1973年のエレ・マイルス
久々にジャズ関係で楽しみな番組を見つけた。NHK総合テレビ・10月1日(土)前1:40〜2:40(9月30日(金)深夜)『マイルス・デイビス・イン・トーキョー1973』。
紹介文に「1973年7月1日に、その一部がNHK『世界の音楽』という番組で放送されながら、長らくテープが行方不明になっていた、エレクトリック・マイルス最盛期の1973年東京・厚生年金会館での伝説のライブをデジタル・リマスター版で放送!」とある。
1973年のエレ・マイルス。興味津々である。『On The Corner』や『In Concert』のリリースが1972年。1973年は、その次の年になる。1973年は単独での正式なスタジオ録音盤が無い。一番近いスタジオ録音盤は『Get Up With It』になる。
ジャズの大本は「アフリカン・ミュージック」つまり、アフリカン・ネイティヴなビート&リズム。スタジオ録音については、それを前面に押し出して、というか、それだけをエレクトリック・ジャズで表現した、そんな「ジャズの根幹」を表現した、ジャズ界最大の「問題作」であり、エレクトリック・マイルスの「基準」である『On The Corner』に端を発し、『Get Up With It』で成熟を迎える。
そして、ライブ録音については、『On The Corner』のコンセプトと踏襲したライブ録音盤『In Concert: Live at Philharmonic Hall』を手始めに、『On The Corner』で提示された「リズム&ビート」を前面に押し出した、ネイティブ・アフリカンなエレクトリック・ジャズを推し進めていく。
1973年は、エレクトリック・マイルスの最初のピークに向かって、加速をかけ始めた時期で、1973年のエレクトリック・マイルスのライブは重要。それが映像で見られるのだから、NHKもなかなかやるなあ(笑)。
放送前に、1973年のエレ・マイルスをおさらいするのに『The Complete Miles Davis at Montreux 1973-1991』(写真左)のDisc 1と2を引きずり出してきた。
ブート盤は素人の我々には手にし難いので、この『The Complete Miles Davis at Montreux 1973-1991』 、このCD20枚組の超豪華ボックスは貴重な存在。しっかりと1973年のエレクトリック・マイルスのライブ録音を収録してくれている。
しかし、改めて聴いてみて、1973年のエレクトリック・マイルスは凄まじい。エレクトリックでファンクなリズム&ビートの嵐。エッジが立ちまくって、切れ味鋭く、聴く方としては、かなりの覚悟がいる。生半可な気持ちで接すると、一瞬にして吹っ飛ばされる。大衆性や聴き易さとは全く無縁のストイックで正統でジャジーな音世界。
ドラムとパーカッションのリズム&ビートの洪水。なたで切り裂く様なエレギのシャッフル&カッティング。ズンズンと響く重心低くファンキーなベース。そして、そのバックの怒濤のようなリズム&ビートに乗って、マイルスのワウワウ・トランペットが唸りを上げる。
浮遊感漂い、空間を切り裂き、エモーショナルに、アブストラクトに、縦横無尽に、マイルスのエレクトリック・トランペットが雄叫びを上げる。まだ、マイルスのオルガンは活躍するまでに至ってはいないが、Disc 2の「Calypso Frelimo」では要所要所で、実に魅力的な音を奏でている。
ムトゥーメのパーカッションとアル・フォスターのドラムが素晴らしい。マイルスにとって、この二人のリズム&ビートに恵まれたのが幸いであった。とにかく凄まじいグルーブを生み出している。エレクトリック・マイルスのグルーブの源は、ドラムとパーカッションである。
1973年のエレ・マイルスの振り返りは久し振りになる。翌々年、1975年1月には、あの伝説の「アガ・パン」が控えているので、この1973〜74年のエレ・マイルスを確認しておくことは重要です。今週の「ジャズのお勉強」テーマです。
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