles Davis(マイルス・デイヴィス)の『Get Up With It』(写真左)。マイルスのスタジオ録音の最高傑作の一枚。とにかく凄い内容の当時LP2枚組。

1974年に2枚組で発表された作品集。1970年、1972年、1973年、1974年に録音された8曲を収録。しかしこの理路整然とした統一感は凄い。1970年〜1974年の間に、マイルスは、1972年の『On The Corner』を通過点して、リズム&ビートを基軸とした、限り無くフリーでモーダルなエレクトリック・ジャズを自家薬療中のものとしたことが窺い知れる。

しかし、凄い内容だ。ジャズはもとより、クラシック、ロックなど、おおよそ既存の音楽のジャンルを超えて、この先進的で先鋭的な内容を誇る音楽は他に例を見ない。マイルスの如何に突出した音楽家だったか、イノベーターだったかを思い知る、凄い内容になっている。

冒頭の「He Loved Him Madly」がその代表的な例だ。前半部、水面に墨が流れ拡がる様な幽玄な音世界。幽玄さの中に、言いようのない「悲しみ」。声を殺しつつ、心で泣き叫ぶ様なオルガンの音。ジャズ界の巨人、デューク・エリントンへの追悼曲である。

この演奏は凄い。クラシック、ロックなど、おおよそ既存の音楽のジャンルを飛び越えて、超然とそびえ立つマイルスの音世界。当時、ロックの世界で一世を風靡したプログレッシブ・ロックなど、束になってもかなわない、とてつもないプログレッシブな音世界が32分超の長尺に渡って繰り広げられる。幽玄とエレ・ファンクが共存する音世界。マイルスはペットをほとんど吹かない。

もうひとつ、このアルバム『Get Up With It』で凄いのは、マイルスのオルガン。マイルスがエレクトリック・ジャズに手を染めて以来、様々なキーボーティストを採用し、成果を挙げてきた。チック・コリア、ハービー・ハンコック、ジョー・ザビヌル、キース・ジャレット等々。しかし、それでもマイルスはキーボードの音に対して、満足することは無かった様だ。ついに、自らがキーボーティストとしてオルガンを弾きまくる様になった。
 
Get_up_with_it
 
このマイルスのオルガンが凄い。「Rated X」では、このマイルスのオルガンを堪能することが出来る。先進的で先鋭的で、限り無くフリーで、限り無くモーダルで自由なオルガン。このマイルスをオルガンを聴いていると、歴代のエレ・マイルス・バンドのキーボーティストが霞んでしまう。あのチックですら、キースですら、霞んでしまう。マイルスのオルガンは凄い。アグレッシブでプログレッシブなジャズ・オルガンとしては最高峰のパフォーマンス。

特にLP2枚目を占めた「Calypso Frelimo」「Red China Blues」「Mtume」「Billy Preston」では、そのマイルスのワウワウ・トランペットとオルガンの両方を心ゆくまで堪能出来る。演奏を覆うテンションも限りなく高く、触れば切れるような先鋭感。聴き通せば、ぐったりとするような爽快感。

そして、当時、賛否両論だったワウワウ・トランペットも完成の域に達している。ロックのエレクトリック・ギターに対抗した、歪んで捻れて、くすんで拡散して、肉声に限りなく近く、限りなくエモーショナルな音色を、自分の担当楽器であるトランペットで出すとしたら。マイルスの出した答が「ワウワウ・トランペット」。エレクトリック・マイルスの世界で、マイルスの眼鏡にかなったギタリストが登場するまでの期間、この「ワウワウ・トランペット」は、エレ・マイルスの世界では必須のアイテムだった。

この『Get Up With It』に収録された、どの曲がどうというのでは無く、収録された全ての曲が演奏が凄い。他に追従を許さない、というか、全く異次元の高みに達した、孤高のエレ・マイルスの音世界が、このアルバムにギッシリと詰まっている。スタジオ録音でのエレクトリック・マイルスの完成形がこのアルバムにギッシリ詰まっている。

この『Get Up With It』は、マイルスのスタジオ録音の最高傑作の一枚。とにかく凄い内容です。聴けば判る。しかし、生半可な気持ちで聴くと精神が吹っ飛び、感性が粉々になって、しばらく立ち直れなくなります(笑)。

この『Get Up With It』は、35年以上前に作られたアルバムです。しかし、その内容は、今のジャズを持ってして凌駕することは出来ていません。それほど、先進的で先鋭的な内容です。これ以上、恐ろしいほどパワフルなエレクトリック・ジャズは、他に無いと僕は思っています。

 

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Fight_3
 
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